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LGBTの女性起業家、転職重ね天職みつける 虹色ダイバーシティ代表、社会保険労務士 村木真紀さん

2016/10/5

全国各地の企業・自治体で講演を行っている

性的マイノリティー対応は、ダイバーシティ経営の本質

 企業の社会的責任(CSR)活動では「ダイバーシティ」(多様性)を前面に押し出すところが増えてきた。しかし、日本では女性活用やワークライフバランスなどにスポットが当たりがち。今後は国籍、宗教、性的マイノリティー、ハンディキャップを持つ人などを含めた本来の多様性を意識する必要がある。虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さんに、性的マイノリティーの社会進出支援や経営者の心構えなどについて聞いた。

職場になじめず転職繰り返す 東日本大震災で一念発起

村木真紀さん

 私は学生時代からレズビアンだったのですが、大手飲料メーカーの経理を皮切りに、システム構築、販売、連結決算支援など様々な職を経験しました。転職を繰り返したのは、性的マイノリティーの当事者であるがゆえに職場になじめなかったためです。

 就職した当初はプライベートと仕事は別と割り切っていました。しかし、「彼氏は?」などのセクハラ発言に加え、プライベートについて聞かれることの多い飲み会なども避けていましたから「チームに溶け込めていない」とも言われました。嘘はつきたくない。でも、カミングアウトもできない――結局どの職場でも同じジレンマを感じて転職を繰り返しました。

 何度かの転職の後、コンサルティングの仕事が多忙を極める中で体調を崩し休職。その休職中に起こった東日本大震災が、私にとって大きな転機になりました。自分はいったい何をやっているのか。社会のために自分ができることはないのか。

 自問自答を繰り返す中で、英国のLGBT支援団体「ストーンウォール」のホームページを見て、自分の進むべき道が見えてきました。英国は同性婚や差別禁止法があり、LGBTの権利に関しては日本より進んでいます。

 ホームページで見つけたある日系企業にLGBT施策について聞きに行ったことがきっかけで、その会社で講演することになりました。当初は会社員と並行して講演活動をしていましたが、その後も次々と企業向けの講演依頼があり、独立することを考え始めました。

 企業に向けてLGBTをきちんとダイバーシティ経営の課題の一つに組み入れることを提案したいと決意し、2013年にNPO法人・虹色ダイバーシティを設立しました。そのために、人事系の法律を一から学び、社会保険労務士の資格を取りました。

データと他社事例で説得、カギ握るのは支援者の有無

 虹色ダイバーシティの現在の主業務は、企業人事の担当者に向けたコンサルティングです。日本にはLGBTに関するデータがなかったため、国際基督教大学ジェンダー研究センター(CGS)と共同研究で「LGBTに関する職場環境アンケート」を14年から毎年実施しています。当社のホームページでも公開していますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

 調査結果の中で注目すべき点は、「ハラスメントが少ない職場の方が勤続意欲が高い」「LGBTに対する差別的言動は、当事者の勤続意欲にマイナスの影響」があることが明確に示された点です。また、都会も地方も差別的言動がありますが、地方のカミングアウト率が少なく、これは「アライ」(支援者・同盟者)と呼ばれる人が少ないためと考えられます。社内に理解者がいるかどうかは、当事者の心理に大きく影響します。

 また、日本企業の場合は「他社事例」を気にするところが多いため、当社では開示できる例は情報提供しています。まずは、社会への影響力の大きい各業界のトップクラスの企業へのアプローチを図っています。

今後10年が社会変革の正念場、当事者スピーカー育成が課題

 いま、LGBTには追い風が吹き始めています。文部科学省は10年に、性同一性障害の児童・生徒について教育相談を徹底し本人の心情に十分配慮した対応をするよう都道府県教育委員会などに通知しました。しかし、13年の実態調査では対応割合が6割と低く15年に改めて通知を出し、今年4月には教職員向けのパンフレットも作成しました。

 また、東京都渋谷区では「男女平等および多様性を尊重する社会を推進する条例」を施行し、昨年11月から同性カップルを結婚に相当する関係と認める「パートナーシップ証明書」の発行を始めています。

 こうした取り組みは、セクシャルハラスメントやマタニティーハラスメントと同じ道をたどっているように見えます。日本企業は成功事例に学ぶことにたけていますので、1990年代に若者だったLGBTが高齢期に突入し、介護や病気などに直面する前、今後10年をめどに、制度改革を全国に広げていく必要があります。ムーブメントを法整備に落とし込む段階にきているのです。

 当社では地域の核、企業の核となる人たちに理解を深めてもらい、チェンジマネジメントの手法で変革の輪を広げてもらいたいと考えています。そのためにも、体験を伝えることのできる当事者スピーカーの育成が課題です。詳細を詰めている段階ですが、福岡と仙台で「LGBTスピーカースキルアップ講座」も開催する予定です。

 性的マイノリティーの人たちは「自分だけが社会から認められない存在」と思いがちです。性的マイノリティーを理解している、支援したいという思いの読者がおられたら、それをぜひ職場などで表明していただき、「アライ」の輪を広げていただきたいと思います。

◇     ◇

性的マイノリティー

 性のあり方が多数派に比べて少数の人たちを指す。同性愛者(レズビアン、ゲイ)、両性愛者(バイセクシャル)、性別越境者(トランスジェンダー、性同一性障害、性別違和)などを含む。同性を好きになる人、戸籍上の性別と異なる性別を生きる人/生きたいと望む人など、そのあり方は多様だ。

 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのイニシャル「LGBT」という言葉も最近ではよく使われている。日本では人口の7.6%がLGBTとの調査もあり、在留外国人比率1.76%(16年1月、総務省)よりもはるかに多い。

「アライ」とは

 アライ(Ally)は英語で「盟友」「味方」を意味する。ストレート・アライ(Straight Ally)とも呼ばれる。LGBTなど性的マイノリティーの当事者ではないが、当事者を理解し、支援するという考え方またはそうした立場を表明する人々を指す。 

 大手企業の中にはLGBTへの対応を明文化したり、各部署に「アライ」を置き、LGBTに寛容な雰囲気を醸成するなど、職場環境の改善を目指した取り組みを行っている企業も増えてきている。

村木真紀さん(むらき・まき)
虹色ダイバーシティ代表、社会保険労務士
1974年茨城県生まれ。京都大学卒業後、日系の大手製造業、外資系コンサルタント会社などを経て2013年より現職。関西学院大学非常勤講師、大阪市人権施策推進審議会委員。15年「Googleインパクトチャレンジ賞」など受賞多数。共著「職場のLGBT読本」(実務教育出版)。

[2016年9月26日公開の丸の内キャリア塾を再構成] 丸の内キャリア塾とは、キャリアデザインを考える女性のための実践的学習講座です。毎回、キャリアやライフプランに必要な考え方と行動について多面的に特集しています。Facebookページは https://www.facebook.com/marunouchi Twitterアカウントは https://twitter.com/_marunouchi_

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