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「優秀社員」の法則

相手にストレスを感じさせない「ダンドリ力」 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(2)

2016/11/13

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あなたの評価を左右する14の特性(1)

1.相手にストレスを感じさせない「ダンドリ力」(大前提)

「優秀さ」はその会社固有のローカルルールにより具体的な意味が異なると言いましたが、どんなルールであっても、その根底には共通してある前提が存在するのではないかと感じたことがあります。

ライフネット生命の岩瀬大輔社長とお会いしたときのことです。彼はハーバードのビジネススクール(経営大学院)を首席で出ており、面識のないときから「優秀」という噂を耳にしていました。実際に会ってみても、頭脳明晰で、発言も立派、人間としてもとても魅力的な人物でした。

彼のように「優秀な人」は通常、とても忙しいものです。一日に何人もの人に会い、打ち合わせも次々とこなしていかなくてはならない。当然のことながら、そこでいろいろな仕事が残ってしまう。「今度、○○さんを紹介しますね」「さっき話に出たラーメン屋さんの情報、後でメールします」といった、ちょっとした約束事もしかりです。

たとえば打ち合わせでコーヒーを飲んだとします。「このコーヒーもおいしいけど、前に御茶ノ水で飲んだコーヒーは格別でした」という話をしていて、「そのお店、どこにありますか? 今度ちょうど御茶ノ水に行く用事があって、寄ってみたいです」と言われた場合。

岩瀬さんなら「今すぐはわからないんですが、後でメールを送りますね」と言って、その場を離れた瞬間にささっと処理してしまうのです。そこですぐに処理しないと、後にどんどん溜まっていってしまうからです。「ダンドリ力」、つまり処理能力が非常に高く、コミュニケーションをとる中で相手にストレスを感じさせないのです。

「今度行きますね」と言って全然来なかったり、「あの件は私から連絡します」と言っておきながら実行しない人がいます。すると周りから、「あの人は忘れっぽいのかな」「『仕事ができる』と言われて、すこし調子に乗っているのかも」と、マイナス点が加算されていく。

やがて、「あの人は『優秀』だけど、人への気配りができない」「『優秀』かもしれないけど、言ったことを忘れがち」と、「優秀」に条件がつくようになります。それがいくつか溜まり、周囲で共有されるようになったら終わりです。

Aさんが「おいしいお店を見つけたから、一緒に行こう。今度連絡します」と10人に言っておきながら、誰にも連絡しなかった場合、10人が「あれ?」となる。それがどこかでくっついて、「俺も実はこの間、同じことをされて……」と言い出すわけです。

すると、「結局電話がかかってこなかった」「やっぱり」「私も!」「あいつって結局、そういう奴なんだね」となる。「『優秀』だけど」の「だけど」が3つ、4つになり、気がつくと「仕事自体はできる奴だけど、約束を守らないから。そういう意味では信用ならないよね」と言われ、「優秀」枠から脱落してしまうのです。

岩瀬さんを見ていると、「優秀」であるということには、相手にストレスを感じさせない処理能力を持っていることが前提なのではないかと思うのです。

2.「あれはまずいでしょ」のNG行動がない

現代では「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉がよく使われるようになりました。たとえば国会議員が不倫をしたり、ジェンダー的に問題となるような発言をしたり、昔なら黙殺されていたかもしれませんが、現代では「それってコンプライアンス上、どうなんですか? 倫理的に問題ありますよね?」と言われます。

私たちの仕事においても、取引先に対しての態度から、ちょっとした発言に至るまで、法的または倫理的にNGと思われる行動があった際、いわゆる「イエローカード」と「レッドカード」、くだけた表現でいうと「ちょっとどうなの」と「あれはまずいでしょ」というものが積まれていきます。

その結果、それまで積み上げてきた「優秀さ」が、すべてチャラになる可能性が大いにあります。現代は、その点の一種の「寛容さ」が少なくなってきていると思ったほうがよいでしょう。

たとえば飲み会で羽目を外しすぎてしまったり、仕事でやや強引にお客さんにものを売りつけたり、自分では「これくらい問題ないだろう」と思っている程度の「やんちゃ」な行為。過去に「優秀」と言われてきた人たちの中にも、そういう「やんちゃ」をしてきた人はおそらくいるでしょう。かつては「優秀さ」とある程度の人間性があれば、「やんちゃ」な部分は「多少は仕方ない」と黙認されていたのだと思います。私の新人時代も、「営業成績がよく、社内の人間関係をそれなりに上手に回していればOK」という風潮がありました。仕事のあと、飲み屋で「社内不倫は2人までセーフ」なんてことを言う上司がいたくらいです。当時の価値観では、それも「やんちゃ」の範疇(はんちゅう)だったのだと思います。

しかし今では、「やんちゃ」によってすべてを失ってしまう可能性があります。それがイエローカードなのか、はたまたレッドカードに該当するのか。レッドならば一発退場。積み上げた「優秀さ」が、それこそ砂の城のように簡単に崩れ落ちてしまいます。

会社によっては、ちょっとした規則でも破るのを許さないところもあります。イエローカードにはならないけれど、それを10回くり返したらイエローに、100回ならレッドになることもあるのです。

「ダンドリ力」で触れた「口約束を守らない」という行為は、一度であればイエローカードにも満たないものです。「あいつは忙しいから、言ったことを忘れちゃうんだよね」くらいで済むからです。しかし、それが10、20と積み上がってくると、イエローになる可能性は大いにあります。

「ゴミを拾わない」「会社の電気を消さない」「パソコンをつけっぱなしで帰る」といったささいなことでも、1年間続いたらどうなるか。「会社の鍵をなくした」というのも、1度なら「しょうがないな」で済むかもしれませんが、10回あったら? 「仕事はできても、鍵を10回もなくすなんて、人としてどうなの?」となるはずです。

本人にしてみれば「俺、そこまで悪いことしてないんだけど、なんで?」と言いたいところでしょうが、コンプライアンスに敏感な現代では、大なり小なりNG行動には大いに注意すべきだと思います。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[この記事は2015年9月30日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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