powered by 大人のレストランガイド

パックされていない鏡餅、鏡開き…餅にも絶滅危惧種このごろのお餅(3)

先週来、「『富士宮やきそば』が商標登録として認定されたぞー」というメールをいただいていた。地名と食べ物の名をつなげただけの商標というのは原則認められないのだが、富士宮の場合は知名度の高さが評価されて認定にこぎ着けたのだそうだ。「夕張メロン」や「宇都宮餃子」も認定されているが、こちらは特定の字体に限られている。富士宮の場合は言葉自体が認定された珍しいケースという。

富士宮やきそば 信頼のブランド

申請していたのは当サイトでもおなじみになった富士宮やきそば学会の渡辺英彦会長が率いるNPO法人。渡辺さん、よかったねえ。

突然ですが、本題に入ります。

餅を煮るか焼くかという重要問題が存在する。これまでの登場した「煮餅」の最高峰は南予地方のどこかに存在する「魚の煮汁で煮込んだ餅」ではないだろうか。その続報が届いた。

雑煮の素?=PIXTA
ご意見 南予の魚煮汁雑煮ですが、本当にあの甘辛い煮汁です。鯛の煮付けの汁だったと思います。昨年まで瀬戸内の大三島という島に4年ほど住んでいましたが、そこでもこの話をするとびっくりされたので、かなり地域は限定されると思います。
島時代に、保育園のお餅つきで子供がもらって帰ってきた折いっぱいのお餅の中に、見慣れぬ黄色い粒々入りのがありました。「これはうわさに聞くみかん餅に違いない」と思ったら、粒の正体はピーナッツでした。でもスーパーには、みかん餅や芋餅が常設されていました。さすが給食にみかんジュース炊き込みご飯を作るお土地柄ということでしょうか(にゃんちゃん)
蛇口からオレンジジュース

魚の煮汁雑煮の話から、あっと驚く「みかん餅」が飛び出しました。四国辺りにはみかんジュースで炊いたご飯があるという話はすでにこのサイトで多くの方々の耳目を集めましたが、みかんは餅にも進出していたのですか。で、餅に入るみかんは実ですか皮ですか。それとももち米をみかんジュースで炊いたものですか。

それとみかんジュースご飯が給食に出るというのは、本当だろうとは思いますが本当ですか。

煮餅ならぬ「炊き餅」。

名古屋風雑煮=PIXTA
ご意見 オレの両親はそろって関東近郊出身者ですが、父方の祖母は愛知県の出身でした。かつて横浜近郊に住んでいたときは、母の実家の「お雑煮」を、お正月には食しておりました。焼いた角餅が小松菜と鶏のささみと蒲鉾の入ったすまし汁の中に入っておりました。ところがある日のこと、出張で愛知県に行った父が、近隣にあったゴルフ場のフィーの安さに目がくらみ、勝手に転職し、家を愛知県内に購入してしまいました。
どうも彼のブレーキの付いていない性格は、オレに遺伝したようです。これを機に、わが家のお正月の食卓は一変してしまいました。父が暴君化し、父方実家式「正月の食卓」戒厳令を布いたからです。
おせちの黒豆には、コンニャクやゴボウや「かち栗」と呼ばれている乾燥させた小さな栗を入れて甘辛の醤油味で炊いたものに変更させられ、昆布巻きも小ハゼを炭火で焼いて1匹ずつ昆布で巻いたものに変更させられました。そして、雑煮です。ていうかオレの中では、アレはかれこれ30年近くを経た今になってもいまだ「雑煮」とは認められないものなのですが。前回の横浜のYKヒルビリーさんの情報の中にあったとおりの代物。醤油味の出し汁にとろみがつくほど煮込まれた角餅に、菜っ葉がへばりついている。その菜っ葉は毎度おなじみ小松菜ではなく「餅菜」あるいは「正月菜」といわれる愛知県特有の菜っ葉。色は小松菜より薄く独特の苦味があり、小松菜よりも日持ちがしない。
大学入学で開放されるまで、オレとこの父方実家式「正月の食卓」との死闘が繰り広げられたことは言うまでもありません。
そして、ふと思い出したのですが20数年前に亡くなった父方の祖母はこの「お雑煮」を「雑煮」とは言わず、「炊き餅」と呼んでいました……今年も「オレ様バカ一代」ぶったてていきますので、皆様ご指導・ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。バイバイキ~ン!(西荻の怒髪天娘さん)

餅を決して煮ない生き方もある。

青海苔は不可欠=PIXTA
ご意見 実家は千葉県の太平洋側に面しています。入る餅は角餅で必ず焼きます。煮るなんてもってのほかです。味は醤油味で一番の特徴は青海苔を入れることです。それも一般に出回っている青海苔ではなく、この時期にしか出てこない千葉県の青海苔を使います。確か種類が違っていたと思いますが。磯の香りのしないお雑煮なんて正月らしくないですね(千葉の菱田さん)
デスク家の雑煮

九十九里に「はば雑煮」というものがあります。「はばのり」という海藻を乾燥させて、雑煮にもみ入れるものです。ひょっとしてこのことでしょうか。雑煮から海のにおいがするって、すてきですね。

デスク関心 千葉「都民」なので知りませんでした。一度食べてみたいです。

京都で餅購入量が多い理由。

京都の小さい丸餅=PIXTA
ご意見 京都で餅消費(購入)量が多いのは「おけそくさん」があるせいかもしれません。ほとけさんのお供えです。小さい丸餅で、なにかの大きさを示すときに「おけそくさんくらいの」というと、ぱっとわかるという代物です。京都市内ですと、町内に1軒はお餅屋さんがあり、そこでおけそくさんを売ってます。
京都には仏事の餅がいろいろあって、四十九日の餅というのも丹後の方に行くとあります。一升餅を49の小餅と残りを大きな丸い餅にします。お葬式をしてくれたお寺に納めるので、お寺では味噌雑煮は常食です(常にお餅が切れないため)。
他にも「寒餅」といって、お正月が終わった寒の季節になると、またお餅を食べるので、1月はやたらに餅を食べているような印象があります(多田伊織さん)

京都が餅の大食い地帯だったなんて、総務省家計調査の数字を見るまでは全然知りませんでした。統計には出ない「仏教と餅の関係」がよくわかるメールです。ありがとうございました。

先に「山形では元旦には餅を食べない」というメールを紹介した。その補足というか反論。

つきたての餅 その場で大量に=PIXTA
ご意見 元日の朝に餅が出ないのは、大晦日に餅つきをして、つき立ての餅を雑煮餅、納豆餅、あんこもち、ゴマ餅、アメ餅、くるみ(胡桃)餅、など岩手県や宮城県北部には負けますが(大晦日に)たっぷり食べるので元日の朝は、餅は固くなっていますし、見るのもいやになっていますから、また新年の最初の食事に前の年の残り物は食べないものと、父親(明治生まれ)は言っていました(山形県東根市大字羽入では角餅など見たことがありません。丸餅です)。
雑煮餅は鶏肉、ゴボウ(必須)、コンニャク、ニンジン、干したゼンマイ、セリなど具だくさんの醤油味です。先週載っていたようなあっさりした雑煮は聞いたことがありません。あのお宅だけの特殊な例ではないのですか。
“味のキコウ”毎週見ていますが、数少ない一部の読者の投稿のみで断定されるのは本当の姿を映していないのでは? “キコウ”だからおふざけではすまないのでは。餅の消費量は完全にまちがっています。これも販売量と逃げないで下さい(唐橋さん)

つまり大晦日の夜に本格的な「年取り膳」をするので元旦の朝は餅は不要ということでしょうか。理にかなったお話と思います。ただ、旧暦の考え方に従って年取り膳をする地域や家庭で元旦に餅が出ないことに疑問を感じなくても、「正月膳」「組み重」「鉢盛り」に重点を置くところ、家庭にとってはやはり驚きではありましょう。

それと総務省の家計調査はもともと「消費量」ではなく「購入量・額」の調査なので、消費量については誰も言及しておりません。先週紹介したミルフォードさんからのメールの冒頭部分をご確認いただけたらと思います。

いろんなところでいろんな餅が食べられている。「焼き初め」って知ってました?

えっ、お餅に?=PIXTA
ご意見 お雑煮の餅は岡山では煮ます。私は溶けそうに煮えたお餅が好きです。4日が焼き初めで、そうすると焼き雑煮というのも作りますが、これは焼いたお餅にお茶をかけて醤油とカツオ節で味をつけるというかなり大ざっぱなものです。これを他の家でもやっているかどうかは知りません(お名前ありません)

お茶をかけるんですか? でもってお茶を味付けする。どうも個人の趣味で始まった食べ方ではないような気がします。「焼き初め」という言葉。お茶。何か伝統のにおいがします。どなたかご存じの方はありませんか?

もちつけ!=PIXTA
ご意見ではないらしい 暴れている人を見つけたときに言う言葉。「おーい、まあまあ、もちつけ」……..失礼しました!(お名前ありません)

野瀬・デスク はい?

京都の納豆餅。つき込むタイプばかりではない。

つき込んじゃう?=PIXTA
ご意見 小生の父は京北町山国村生まれで、その影響で物心ついたときには納豆を食べておりました。そのため納豆餅は当たり前で、暮れに7臼ほど餅つきをして1臼は納豆餅を作っておりました。ただし、つき込むのではなく包み込みます。
1臼の半分ほどを平たくのばし、その上に納豆を広げます。その上に残りの餅のまた半分ほどを平たくのばしながらのせます。またその上に納豆を広げ、残りのお餅を広げます。もう一度納豆を広げ、これをくるみます。形はオムライスごときになります。少し日を置き、固くなったところで、これを包丁で2~3センチの厚みで切ります。切った形は平べったい豆餅で、納豆は同心円状にプツプツと入っております。
家で餅つきをしなくなる少し前、本当につき込みました。当然納豆はつぶれ、納豆色した餅ができあがりました。ただ、臼に納豆のにおいが付き、洗うのに苦労しました。でも前記の納豆餅よりおいしかったです(鞠鼠さん)
納豆ドックもまんもす凄い

納豆をつき込むのも凄いですが、オムライス型納豆餅はまんもす凄いです。阿蘇式納豆くるみ餅なんてかわいいものです。

デスク賛同 柔らかいままではなく、固くなって一体化してからスライスして食べるというのが凄いと思います。茨城県人もびっくり?

今回のテーマ「このごろの餅」を採用するきっかけになったのは「鏡開き絶滅危惧説」であった。その鏡開きはどうなっているのか。

大阪・豊下家の鏡開き 木箱と包丁(大)は100年もの(豊下さん提供)
ご意見 私が勤めている会社では鏡餅を飾るのですが、これが昔ながらのスタイルでパックになったりしていない、いわば「素顔」の鏡餅。若いスタッフは「パックされていない鏡餅を初めて見た」とこっそり触っていました。これなら「鏡開き」もできるはずですが、例年どうなっていたのか記憶にありません。今年はしっかり行方を見届けます(札幌生まれ札幌育ち、道産子三代目、雪あかりさん)
パックじゃない鏡餅=PIXTA

若いスタッフが「初めてパックされていない鏡餅を見た」といって珍しがっている様子には隔世の感を抱きます。年とったんだなあ、おれも。

デスク絶句 ……。

餅の形態や雑煮の姿は現代の行政区画なんか問題にしない。

京風雑煮=PIXTA
ご意見 雑煮は父は広島出身で丸餅白味噌ブリ入り、母は奈良県十津川村出身で角餅醤油です。現在大阪の北部、京都寄りに住んでいます。昔からの地の人(少なくとも江戸時代から住んでいる一家)は完全な京都風で餅よりカシライモの方が大きい雑煮だそうです(ナニワのオジンさん)

大阪在住京都雑煮という方は多いでしょう。兵庫在住大阪雑煮もあるかも。当サイトの地図は都道府県単位ですが、歴史のある食べ物を調べるには旧藩単位の方がいいのかもしれません。でもそれは無理! できません。

様々の餅や雑煮の姿形、もしくは食べ方。

とりあえずうどんこさん家のあん餅雑煮
ご意見 香川県のお雑煮はあん餅が入ることで有名なので、実家のお雑煮写真を添付します。雑煮にエリンギが入っているのは、家族が某きのこ会社に勤めており、その関係で冷蔵庫にエリンギが常備されているという家庭の事情からです。
ただ、香川の人でもあん餅派、普通の餅派で好みが分かれます。去年の正月は母親に「どっちの餅にする?」と聞かれましたが、今年の正月は何も聞かれずにあん餅が入った状態でお雑煮が出されました。私はどちらも好きなのですが(とりあえずうどんこさん)
切り餅=PIXTA
ご意見 先日大阪の実家で母から徳島は切り餅だと聞きました。徳島の親戚からもらったお餅が切り餅だったそうです。
昨年末は三重県伊賀上野の伯母の餅つきでアクシデントがあり、半数が切り餅になったそうです。伯母は「楽やさかい、来年から切り餅にしようか」と言っていたそうです。確かに丸餅は手間がかかります。丸餅の地区に住みながらも合理化のため、切り餅にスイッチする可能性もありそうです。四国のお餅は丸いのか四角いのか気になります(お名前ありません)
七草雑煮(生まれて49年、名古屋以外に住んだことのないわたしさん提供)
ご意見 わが家では毎年1月7日の「七草」には、「七草がゆ」ではなく、母親の郷里の新潟上越地方のお雑煮をいただくのが決まりごととなっています。名古屋の「焼かない角餅」ともち菜(小松菜)だけのシンプルなお雑煮と違ってぜんまい・大根・ニンジン・コンニャク・竹輪・焼き豆腐・椎茸・鶏肉が入った具だくさんのお雑煮です。お餅も軽く焼き目をつけてから入れるというのも名古屋流とはまったく違って新鮮です。ただし、これにはちょっとした伏線があって、神棚などの小さなお飾りの鏡餅をカビないうちに食べてしまおうというわが家流の知恵だったようです(生まれて49年、名古屋以外に住んだことのないわたしですさん

徳島の丸餅が切り餅にとって代わられようとしているのだろうか。VOTE結果に注目したい。

ところでこんな餅の食べ方、どう思います?

この中に入れちゃうの?=PIXTA
ご意見 あたしは三重県で神社の嫁になって初めてよその土地のよその家のお雑煮を経験したのですが、それは赤だしの味噌汁に煮た餅と大きな大根ダケが入っているモノで、理屈ではなくどうしても体がそれを「雑煮」と認識することができず、餅とふろふき大根が入った味噌汁としか認識することができず正月を迎えた気がしなかったのを覚えています。
あたしが今まで経験した一番ファンキーだなと思う餅の食べ方はココアに入れる、です。実家から死ぬほど餅を送ってくる友達がやってました。コーヒーより紅茶よりココア、だそうです。見た目はマシュマロみたいでかわいいです(JIROMALいずみさん)

我が家にはココアが常備されている。子どもたちは餅大好き。条件はそろっている。家族を驚かしたろ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

大人のレストランガイド

メールマガジン登録
大人のレストランガイド