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「残念なひと言」というと、あなたにはどんな言葉が浮かびますか? どのような場面を、イメージするでしょうか?

場の空気を読まない発言であったり、間違った解釈で、にわか仕込みの知識を披露したり。触れてはいけないことを質問したり、励ますつもりで「上から目線」で会話をしたり。そうした発言がたび重なると、「残念なひと言」にとどまらず、「残念な人」になってしまいかねません。

口から出た言葉は戻せません。取り繕おうとするほど焦りから失言が生まれ、ますます「残念な人」になってしまいます。自分は心配ないと思うあなたも何気なくつぶやいている「残念なひと言」のせいで、出会いやチャンスを逃がしているかもしれません。

「残念なひと言」のほとんどは、悪気がなく自覚もないだけに厄介です。なぜその「ひと言」が、相手をイラつかせるか? 不信感をあおるのか? 理由が分かれば、発言を改めるでしょう。そして「残念なひと言」を言いそうになっても、ちょっとした「言い換え」を知っておけば不本意な結果になりません。あなたの、好感度は間違いなく上がります。

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残念な返答「でも」「だって」

何を尋ねても「でも」「でもねえ」で返してくる人がいます。もっとくだけて「だって」「だってさあ」と、返してくる人もいます。

たとえば、あなたが「この本は役立つよ」と友人に薦めたときに、「でも……」「でもねえ……」と返されたらどう感じますか?

「でも」や「しかし」などは、前の発言を否定して反対意見を伝えるときの接続詞ですから、その後に出るのは「必要ないです」とか、「そうは思わない」のような否定的な言葉です。ですから、「でも」が口から出た途端に、あなたは落胆するはずです。「だって」ならば、「そんなの知っている」とか「もう使っている」といった、もっと独りよがりの発言に聞こえるでしょう。

すべてに共感しなさい、というのではありません。自分の意見を持つのは大切ですが、コミュニュケーションの基本は相手の立場になって考える。相互に理解を示すことですから、言下に否定しないで受け止める。先の例ならば「良さそうですね」「使えそうですね」などと受け止めてから、自分の意見を伝えるといいでしょう。

ほめ言葉が「残念なひと言」になるケース

上手なことを「上手」「うまい」とほめて、なぜいけないの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、目上の方が職業として行っていることに対して、「上手」「うまい」というのは、あまり受け入れられません。「残念なひと言」になります。

小説家に読者が、「さすが、○○先生。文章が上手ですね」。アナウンサーに視聴者が「話がうまいですね」といったら、おかしいでしょう。分かりやすくするために極端な例をあげましたが、専門職の方にその道に関してズブの素人が「うまいです」「巧みですね」などと発言するのを、しばしば耳にします。職業なのですから、うまくできて当然。後輩やその道を知らない人間が「うまいですね」とほめるのは慎むべきでしょう。

正直、「うまいな」「すごいな」と感じたのならば、相手をほめるのではなく自分を主語として、その結果、どうなったのかを伝えた方がいいと思います。すると「勉強させていただきました」「いい機会をいただきました」というように謙虚な発言が生まれ、素直な姿勢を示すことにもなります。

「お疲れさま」と「ご苦労さま」には使い方のマナーがある

仕事やプライベートで「お疲れさま」や「ご苦労さま」という言葉は頻繁に使います。「ご苦労さま」も「お疲れさま」も相手をねぎらう言葉ですが、使い方を間違えると「残念なひと言」になってしまいますので、注意が必要です。現実には、間違って使われていることが多いので、ここで整理しましょう。

●「お疲れさま」

この言葉は、上司や目上の人に使うのが本当のところですが、年齢や役職にかかわらず、すべての方に用いても、間違いではありません。一般的なあいさつ代わりとしても使えますので、便利な言葉ともいえるでしょう。だからといって「お疲れさま!」と言い切るのは失礼です。相手を敬う意味があるのですから、「お疲れさまです」と添えましょう。

●「ご苦労さま」

部下や目下の人に使う言葉として、理解しましょう。よく目上の人に向かって「ご苦労さまです」と伝えている場面を見かけますが、ビジネスシーンでは不釣り合いです。たとえば、上司が長年かけて研究開発にかかわった商品が完成したときに、「ご苦労さまです」とねぎらうのは、一般的には失礼にあたります。

しかし、日本語の解釈は時代とともに変わっていきますし、「気にする必要はない」「ねぎらう気持ちが伝わればいい」と、思う向きもあります。本来「ご苦労さま」と「お疲れさま」は相手に合わせた使い分けをすべきですが、初対面の場合には、判断できないこともありますね。ですから、目上の人に対しては、「ご苦労さま」は使わない。立場や地位を重んじる、言葉に過敏に反応する方もいますから、「お疲れさまです」のみを使うのが無難です。

「たった一文字」で印象が激変する

「コーヒーと日本茶のどちらが、よろしいですか?」。訪問先で尋ねられることがありますね。あなたは、どう答えていますか?

「コーヒーでいいです」(あるいは「日本茶でいいです」)と、答えたら相手は残念な気持ちになるでしょう。「で」は、「○○で我慢する」「仕方がない、○○で」というように、物足りなさや妥協を表す助詞だからです。あなたには他意はなくても、相手はそう受け取ってしまうのです。

では、「で」を「が」や「を」に置き換えてみましょう。「コーヒーがいいです」「日本茶をお願いいたします」――こうすると、より前向きで明るい印象に変わり、もてなす側も気持ちがいいものです。

同様に「は」の使い方も、見逃しやすいといえます。「この製品、デザインはいいですね」と言えば「それ以外は悪いのか?」と余計な勘ぐりをされかねません。先の例ならば「この製品、デザインもいいですね」といえば、他にもいいところがたくさんあるという意味になります。

「で」や「は」は使い方のクセもあるでしょう。しかしたった一文字で「残念なひと言」になりかねない。あなたの印象を左右する大切な助詞なのです。ただし、「残念なひと言」をとがめたり注意をするのは、おすすめしません。反面教師として受け入れる、心の余裕を持つこと。求められるのは、相手を思いやって話すことです。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は10月12日の予定です。

[2016年9月13日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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