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「優秀社員」の法則

いつでも人に見られている自覚がある 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(4)

2016/11/13

PIXTA

5.いつでも人に見られている自覚がある

「優秀社員」の多くは、面が割れている

今、日本の会社でも「360度評価(多面評価)」の仕組みがすこしずつ広がっています。上司や同僚、部下、加えてお客様から見た自分の評価と、自分自身を評価した自己評価のギャップを「課題」と設定し、改善していくものです。点数をつけるというよりも、周りから何を期待されていて、自分に何が足りないのか、そこに気づくことが重要とされています。

たとえば「私は日ごろから自分の仕事を振り返り、ミスのないように心がけています」という項目があったとします。「とてもできている」「比較的できている」「できている」「すこしできている」「だいぶできていない」の中から選んで丸をつけるわけですが、自分では「できている」を選択したのに、上司からは「だいぶできていない」と評価されることもあります。

また、本人は「一生懸命仕事をして数字もあげている」と思っていて、実際に実績があっても、周りからは「仕事を頑張っているのはわかるけど、もっと周りに対して気を遣ってほしい」「お客様と接する際には、数字はともかく、細かくフォローする気配りを見せてほしい」という意見が出ることもあります。

周りからのこうした評価を受けて「なぜこんなに自己評価と違うんだろう?」と思うかもしれませんが、おそらく自分では気づいていないだけで、周りから見たらできていない部分もあるわけです。そこで「今後は気をつけよう」と自分を戒(いまし)め、より具体的に弱点を直すことができる。周りの評価とのギャップを課題として見たうえで、それを埋めようというのが今のトレンドです。

一緒に仕事をしている同僚や仲間というのは、「見ていないようで、実はよく見ている」ものです。すべてを見ているわけではありませんが、気になる発言や行動を意外とチェックしています。

「3年前の飲み会でこんなことを言った」「会議中の発言で、新入社員がとても傷ついた顔をしていた」といったことも、周囲は覚えていたりします。社内の打ち合わせで、直属の上司がいる場では「任せてください。あとはこちらでやりますから」と言っていたのに、上司が席を外したとたんに「じゃ、あとは頼むわ」となった瞬間、周りからは「この人は、人を見て態度を変えるタイプだ」と認定されてしまいます。

とりわけ「優秀」と定義される人は、仕事における秀でた部分とともに、日常における行動をかなり見られていると思ったほうがいいでしょう。そのコンピテンシー(成果を生む望ましい行動特性)の中に、評価の裏づけが求められることがあるからです。

社内で「優秀」のレッテルを貼られている人に間違いなく言えること、それは「社内で面が割れている」ということです。「社内にAさんというとても『優秀』な人がいるんだけど、実は誰も顔を見たことがない」ということはまずありません。たいていの場合、「優秀」と言われている人の顔やいでたちは、少なくとも社内では知られています。

また、「優秀」と言われる人は、役員にも顔を覚えられているものです。顔を覚えられているということはつまり、「優秀」だと認定されているも同然です。注目を浴びている人には、当然ながら誰しも目がいきますよね。

ということはつまり、「普通の社員」であれば見逃される行動が、「優秀な社員」となると見逃されないとも言えます。「あの人、チャック開いてるよ」とか「すごく不機嫌そう」「上司にすごく媚(こ)びてない?」といったマイナスの要素まで、普通の人以上に細かくチェックされかねません。

いつなんどきも、見られて恥じない行いを

リクルートの後輩で、38歳でグループ会社の最年少社長になった人がいます。北村吉弘さんという人ですが、この時点ですでに、「優秀」だと感じますよね。実際に会ってみても、頭脳明晰(めいせき)で、何を聞いてもきちんと誠実に答える人です。

そんな彼が、このたびリクルートホールディングスの常務執行役員に抜てきされました。会社のホームページにも、顔写真と名前が大々的に載っています。グループの従業員は現在3万人ほどですが、そのうち7割の人は街を歩いていても「あ、あれは北村さんだ」とわかると思います。

私の同期の峰岸真澄さんはリクルートグループ全体の社長ですが、2014年10月に東証1部に上場した際の記事がたくさん出ていますから、リクルートグループの社員の9割以上は峰岸さんの顔を知っているでしょう。つまり、3万人近くの社員が、北村さんや峰岸さんの顔を認識していると考えられます。

一方で、彼らはリクルートグループの社員のうち、いったい何人の顔を把握しているでしょう?

もちろん、3万人近くの社員全員の顔を覚えているわけはないでしょうから、彼らはほとんどの社員から一方的に認識されている状態です。たとえば休日のデパートで買い物をしていて、近くに社員がいた場合、その人は北村さんや峰岸さんを認識しますが、彼らは近くに社員がいることはわかりません。自分が見られていることに気づかない状態で、社会生活を送らなければならないのです。

もちろん、街を何気なく歩いていて、本人の自覚のないところで目撃されていることもあるわけです。「銀座で買い物をしていた」「誰それと一緒だった」「自販機で商品が出てこなかったみたいで、ドンドンたたいていたよ。あの人ってすごくせっかちだね」なんてことも言われてしまう。

「優秀な社員」として名前が売れている人は、その分注目度が高く、行動特性を周りが見ている可能性が高い。それによって「優秀さ」が裏打ちされ、再確認されることもありますが、一方で、場合によってはイエローやレッドカードの行いも人より注目され、マイナスに働く可能性もあるということです。

優秀な人というのは、自分が知っているよりもはるかに多くの人に認知されているものです。「優秀」であるという前提で注目され、行動を観察されているわけです。このため、常日ごろから「見られている」という意識を持ち、「優秀」らしからぬ行動は避けるよう注意したほうがいいでしょう。

6.「よくぞ言ってくれた!」の名言を発せる

選挙戦で“Yes, we can! ”と力強く言い放ち、アフリカ系アメリカ人として初の大統領となったバラク・オバマ氏。彼のように、世の中の心を揺さぶるような発言で、国民を動かす政治家がいます。

日本経済がまずいという意識が出たときに、誰かが「このままアベノミクスを続けていてはいけない。格差は広がるばかりだ。それをなくすための構造的な改革をしないと、日本そのものがダメになってしまう」と発言したとします。そこで国民の共感が得られると「あいつは『優秀』だ」となる。

ここで「アベノミクスは素晴らしい。成果をあげている。引き続きやりましょう」と言っても民意を得られないでしょうし、民主党のように「もう一度、子ども手当を出しましょう」と発言したとしても、それも見当違いです。

我々も仕事をする中で、自分の思いや気持ちを言葉にして発信する機会に突然出くわすことがあります。会社の朝礼で「一言お願いします」と言われたり、会社の役員が集う場で「お前はどう思う?」と意見を求められることもあるでしょう。

これは「優秀」と言われる人に限ったことではありません。その予備軍の、そこそこ仕事ができる人にも、そういった機会はやってきます。

そのような場面において、周りの人たち、つまり上司や同僚、部下をうならせ、「上位3パーセント」の存在であることを確信させるような発言をすることで、「優秀さ」を決定的にすることができます。

その主たるものが、本来、誰かが言わなければいけないのに、誰も口にできないことでしょう。

会社が非常に危機的な状況にあるのに、誰も口に出せない。そんなとき、「このままでは、この会社はいけないと思う。変えなければいけない」とはっきり口に出し、そのための具体的な策を提示できる人が「優秀」と見なされます。

あるいは、社長の肝いりで始めたプロジェクトが、明らかに時代にマッチしておらず、成功がまったく見込めない場合。社内の人間の誰もが「やめたほうがいいんじゃないの」と思ってはいるものの、とても言える雰囲気ではない。そんな中で、「もうやめましょう」「やり方を変えて、新しい方法で取り組んでみましょう」と言うと、「よくぞ言ってくれました」となる。周りから共感を得られないことには、名言とは言えません。

なんとなく思っているけれど、誰もが言いづらいこと。警鐘を鳴らしたり、構造を変えたり、漠然と行われている仕事を改革したり、皆が感じている問題意識を代弁してくれるような一言。

そのような名言を吐ける人を、周りは「優秀」と認定するのです。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[この記事は2015年10月14日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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