甘い焼きウニ、潮汁、卵とじ丼…生だけがウニじゃない
海の幸の宝庫・八戸を食す(3)
イカとサバが代表選手の八戸だが、6月~8月前半くらいまではウニも旬を迎える。蕪島から海岸線を南下し種差海岸をドライブすれば、広がるのは青く広い太平洋と珍しい天然芝生、打ち寄せる波。
旬の時期にはぜひ、寄り道して食堂で生うに丼を。
とろけるうまさにメロメロになること間違いなしだ。だが、八戸のウニ丼がおいしいのは夏だけではない。実は八戸には冬でも食べられるウニ丼があるのだ。
ウニを使った八戸郷土料理の代表格といえば「いちご煮」だ。三陸のウニとあわびを潮汁に仕立てたもので、磯の香りが贅沢に味わえる。
ところでイチゴを使ってもいないのに、どうして「いちご煮」と名付けられたのだろうか。それは白っぽいスープに浮かぶウニが、海靄の中の野イチゴのように見えたからなのだという。嗚呼、なんて風流で詩情あふれるネーミングなのか。土産用に缶詰でも販売されているので、雑炊にしたり炊き込みご飯にしたりしてもおいしい。
ところでウニの産地・三陸では、産地ならではの悩みがあった。
それは旬の短い夏場のウニをいかにして1年中食べられるようにするかということだ。ここから誕生したのが冬でも食べられる八戸独特の「ウニ丼」だ。
ウニ丼といってもよその土地の人が想像する生ウニ丼ではない。八戸でウニ丼といえば「卵とじ」で、旬の時期に獲れたウニを蒸しウニにして冷凍しておき、この蒸しウニを食べる時にアワビと一緒に卵でとじる。「いちご煮」の卵とじバージョンとでも言おうか。
海沿いに点在する食堂では「磯ラーメン」が人気だ。ここにももちろん蒸しウニがのる。
レシピは店によってもいろいろだが、私が食べたものは鰹でだしをとり隠し味に貝のスープを入れ、海老、カニ、ホタテやホッキ貝、わかめをのせた海鮮てんこもりラーメンだった。青じそをちらした海鮮だしのスープは、醤油や味噌、とんこつといった定番とは全く違う驚きを感じさせてくれる。
夏場はアワビの貝殻にこんもりとウニを盛って炭火で焼き上げた「焼きウニ」を召し上がれ。生うにとはまた違う、もっちりしっとりした食感と濃厚な甘みを味わって、幸せを感じない人はいないだろう。
生ウニの味わいしか知らないのはもったいない。旬の夏も、オフシーズンの冬も、それぞれ違うウニを味わって、ウニ道を一歩極めよう。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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