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ムチャ振りの技術

2017/1/29

ムチャ振りの技術

2つ目は、仕事のスパンが長い場合。今日明日の納期であれば、プロセスをチェックする余裕はありませんが、3年がかりのプロジェクトともなれば、さすがに途中経過を見ておきたいものでしょう。

しかし、これらの条件以外、つまり比較的スパンが短く、この人に振れば大丈夫だと思える仕事であれば、たいていの人は、「じゃ、後はよろしくね」です。「任せた仕事は全部君のところで完結してね」です。

自分でやろうが、さらに後輩に任せようが、どちらでもいいから、とにかく完結させてくれればいい。つまり「再委託をしてはいけない」という前提条件が含まれているケースというのは、意外と少ないものです。

もちろん、会社対会社の場合は、コンプライアンス上、「再委託はダメ」というケースもあります。しかし通常は、たとえば会社内での仕事のやり取りだったりすると、任せた仕事が「再委託禁止」になっているケースは少ないでしょう。

振った人間からすれば、相手が仕事を抱え込んだまま前に進めずにいるのを見ると、「受け取ったボールをもっと誰かに渡せばいいのに」と思うのです。それゆえ、仕事が予定通りに終わらない場合、おそらくこう聞くはずです。

「なんでできなかったの?」

こう問われると、振られた側は、「仕事がパンパンで、本当に厳しくて……」など、忙しすぎたことを理由にします。その際、「ああ、そうだったんだあ。それは大変だったね」と同情されるのを期待していることすらあります。

しかし、振った人間がそんな返答をすることは、まずありません。口にするかどうかはともかく、本音はこうです。

「だったらそれ、最初に言ってよ」

「それでも受けたんだから、誰かに任せてでも、うまくまとめてほしかったよ」

ただし、特に古いタイプの日本企業では、「振る」という行為がネガティブにとらえられるケースもあります。そういう会社では、上司から頼まれた仕事を勝手に同僚や後輩に再委託すると、「なんと無責任なやつだ、なんて勝手なやつだ」と思われてしまうリスクもあるでしょう。

さらに、作業的な仕事、それ以上は細分化できないような仕事(すぐ後に説明します)は、ピンポイントで「お前、やれ」と依頼している場合もあって、それを他人に丸投げすると、怒られることもあるでしょう。

そういうわけで、自分の周囲がどういう空気か、上司がどういう性格の人物か、どういう仕事かなどについては、注意を必要とするのですが、理由を正しく説明して「振る」ことをきちんと報告しておけば、おそらく問題はないでしょう。

フルーツメールが2008年に実施した「部下に求めることランキング」でも、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をきちんとする」が全体の18.1%で1位となっています。

仕事を振る側からすれば、「振れない人」に振ってしまうと、仕事が回らなくなる危険性が生じます。

そして、たいへん厄介なことに、振れるタイプか振れないタイプかは、パッと見ではなかなかわからないものです。

しかし、経験を積み上げていくと、「この人は抱え込むタイプだな」「振るのが下手なタイプってこういう人かも」というのが徐々にわかってくるようになります。それは見た目や性格ではなく、仕事に対する取り組み方、考え方の中に込められていることが多いものです。

振る立場の人は、普段から相手の仕事ぶりをよく観察しておくといいでしょう。特に、次に挙げる8つのタイプの人物は要注意です。仕事を抱え込み、パンクする可能性を見越したほうがよさそうです。

1.仕事の切り出し(分解)ができない
2.ゴールを決めていない
3.断られる恐怖にとらわれている
4.単純化できない
5.他人に手柄を取られたくない
6.忙しい状態の自分に酔っている
7.コントロールフリーク
8.人に借りをつくりたくない

いかがでしょうか。思い当たる節があるのではないでしょうか

◇   ◇   ◇

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、3つの会社を経営する。

[この記事は2014年7月22日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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