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「優秀社員」の法則

優秀さを左右するのは会社のローカルルール 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(1)

2016/11/13

PIXTA

「優秀」という言葉は、仕事の世界ではごく一般的に使われる単語です。どの職場においても、「あの人は『優秀』だ」という使い方をよくしていると思います。

人を紹介するときは、「彼はすごく『優秀』なんですよ」と言って推薦しますし、紹介してもらいたいときは「誰か『優秀』な人、知らない?」という言い方をします。このように、人は「優秀」という言葉を無意識に使いがちです。「優秀」ということが何を意味するのか、あまり考えずに使っていることが多いとも言えます。

会社における「優秀」な人とは、何か秀でた仕事をしたことがあり、それが社内で浸透していることを意味します。

書籍の編集者であれば、ミリオンセラーを一発でも出せば「あいつ『優秀』なんだよね」と言われる可能性があります。一方で、毎回1万部の本をコツコツと出している編集者は、「優秀」というよりも「あいつはなかなか堅実だよ」と言われる。突出した結果を出し、それが社内で周知されていることが「優秀」の定義となっています。

世の中の会社には、その会社ごとのローカルルールがあります。「優秀さ」とは、その会社のローカルな定義においての「優秀さ」と言えます。このため、ある会社で「優秀」と言われていた人が、別の会社に移ったとたんに「優秀」とは言われなくなることも多分にあります。

隠れたルールを見極めるには

では、自分の会社のローカルルールを把握するにはどうしたらいいか。

ほとんどの会社のローカルルールは文書化されておらず、わかりづらいものです。また、仕事に没頭している人は、ローカルルールをなんとなく把握してはいるものの、その重要さに気づいていないことが多い。

だからといって「ウチの会社では何をもって優秀とされるんですか?」と上司に質問したところで、「そんなの知らないよ、忙しいんだから」と一蹴されるのがオチでしょう。

そういうときは、人事や経営企画、管理部門など、会社を俯瞰(ふかん)して見ている人たちに確認するのもひとつの手です。彼らは立場上、ローカルルールを熟知している可能性が高いからです。

たとえば、「くわしくはわからないけど、出世してるのはバリバリ仕事してる人っていうより、人当たりがよくて調整がうまい人が多いかなぁ」とか、「堅実な人よりも、ちょっと失敗しても派手な仕事をする人のほうがいいみたい」といった具合。優秀さのローカルルールは、そういう人たちに聞くのが手っ取り早いと言えます。

あとは周りをよく観察してみることも大切です。周囲の発言や行動の中で、その会社の特徴や、大事にしているものが見えてくることがあります。

たとえば何か物事を決めるとき。「今、決めよう」と言ったらその場で決めないとダメな会社があります。決断しないことが「悪」になるのです。そんな会社で、「この件は、いったん持ち帰ります」と言った瞬間に、「優秀ではない」というレッテルが貼られてしまいます。一方で、「では一番話し合いが盛りあがったC案に決めよう」などと即断すると、「持ち帰らずにその場で決めるのは拙速ですよね」と言われてしまう会社もあるわけです。

拙速であるのが良いのか、悪いのか。その判断をひとつ間違えただけで、致命傷にもなりかねません。そうなる前に、「どうやらこの会社は、その場での即断をよしとする会社だ」と気づかなくてはなりません。

あるいは、「今度、飲みに行きましょうよ」という言葉ひとつとっても、たとえばそれが広告代理店業界であいさつ代わりの言葉になっているとしたら、その業界内では「いつも口ばっかり」と批判されることもなければ、それで「優秀さ」を取り消されることもありません。しかし、金融業界で「今度、飲みに行きましょうよ」と言ったら「必ず飲みに行く」という暗黙のルールがあったとしたら? 広告代理店から金融業界に転職した「優秀」な人は、どんなに仕事ができても、このルールを破ったことで「優秀さ」の看板を剥奪される可能性があるのです。

普段から周りをよく観察し、ローカルルールに順応していくことが必要と言えるでしょう。

「優秀」の裏の理由にご用心

「優秀」という言葉の意味は、読んで字のごとく「すぐれひいでている」(『広辞苑』より)ということ。優れた人物、秀でた存在であることをたたえている言葉なので、褒め言葉であることに間違いはありません。

また、「優秀」と呼ばれる人は市場価値が高く、周りからの期待もその言葉に込められているようにも思います。人事評価でいえば、上位3パーセントくらいの存在。「仕事の存在価値」でいうと「極小」にあたります。

たとえばこれが「デキる」という言葉になると、そこにはある種の腹黒さや、ずる賢さが垣間見えることもあります。しかし、「優秀」にはそういったネガティブな要素は見られません。「『優秀』だよね」と言われながら、同時に後ろ指を指されたり、嫌みを言われている人を見たことがあるでしょうか?

「優秀」な人が社内でたたえられている存在であることは間違いありません。ポイントは、たたえられている「理由」です。

くり返しになりますが、本書で述べている「優秀」というのは、「その会社の中で」優れているということです。つまり、ある特定の社内において能力が高く仕事ができるという評価が与えられているに過ぎません。具体的に何をもって「優秀」とされているかは、部外者にはわからないのです。

このため、社内では「優秀」と言われる社員であっても、お客さんやクライアントから見た際に、「こちらの求める『優秀』とは違う!」となり、問題が生じることも。「優秀」という言葉を使うときは、その「優秀」が具体的に何を指すのか、その意味を必ず伝える必要があります。「優秀」という言葉の定義を交換し、どういう「優秀さ」を備えているのかをお互いに認識することです。もしかしたらその「優秀さ」は、先方の求めるものとは違うかもしれない。「そういう意味での『優秀』な人でしたら、ほかの人をお願いします」と言われる可能性もあるのです。

「優秀」という言葉は褒め言葉には間違いなく、付き合って損はないタイプと言えますが、人選びをするときには、どういう「優秀さ」を備えているのかを確認したうえで、慎重に考えなければならないでしょう。

それでは、次回から「優秀」と言われる特質にはどのようなものがあるのか。くわしく見ていきましょう。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[この記事は2015年9月16日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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