「なっとう県」茨城か秋田か? 多彩な各地の納豆料理
納豆といえば、茨城を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、家計調査による県庁所在地別の納豆の消費量は、水戸市が福島市に次ぐ第2位だ。県別でも、福島県や宮城県、山形県などと拮抗している。
10月15-16日、代々木公園で、秋田県が主体となって「納豆フェスタ」が開催された。横手市には「納豆発祥の碑」があり、大仙市の大曲納豆汁旨めもの研究会が納豆汁を旗印にB-1グランプリに出展するなど、ここにきて秋田が「なっとう県」のアピールに力を入れている。果たして「なっとう県茨城」の地位は揺らぐのだろうか?
納豆汁は、山形県北部から秋田県を中心に、岩手・青森県の一部の地域で昔から食べられている家庭料理だ。平安時代後期、後三年の役の際に、地元農民から供出させた煮豆が発酵したというのが、秋田の納豆のルーツだ。
納豆をじゅうぶんにすりつぶし、雪深い秋田ならではの保存食である山菜やキノコとともに暖かいみそ汁にする。すりつぶすことで、納豆は汁になじみ、かぐわしい香りが食欲をそそる。
茨城のルーツもやはり後三年の役。奥州に向かう源義家が水戸に宿泊した際、馬の飼料である煮豆の残りから納豆ができたという。
県のアンテナショップ「茨城マルシェ」に行くと数多くの納豆とともに「そぼろ納豆」が並んでいる。納豆に切り干し大根を加え、しょうゆで調味して漬け込んだものだ。酒のつまみとして、ご飯のおかずとして、そのまま食べられる。
「納豆フェスタ」の会場には干し納豆もお目見えした。秋田の乾燥粉末納豆は、干した納豆を粉末にしたもの。ご飯のふりかけになるのはもちろん、みそ汁に加えれば、手軽に納豆汁の風味を味わえる。
茨城の干し納豆は、干すことでうまみが凝縮されるとともに、こりこりとした触感が酒のつまみにぴったりだ。日持ちもするため、酒席の「乾きもの」として常備しておきたい品。
1パック500円の秋田・二代目福治郎の「鶴の子」は「素材にこだわる日本一高い納豆」を謳う。その大粒ぶりが目を引く。
一方「舟納豆」は茨城マルシェ売上ランキングの上位常連の、味が濃い小粒納豆。経木で包むのがこだわりだ。
宮城県の納豆も「川口納豆」が関東で高い人気を誇る。茨城の「なっとう県」は揺るがないが、一方で茨城だけが「なっとう県」ではないこともまた確かなようだ。
(渡辺智哉)
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