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「優秀社員」の法則

過去の成功体験は割り切って捨てろ! 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(7)

2016/12/25

PIXTA

11.過去の成功体験は割り切って捨てている

 仕事をする中で、成功した人の「武勇伝」を耳にすることがあります。「仕事の成功体験を皆の前で話してください」と請われて披露(ひろう)する人もいれば、自ら話し出す人もいます。

 過去の失敗談であれば、何年経っても共通している部分があり、学べることも多いでしょう。後輩や仲間が同じ失敗をしないよう、「俺はこんな失敗をしたから、皆も気をつけろよ」と注意喚起することができます。

 一方で、成功体験を聞くにつけ、感じることが2つあります。

 ひとつは、よくよく聞いても成功した理由がわからないということです。成功理由をあまり分析しないまま話している人が多いので、自慢にしか聞こえません。

 もうひとつは、「その時代だから成功したのでは?」ということ。「あのときはバブルだった」「当時は今と比べ物にならないほど本が売れていた」など、時代の後押しがあってこその成功体験と言わざるを得ない話が多いように思えるのです。

 私自身、営業マン時代の話をしていると、よく「当時の成功体験を聞かせてください」と言われます。そこでふと考えるのです。「今の時代に活かせることなど、いったいいくつあるのだろう」と。

 営業で売り上げをあげるために重要なことは、会社の経営者、つまりキーパーソンに会うことです。その一番簡単な方法は、「自宅に直接伺うこと」でした。自宅の前で待ち伏せするのです。可能であれば奥さんに名前を告げ、お宅にあがらせてもらう。そこで持参した手土産を渡し、その会社の社長をベタ褒めしていれば、気分を悪くする人はいません。

 しかし、これを今の時代にやったら、どうでしょう? 面識のない会社の社長の自宅にいきなり押しかけ、家にあげてもらう。昔は実際にまかり通っていた手法ですが、今なら通報されてもやむなしでしょう。

 一方で、新聞記者は今もこの手法で、政治家の家にあがっているといいます。「優秀」とされる記者は政治家の奥さんと仲良くなり、家に入れてもらうのです。営業においては「キーパーソンの家に行き、奥さんに取り入って家にあがる」という手法はすでにナシですが、政治記者の間ではいまだにアリなのです。

 とはいえ、どこかのタイミングでそれがナシになり、共同記者会見でしか質問に答えてくれない時代が来たときに、「それでも俺は家に行く」と言う記者がいたとしたら? その瞬間に「それはもう古いでしょ」と言われ、「優秀」という看板も剥奪されてしまうでしょう。

 かつて生命保険会社で「優秀」とされた保険外交員たちは、毎日、取引先の会社の中まで入り、熱心にアメを置いていきました。アメに飽きてきたと思ったら、今度は本を持ってきて、星占いを始める。やがて勧誘される側も「毎日なんだか悪いな」と思うようになり、「1回くらいは保険の話も聞こうかな」という気になる。そうやって仕事を取る外交員が、当時は「勝ち」だったのです。

 しかし、今の時代にそれを戦略としてやろうとしても、まず会社の中に入れてもらえません。外で出待ちをしなければならない。もう時代が違うのです。

 こうなると、過去の成功体験そのものが古びて聞こえてしまいます。

 「優秀」であることを裏づける成功体験は本来、今の時代に照らし合わせても、成功の理由が共通しているものです。成功した理由が何なのかをきちんと踏まえておくこと。それが今でも同じように活用できるものであれば使う。時代にそぐわない古いものであれば、その過去の成功体験ごと潔く捨て去る。もしくは忘れる。これが重要です。

 過去の成功体験を武勇伝として話す人は当然、「優秀」ではありません。古い過去にはきちんと決別していくこと。そして新たな立ち位置で勝負をして、勝つ。その積み重ねが「優秀さ」につながっていくのです。

 この現実を常に念頭に置いておかなければなりません。過去に対する敬意は大切です。しかし、我々は過去に生きているのではありません。

12.誰に対しても媚びない姿勢を貫く

「優秀」と認定されている人は、誰に対しても媚びないものです。会社でいう「媚びない」というのは、目上の人を立てなかったり、先輩に対して横柄(おうへい)な態度をとるということではありません。「相手の持っている権力や権限に応じて態度を露骨に変えない」という意味です。

 では、なぜ彼らは「媚びない」でいられるか。それは自分の仕事のやり方や考え方に、自信があるからです。ブレない覚悟がある。

 時と場合によっては、「媚びない」ことでささいな摩擦(まさつ)や対立が起きることもあります。しかし、それは「自分をきちんと持っている」ことの裏返しでもあります。結果、周りの目には間違いなく「優秀」に映ります。

 「媚びる」とはそもそも、「相手に迎合しておもねる」(『広辞苑』より)、「他人に気に入られるような態度をとる」(『日本国語大辞典』より)という意味。会社においては、上司や役員、会社の方針に対し、自分の意見を持たずにただ従うことです。言われたことだけをやる。自分の考えがない状態と言えます。

 周りに媚びて仕事をしている、つまり上から言われたことだけをやっているのでは、評価は「B(普通)」止まりです。予想通りの仕事はしたけど、期待以上にはならない。「C(期待以下)」にはならないけど、B以上にもならない。これでは、いつまで経っても「優秀」の称号は得られません。

「過去を捨てる勇気」を持ちましょう。

 一方、言われたことを自分なりに考え、よりよくしたり、自分なりのアイデアを入れたりして、「期待以上」に持っていくことができると、「優秀」と言われます。

 Bを目指すのであれば「媚びる」という手があります。しかし、今この本を手に取っている皆さんは、「A(期待以上)を目指そう」「S(極小)の存在になりたい」と考えているのではないでしょうか。となると、媚びているだけでは可能性は見出せません。

「優秀」になるために、媚びは必要ありません。自分の考えに自信があり、ブレがなければ、その意見を通せばいいのです。

 ただし、「全体のルールを守る」ことは大前提です。和食の店で働きながら、「俺はフレンチをつくりたいんだ」と言われても、周りが困るだけです。その会社ごとのルールやレギュレーションを守ったうえで、どれだけ自分を出していくかが重要なのです。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[この記事は2015年11月4日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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