東の酢醤油、西の黒蜜 ところてんの食べ方、なぜ違う
ところてん・他海藻系(3)
本題に入る前に、えびのすり身をパンで挟んで揚げた「はとし(ハトシ)」に関してのメールを紹介する。前回私は「蝦土司」と表記するのではないかと書いた。
以上のようなことから、中でも台湾のYahoo!で検索された比率からして、当サイトでは「蝦土司」改め「蝦多士」とする。JIROMALさん、そこんとこよろしく。
デスク攻撃的乱入 JIROMALさんからぁ、メールでいただいたメニュー表ではぁ、ひらがなでぇ「はとし」であるぅ。人の店のメニューを勝手に変えるなー。訂正を要求するー。
そして「蝦多士」は長崎、関西以外の土地にもあった。
「鹿鳴春」は博多駅の地下にもある。今度九州に帰ったら点検してみよう。あれば、ぜひとも食べたいものである。「はとし」情報を待っている。待っていると何が本題なのかわからなくなるのだが、知りたいから仕方ないのである。
それはともかく、ココイチのおかげで名古屋においては白玉とあんこが入った「コーヒーぜんざい」を飲みながら「白玉ぜんざいパン」をむしゃむしゃやることが可能になった。なんなら納豆コーヒーゼリーサンドで締めることもできる。めでたいことである。
身ではなく心太らすところてん 飴屋水無
いい句ではないか。「心太」らすのところがニクイねえ。誰の作? きっと豊下製菓の豊下さん。句に続いてこんな文章が。
上等な黒蜜は黒糖を解かして作るのですが、一般には砂糖の精製過程でできる「洗い蜜」から夾雑物を除いて黒蜜にします。大坂の砂糖屋の仲間組織は、秀吉時代の「戎(えびす)講」が始まりと言われていますが、このころから砂糖となじみの深かった大坂・京・伏見・堺・和歌山・尾張にトコロテン黒蜜掛けの習慣が根付いたのではないでしょうか。しかも、当時の都市部をわずかでも外れると黒蜜掛けはしなくなるようです。
以前に書いた池上本門寺参道の茶店のトコロテンも黒蜜でした。蒲田だったか、波照間産の黒糖を使った黒蜜のトコロテン屋さんがありましたよね。
2.「ところてんの食べ方」を考えるにあたっての注意点
ところてんの作り方ですが、都市部では棒寒天か糸寒天を使うのが一般的です。漁村部では天草やオゴノリから直接作ります。当然、磯の香りの度合いは精製度により大きく変わります。磯臭さを抑えるには酢や出し汁が有効です。よって、漁山村地帯で黒蜜食はありません。
古くは『正倉院文書』(天平20年(748)7/10の条ほか)に東大寺写経所の写経生に支給されたとか、『延喜式』にも平安時代は京の東西の市で「心太」を鬻(ひさ)ぐ店が出ていたと記述があります。恐らくは膾(なます)にしたと思いますが、貴族などは甘葛煎を掛けて食べた可能性があります。そして、この習慣が後の黒蜜食につながった可能性も大いにあります。
砂糖商いの「講」が存在した地域と黒蜜ところてんとの密接な関係。磯の香りが強い材料で作る漁村周辺はにおいを消す酢や醤油で、黒蜜は都市部。そして文献では奈良時代までところてんの歴史は遡る。感心して読んでしまった。
ちょっとお勉強っぽくなるが、重要なことなので書く。NHKの塩田さんから近世後期の風俗資料として知られる『守貞漫稿』の「ところてん」の部分を送っていただいた。
「心太、ところてんと訓ず。三都とも夏月にこれを売る。けだし京坂、心太を晒したるを水飩(すいとん)と号(なづ)く……買ひて後に砂糖をかけてこれを食す。江戸、心太価二文。またこれを晒すを寒天と云ひ、価四文。あるひは砂糖をかけ、あるひは醤油をかけてこれを食す。京坂は醤油を用ひず」
江戸末期の段階では江戸、京、大坂とも砂糖をかけて甘くする食べ方があった。ただし江戸では醤油もありだったが、京坂では醤油は使わなかった。現在の関西黒蜜、東京酢醤油という類型が生まれ始めている。
素人なので無理に結論めいたことは書かないが、豊下さんの仮説と合わせるとなんだか、ところてんが歩んできた道が見えてくるようである。
今週は「蝦多士」といい、ところてんの故事来歴といい何だかガクジュツしている。これに「カラギーナンとは」が加わると大変なので来週に回す。
デスク攻撃的乱入 専門的すぎて乱入できないのであるー。素人でもぉ、もっと乱入しやすい内容にすることをぉ要求するー。
青森県八戸市の「あかはたもち」に似ているかもしれません。煮溶かした海藻をバットに流し固めたものです。一見水ようかんのようで、ショウガ醤油で食べたはずです。
「いぎす」の存在自体忘れかかっていたのでインターネットで調べたところ、「いぎす豆腐」もあるようです。竹輪に豆腐が入った「豆腐竹輪」があるような土地柄ですから、いぎす豆腐ぐらいあってもおかしくないかと妙に納得してしまいました。「私の幼少時代の記憶は正しいの?」と山陰地方の読者のメールが登場するのをお待ちしております(ハイファイ堂 二宮さん)
山陰地方ではなく東京のミルフォードさんから答えが来た。
・生大豆粉 200グラム
・「いぎす」 100グラム(「いぎす」はイギスノリ、アミクサとも言われると紹介されています)
・ダシ汁 10グラム
・小エビのむき身 800グラム(ゆでたもの)
<作り方>
(1)乾燥いぎすを出し汁でもどす。煮溶かして練るという感じになるまでかき混ぜる。
(2)ほどよいところで生大豆粉を加えて、さらに練る。
(3)あらかじめステンレス容器の底に半分のエビを敷いておき、その上に(2)を流し入れる。
(4)流し終わった上に残りのエビをあしらい、固まりかけたところで反転し、そのまま放冷する。
(5)冷めたら適当な大きさに切って、酢味噌をつけて頂く。
私は作れそうもないが、それほど難しくもないのではないか。二宮さん、お試しあれ。
殺し文句「夜も寝られません」の使い手「みなみ@神奈川」さんからこんなメールが。
で、この葛切りですが、何となく食感はところてんと似たような気もするので、「日本のどこかで葛切りに酢醤油や辛子を付ける土地はあるのかしら」などと考える始めると夜も寝られなくて、代りに昼間は良く寝られてしょうがないのですが、どうなんでしょうね?
夜寝られなくても昼間寝られるのなら、なんら問題はない。夜寝ているのに昼間も眠たい私の方が問題である。
デスク攻撃的乱入 僕はぁ、夜も昼もぉ、眠れないのであるー。激しい恋に心乱れぇ、眠れないのであるー。これは願望であるー。実現を要求するー。
泣かないでよ。
酢醤油辛子葛切りは果たして存在するのか。否定はできない。どっかでこういう物件、食べてませんかー。
「ダッシュすれば20秒で海に突入(現在は堤防に激突)」という表現が好きである。
デスク攻撃的乱入 激突する瞬間をぉ、ぜひともみたいのであるー。実現を要求するー。だぁーっ。
ダッシュしてどこ行くの? この辺に堤防ないよ!
先週、「冷中華丼」についてのリポートをお願いしていたkazusuketさんから早速報告がきた。
その言葉が近所でも使われるようになって当て字でメニューになった……のかしら。他のお店でお話を聞いてませんのでなんとも言えませんが、面白い話です。
というようなことである。冷皿、冷丼。冷やした皿や丼に盛った料理を連想するが、言われてみると合理的なネーミングではある。さらに調査を続けられたい。
チャブニチュード関連の情報も続々来着している。ちょこっとだけ紹介する。
1.昔、行き付けのディスコBで「ラーメン始めました!」って貼り紙してあったんで早速注文したら「カップヌードル」が出て来た。
2.スーパ-S内のパン屋で買った「ジャムコッペパン」にジャムが入ってなかった(画像参照)。
3.スーパーSで買ったお刺身のつまの下に敷いてあった大葉(しそ)がセロハンだった。
4.近所の和食屋Mは料理の盛り付けに街路樹の葉を採って来て使っている。
5.チーズあんまき。食べたことはないが、想像は付きます。
*2.のパン屋は最近食中毒を出して廃業!しました(Martinさん)
パンで食中毒を出すのはそうとう難しい。ジャムコッペパンにジャムを入れるのを忘れたかわりに、別のパンに腐ったコロッケでも挟んでしまったのだろうか。
デスク攻撃的乱入 昔ぃ、虎ノ門のカウンターバーでぇSントリーの「ザ・ウイスキー」という高級な陶器の瓶に入ったウイスキーがバーテンの背後のぉガラス棚にぃ恭しく置かれていたのであるー。私は心引かれ、大枚をはたいでそのロックを注文したのであるー。しかし出された酒はぁ、無色透明で、味がないのであるー。
そう、その店はぁ、一度だけ取り扱った高級酒の空瓶に水を入れて飾りぃ、はったりをカマしていたのであるー。しかもバーテンはそれを忘れていたのであるー。わたしはぁ、謝罪を要求したのであるー。私の目の前には安酒が表面張力を発揮して注がれたぁ、「シングルロック」が差し出されたのであるー。
だから泣くなってば、そんな格好して。
チャブニチュード判定表に肝心の「ちゃぶ台をひっくり返す」というのがないことについてご質問をいただいている。実はチャブニチュード5でも「店の外に出て『ばかばかばか』と言いたくなる」である。実際は言わないのである。実力行使を伴わないのがチャブ判の原則であって、ちゃぶ台はひっくり返さないのである。本当は後片づけが大変だからである。
デスク攻撃的乱入 ちゃぶ台をひっくり返さないとぉ、星家の明子姉ちゃんの出演場面が減ってしまうのであるー。就業機会の削減であるー。是正を要求するー。
全編を通じてちゃぶ台返しは2回しかなかったって知ってた? その要求は却下ね。
最後に夏の味覚。
「おバカ企画」の名を欲しいままにした「偏食アカデミー」が1998年5月17日付で食べている。高知県安芸市の異業種交流会から生まれた「グループ ふぁーむ」の考案にかかる物件である。実際に現地で食べた隊員は最初は恐る恐る口にしたが、次に「あ、焦げ。ナスの焦げ」と感嘆し、最後は「おいしい」と言って製作担当者を安心させている。この隊員は広島市の「アイスクリーム開発研究所」において「フキノトウのアイス」も試食し、「フキノトウそのものだ」という感想を述べている。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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