縁日の焼きイカ、海から遠くなると煮イカに 地勢映す
縁日系(3)
「煮イカvs焼きイカ、ついでにイカ焼き」から入る。
私は小さいころから「煮イカ」で育ってきました。お祭りの日にしか食べられないのですごく楽しみにしていました。煮イカはハレの日の食べ物です。高校の文化祭のときも「煮イカ」の屋台をクラスで出しました。地元のスーパーに頼めば煮イカ用のイカ(冷凍・切れ目入り・食紅付き・1箱100匹)を用意してくれます。
「焼きイカ」を屋台で見るようになったのはここ7、8年のことです。子どものころ「焼きイカ」は家庭で網で焼いて食べるもので、けっしてハレの日の食べ物ではありませんでした。お祭りの屋台の食べ物は「ハレの日」の食べ物でなければなりません。子どもの夢が膨らむように(猪瀬さん)
煮イカは食紅で着色することがこれでわかる。どんな色に煮上がるのだろう。で、問題はなぜこの地方に煮イカが広がったのか。焼きイカでない理由は何か。名古屋のあの方が今週も登場。ただし別人28号のようなマジな内容。
富山県などで水揚げされるイカは、長野県や群馬県などの海岸線を持たない地域にも古くから届けられ、商品化されていたそうです…例えば信濃南部地方では水揚げしたイカの皮を剥ぎ塩水に漬けた上に、ワタを取り除いた内部に塩を詰め込んだものが流通しました。地元では「塩丸イカ」と呼ばれるそうです……(塩抜き後)細切りにして酢の物にしたり、キュウリと和えて酒肴として食するようです。
そして信濃中央地方には「煮イカ」と呼ばれる郷土食が存在するとのこと。塩丸イカと同様、日本海のイカを内陸部に届けるために水揚げしたイカを浜でゆで上げて、そのまま現地に運びます。地元ではこれを刺身にして食べているそうです。最近ではオシャレにサラダにして供することもあるらしい。
栃木県が長野・群馬に連なる関東甲信越地方に属することを考えれば、歴史的にイカを生の状態から調理し食する文化を持たなかったことが考えられます。
また、流通元になる真イカの本場、富山県氷見市でも塩辛や黒造りの他に、取れたてのイカを味噌漬け(つまり加工)にしたものに、ゆでた足とワタ、刻んだネギを詰めて焼く鉄砲焼きなる料理が存在するとのこと。そして北海道で有名な「イカめし」も存在し、地元では「ぽっぽ煮」あるいは「福俵煮」と呼ばれているらしい。「イカのべんから煮」も存在し、これは真イカをワタとともにサトイモと煮たものらしい。日本海のイカ漁基地=氷見では、どうやらイカを煮て食する文化が優勢であるようです。
以上のことから考えるに、日本海のイカを煮て食する文化の流入と、流通上、保存食の状態でイカが届けられることが、栃木県に「イカ焼き」屋台ではなく、「煮イカ」屋台を生んだのではないかと仮定するのですが、いかがでしょう?……ということで、今回はまたしても毒を吐けませんでした。これでも一応、サラリーマンですからあ~っ! 残念っ!!! ということで、今回はこれにて切腹っ!!(名古屋のデパガさん)
これは有力な説である。鯖街道に似たイカ街道があったかもしれない。かつて食べ物は産地との距離、保存方法などに規定される面が強かった。
デスク平伏 すごい、すごい。先週のデパガさんと同一人物とは思えない内容です。勉強させていただきました。
ウチの読者の皆さんはみんなすごいのよ。
とすると煮イカ地帯は栃木、長野、茨城に限らず海から遠い所なら日本中どこにでも存在するということにはならないだろうか。例えば北海道の沿岸地帯は焼きイカなのに内陸部は煮イカとか。VOTEでこの辺りのことを明らかにしたいと思う。
焼きイカは焼き物、煮イカは煮物。でもイカ焼きはコナモン。ご存じですね。大阪名物のイカ焼き。溶いた小麦粉をクレープ状に広げイカやゲソをのせて裏表を焼く。片方には卵1個が張り付いてソース味。以前から梅田の阪神百貨店地下にあるスナックランドのものが有名だが、最近は町中で本当によく見かけるようになった。
ここで外国の屋台風景を紹介しよう。ミルフォードさんが出張先のタイで撮ってくださった写真。
同じ縁日で、「水のようなカキ氷をコップで食べる」物件も発見しました(確か今治で食べられていたとサイトで紹介されていましたよね)。こちらも人気で、タイらしい原色系のコップがそこここで見られました。
タイでは、カキ氷のシロップをうすめたような飲み物にも出合いました。氷を入れて冷やして出てきましたが、炎天下を歩き回ったあとでのむ甘い味は、イメージと違って妙においしかったです。(ミルフォードさん)
今週掲載のタイの屋台の写真はすべてミルフォードさん提供。
米国人も屋台を楽しむ。
そのジュースですが、白くて四角いポリタンクを小さくしたような容器に入っています。紫と言うか緑と言うか妖しい色で、何だか化学兵器のモトなような気分になります。
で、それを飲んでみたところ、「この世の中にはしょっぱいジュースというものがあるのだな」。彼の国にも奥深いものがあるようで(みなみ@神奈川さん)
【天然素材系】
1.焼きトウモロコシ:皮のまま焼いて蒸し焼きにし、焼きあがった熱々の皮を剥いて、巨大なバターの缶の中に突っ込んでからお客に渡します。トウモロコシの熱で溶けたバターがしみこんでテカテカになります。うまいです。
2.焼きアスパラガス:縦に串で刺してそのまま焼いただけ。しかしそのアスパラガスが巨大。味は甘いですがけっこう硬いです。
【粉もん系】
3.ファンネルケーキ:ゆるいホットケーキのような生地を、揚げ油を満たしたフライパンの中にじょうご(ファンネル)で無秩序に流し込んで揚げたもの。ノーマルは粉砂糖をかけるが、スペシャルはジャムや生クリームを大量にかけてくれる(写真)
4.エレファントイヤー(象の耳):パンのような生地を薄く大きく伸ばして油で揚げたもの。シナモン、粉砂糖、ジャムなどをかける。とにかくでかい。人間の顔で3人分くらいの大きさ。
【甘いもん系】
5.シシカベリー:シシカバブーとストロベリーの合成語で、イチゴを串に刺してチョコレートをかけたもの。
6.ストロベリーショートケーキ:カップに入った濃厚イチゴジャムに生クリームやマシュマロをのっけただけのもので、スポンジ生地は存在しなかった。ストロベリーショートケーキを注文してこれが出てくると日本人的には相当びっくりする。
とにかくすべて油か砂糖、もしくはその両方がたっぷりです。食べれば脂肪がでっぷりです(鮭サンドが食べたいブーニーファンさん)
化学兵器のモトのようなジュースといい、座布団みたいなパンといい、スポンジ抜きのショートケーキといい、見てみたいが食べたくない食べ物ばかりがどうしてこうも並んだんでしょうか。いっそのことエレファントイヤーと日本の芭蕉せんべいを戦わせたらどうでしょうか。
ここでデスク乱入 でも、バター焼き蒸しとうもろこしにはそそられるものがあります。食べてみたいです。
私、たぬきの××××は八畳敷きっていうとこから、ぶわ~んて広がるおせんべいをそういうのかなって思ってたんですけど、今改めて考えると膨らんだときの形がたぬきっぽいからなぁって、乙女な感じで思い直しましたことよ。だって、やだもんね。××××食えって言われてもさ(矢作ちかぶーさん)
困惑 最近、伏せ字が多くて困っています。名古屋のあの方、そしてちかぶーさん、共に女性です。そして既婚者です。人妻ともいいます。人妻といえば、かつて拙著に対する反応を調べるために私の名前で検索していたら「人妻日記」というのがヒットしました。カミさんが見ていないのを確認して開いたら、人妻である書店員の方のただの日記でした。人心を惑わすようなタイトルはつけないでいただきたいと思いました。何の話でしたっけ。
デスク恥も外聞もなく乱入 ××××、の話じゃなかったでしたっけ?
ちがう。
で、この「芭蕉せんべい」のおじさんですが、私が子供のころから店を出しておられます。「芭蕉せんべい」よりもおじさんの年齢が気になります。ぜひ調査してください。
一度も「芭蕉せんべい」は食したことはありませんが、来年の初詣にもキットおじさんは腰をフリフリ「芭蕉せんべい」を焼いていることでしょう。そのときは意を決し「芭蕉せんべい」を食べることといたしましょう(小西さん)
探偵ナイトスクープにハガキ出してください。このおじさんは絶対テレビ向きです。調べてくれると思います。でも一体何歳なんでしょうねえ、ほんとに。
煮イカと並ぶもうひとつの重要物件「群馬の焼きまんじゅう」。
でもSAにある外に出ているお店って屋台系に近いですよね。女性に勧めたけど、まんじゅう1個1個が大きいのと味噌ダレが口の周りにつくので不評でした。全国制覇には大きさも考慮しないといけないのでしょうか?素のまんじゅうの他に餡入りもあります(お名前ありません)
実は私、群馬の焼きまんじゅうの存在を今回初めて知ったのであります。群馬県にほとんど足を踏み入れたことがないのと、踏み入れたときは速攻で取材してとんぼ返りだったものですから飲食店周辺を彷徨する時間がなかったのです。
でも、味噌だれの焼きまんじゅうが群馬県人及び出身者の魂の食べ物であるというのは、どこかほのぼのしみじみしたものを感じます。私のチャンポンみたいなものなのでしょう。チャンポンについてはまた後で。
ある土地ではソウルフードであっても、ヨソモンから見ると全然違った存在。
豚まんは皮が厚い方が好き、たい焼きのあんこは尻尾まで入ってない方が好きな粉物×重曹好きな私としては決して嫌いではない味だったですが、同じ値段でたこ焼きやお好み焼きが買えるという値付けに多分もう買わないと思う(女子供文化評論家の荷宮和子さん)
いい悪いではなく、単なる「やっぱりコナモンの方がいい」という関西DNA所持者の感想なので群馬県がらみの皆さん、そこんとこよろしく。
それにしても、宝塚の人々の芸名ってみんなどうしてあんなんだろうと思って答えが出ない私なのであった。
「せんじ」というもので思い出したのは広島の「せんじ肉(がら)」。豚の胃袋の味付けしたものの素揚げ。ビーフジャーキーのような食感で炙ると更に良いおつまみになります。馬や牛のもあるそうですが肉がない時の代用食だったと聞きました(kazusuketさん提供)
広島の「せんじ肉」は私にとって未知の物件です。「かすうどん」などで活躍する関西の「かす」は牛の腸を揚げたもの。富士宮やきそばに投入される「肉かす」はラードの搾りかす。そこに豚の胃袋(馬、牛も)の素揚げが加わりました。全国にいろんなものがあるんですねえ。
夏場にかき氷が食べたくなっても広島で「せんじ」と注文するのは危険です。愛三岐のみんさんご注意ください。
今週も皆さんからたくさんの貴重な写真を送っていただいて充実したビジュアルになった。多謝。
VOTEは「あなたの所の縁日で出るのは主に焼きイカですか? 煮イカですか?」。
そしてもうひとつ。「あなたの所のポリタンクは何色?」
以前、灯油を入れるポリタンクは「東が赤(ピンク)で西が青。しかもフォッサマグナの辺りに境界線がある」という説を紹介した。それを検証したい。
そこで今回から糸魚川―静岡構造線が走る新潟県と静岡県に限って県内を二つに分けてみようと思う。「あなたがお住まいの都道府県」のところで新潟県は「糸魚川以東」と「以西」に、静岡県も「静岡市以東」「以西」でお答えいただく。では糸魚川市民、静岡市民はどうするかというと市役所より東か西かで選んでいただく。えっ、市役所に住んでいる人はどうするかって? そんなの知らん。好きにして。さあ、きれいな線が描けるだろうか。
糸魚川―静岡構造線が重要な意味を持つという結果が出たら、特別仕様の地図を追加することになるだろう。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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