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あなたは、誘いやお願いを断れないために、困ったことはありませんか? あるいは、好みではない贈り物を受け取り、社交辞令で「欲しかったんです」「大好きです」などとつぶやいたために、「そんなに喜んでもらえるならば」と、何度も贈ってくださる方がいたり。

「ノー」が言えないことで、窮地に陥った経験は誰しもあるでしょう。「ノー」とはっきり言えばカドがたちますし、言わなければ、ストレスが蓄積されていきます。

かといって「遠まわし」にもったいぶって言えば、誤解を招く恐れもあります。「ノー」を言う人も言われる人も、嫌な気持ちを味わわないためには、まずは、断るのは悪いとか、失礼にあたるという思い込みを、捨てる必要があります。

相手を尊重し自分を成長させる「ノー」の力

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私自身、人間関係で一番苦手なのが「断ること」です。「ノー」は、できるならば言いたくはありません。「ノー」と口にしたら、わがままだと思われるのではないかしら? 自信がないと、受け取られてしまうのではないか? 「ノー」には、そんな後ろめたさがつきまとうからです。

しかしよく考えてみると、「ノー」には、プラスの意味合いもたくさんあります。たとえば、中途半端な対応をして相手を困惑させたり、気をもたせるよりも「ノー」ということで、

●相手に誠実さを示すことができる

●自分ができることを理解してもらえる

●より良い関係を持続できる

といった3つの大きなメリットが、相手と自分にもたらされます。

また、あなたには、

●ストレスから解放される

●優柔不断な自分と決別できる

●毅然とした態度が共感を導く

など、恩恵を与えます。

「ノー」が言えないという自分に原因があるのに、その思いをため込んでいるとやがて相手に嫌悪感を覚えることになってしまいます。そんな事態を防ぐためにも、明るく爽やかに断ることは欠かせません。では具体的にどう伝えたらいいのか、シチュエーション別にみていきましょう。

気乗りしない誘いを断るには

本当は参加したくないのですが、お世話になっている方や先輩などから飲み会や勉強会などに「○○さんは、もちろん参加するよね」とか「あなたのためになるから、出席しなさい」と誘われたら、困ってしまいますね。相手の都合に合わせていたら、時間はいくらあっても足りません。自分のやりたいことを削ってまで、合わせる必要はないでしょう。

かといって、「ダメです、忙しいので」「無理です、その日は予定があるので」と、ばっさり結論を言ってしまうと、人間関係に溝が入る可能性が大です。

また、「楽しそうな会ですね」「興味深いですね」「どなたが参加されるのですか?」などと、関心があるような発言をするのも、タブーです。それは相手を察しての言葉でしょうが、期待を与えてしまうだけでなく、相手主導で話が進んでしまいかねません。

このような場合には、

●「お誘いいただきありがたいのですが、今回は遠慮させてください」

●「誠に申し訳ないのですが、参加は見合わせてください」

などと、相手の気持ちを受け止めながらも、「ノー」を爽やかに伝えましょう。この時、「嫌われるのではないか?」「二度と誘われないかもしれない」と、考えてはいけません。その思いは、言葉の端々に現れるものですから注意しましょう。

おしゃべりな人をかわすには

あれこれ詮索してくる、プライベートなことまで踏み込んで質問してくるおしゃべりな人は、意外に多いものです。相手が先輩や上司ですと、無視するのも気が引けますが、「そうですね」「まあそうです」などと、生返事をしたら、ますます聞いてくる可能性もあります。

嫌な気持ちを伝えないままに避けたり、話をそらすのは得策ではありません。なぜそんな態度をとられるか相手は、理解できず関係がおかしくなるばかりです。

そこで、

●「○○さんとは、いいお付き合いをしたいので、△△については私から話を切り出さない限り触れないでほしい」

●「○○さんと親しくお話ができるのはうれしいのですが、△△について聞かれると困ってしまいます」

などと、相手を受け入れながら、率直にお願いするのが好ましいでしょう。

急に用事を押し付けられた時には

この記事をご覧になっている方で一番多い「断りにくい」シチュエーションは、予定があるのに、急に用事を押し付けられることではないでしょうか? 「今から○○してね」「すぐに○○に取り掛かって」「お願いしますね」などと、念を押されたら、正直、ため息が出てしまうでしょう。

そして怒りに任せて、「○○さんは、どうしていつも急に仕事をふるのですか?」「私にばかり、押し付けるのはなぜですか?」「頼める人はいいですよね」などと言ったら、皮肉や嫌みに聞こえるでしょう。これでは、何の解決にもなりません。

私でしたら、

●「これからは予定があって難しいですが、あすの午前中ならば時間がとれます」

●「きょうは厳しいですが、あすならばお手伝いできますが、いかがでしょうか?」

などと、代替案を提案します。これは、相手の申し出を否定しているわけではありませんから、明るい「ノー」と言えるでしょう。

なお、「忙しいから」「時間がないから」は、断る理由にはなりません。「私だって忙しいから、君に頼むんだよ」「時間がないのは、みんな同じだろう」と逆襲されることもありますから、慎みましょうね。

断るか、受け入れるかを決めるのは、あなたです。相手を尊重しながら、素直に誠実にあなたの言葉で伝えましょう。「私が我慢すればいい」「無理をすればできる」という思いも分かりますが、それは本音ではありませんよね。日ごろから、少しずつ「ノー」を伝える練習をしていきましょう。

厳しい表情ではなく柔らかな表情で、ビクビクしながらではなく自信をもって、「ノー」を伝えましょう。それは相手もあなたもすっきりする。人間関係がよくなるコツでもあります。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月21日の予定です。

[2016年8月30日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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