ところてんは箸1本で食べるもの? 全国各地に点在
ところてん・他海藻系(2)
名古屋オフ会を開いた。会場は新栄の居酒屋「JIROMAL」さん。次良丸さんご夫妻の店である。定員10人の店は満員となったが、カウンターが直角に曲がっているので全員の顔が見え、誰がどのくらい酔っ払っているのもはっきりくっきりわかったのだった。
実はその夜、超二日酔いだったデスク青面 や、やっべぇ。
料理は新鮮野菜、中でも生で食べるトウモロコシや手で割っただけの泉州のみずなすが印象的だった。参加者はみんな「へーっ」とか「ほーっ」とかの感嘆詞こみで食べていた。マグロのづけのフライなどはどこででも食べられるものではない。手づくりのサザエカレーは絶品で、エビのたたいたものをパンに挟んで揚げた「はとし」もまた、なんともうまかった。
この「はとし」または「ハトシ」というのは長崎の料理ということになっているが、実は関西にもあって「エビパン」として居酒屋でときどきみかける。また天ぷら専門店では「パン」というネタで登場する。名前は違っても同じものである。
では「はとし」となどんな意味なのだろうか。私は以前、広東料理の「エビトースト」がエビパンのモデルでトーストを「土司」と書くという話を聞いていた。
そのことを持ち出すと、中国語に堪能、かつ香港・広州料理に関する本を書いた日野みどりさんが「『は』は『蝦(エビ)』でしょう」と言った。つまり「蝦土司」を音読みすれば「はとし」となるのである。これで一件落着ではないだろうか。
などと盛り上がりつつ、参加者の一人、野呂瀬さん持参の「味噌煮込みいなり」と「ひつまぶしいなり」を賞味した。満腹だー。
で、最後はかねて予定の各自の方式による卵かけご飯の競演。みんなどんな風に食べるのかよーく観察するつもりだったのだが、真っ黄っ黄の超新鮮卵と香りたつ醤油に目と舌を奪われて一心不乱にご飯をかき込んだのである。従って周囲は全然みていない。だめじゃん。
A日新聞が「雑誌、続々名古屋特集」みたいな記事を載せていた。「いまごろ小倉トーストを取り上げられてもなあ」という気分にならないわけではないが、当サイトがスタート時点から注目していた名古屋に焦点が当たるのは喜ばしい限りである。
ある参加者によると「JIROMAL」さんは名古屋でも屈指の名店なのだそうだ。その評価にはうなずける。そこで、次良丸さんに「奇行を見て来たという人に何か特典を」とお願いしたところ、「あっそう」という心のこもった言葉を返していただくことになった。
ここで二日酔いデスク補足 お酒のメニューもたいへん充実しておりました。日本酒・焼酎からワインまでいろとりどりです。
ところてん及び海藻系いってみよう。
でも塗り箸だと滑って食べにくいので、必ず割り箸でした。実家では使用済みの割り箸を洗ってとっておいていたので、その使用済み割り箸を1本使って食べていました(こばばさん)
愛知に次いで水戸市周辺、三重が箸1本地帯の名乗りをあげた。理由は箸を2本使って挟むと切れるからという説も浮上。
岩手は箸1膳、すなわち箸2本である。ならば、岩手のところてんは切れにくいということになるが、土地によってところてんの太さに違いがあるように思う。細くて切れやすい所では箸1本、太い地域では箸2本ということか。あるいは太さとは別に地域による材料の質の差も関係しているのか。
甘いところてんは関西のみに生息しているのだろうか。違うようである。
我が町岡山にはところてんが2種類売ってます。お菓子コーナーには黒蜜ところてん、おかず売場には酢醤油というようにです。まぁ岡山という中途半端なお国柄のためでもあるかと思います(岡山在住の一読者さん)
で、美味しく食べるには何がいいかな~ということで、ところてん+三杯酢+マヨネーズ少々が最近のお気に入りです。お好み焼き、焼きそば、たこ焼きとソース系とのコラボはいままでもありましたが、酢の物とも合うとは……。もっとも、マヨネーズもビネガーが入っているのですね(岡山在住 福ちゃん)
松山にも黒蜜が生息。岡山も黒蜜、三杯酢共存地帯。おかずとおやつの食べ分けが行われている。そしてついにマヨところてん登場。
私たちは名古屋オフ会の翌日、野呂瀬さんの案内でディープ名古屋を散策した。その折に食べたのが「赤味噌ところてん」であった。「愛知県 社会人2年生」さんから大須に赤味噌ところてんがあるとの情報をいただいていたが、私たちが行ったのは栄近くの老舗であった。はい、デスク。ここで感想をどうぞ。
ところてん初体験のデスク乱入 いやぁ、ところてんには赤味噌でしょう。僕の辞書にはところてん=赤味噌とインプットされましたから。ちょっと甘味のある味噌につるつるのところてんはほどよくマッチしていました。しかも酢醤油・辛子コンビに対抗するように赤味噌に添えられていたわさびが絶妙でした。甘い味噌味と鼻に抜けるわさびの辛みが不思議と融合しているのです。
ついでにデスク内部告発 でも、みなさん! 野瀬さんずるいんですよぉ。赤味噌ところてんは僕に、ぜんざいにアイスクリームがのった「クリームぜんざい」は野呂瀬さんに食べさせて、「変わった物食う奴らだなぁ」みたいにして眺めてるんですよぉ!
観察も仕事のうちなの。
エミー隊員援軍 赤味噌ところてん、おいしかったんだからいいじゃないですか。
私は最近、東京でところてんを食べた。まずかった。なぜかと言うと、長年食べ慣れた三杯酢ではなくポン酢だったからである。しょっぱくてのどが渇いた。それに嫌いな辛子もべっちゃりとついていたので、余計食欲をなくしてしまった。その辛子であるが、全国共通ではない。
秋田はおろしショウガ。私は個人的に辛子よりこっちの方がいいと思います。辛子嫌いですから。こばばさんのメールを読み返しても、三重では辛子は出てきません。白ゴマと青海苔です。
たれの種類、箸何本、辛子かショウガか青海苔か。そんなところが争点として浮上してきたようです。
海藻を食べる人々。
わかめのように味噌汁を作るときに入れるのではなく、お椀に味噌汁をよそってから上にのせるのです。そうすると海藻が水を吸ってやわらかくなります。デスクさんは御存知かな? これってどこにでもあるものなんでしょうか?(ななさん)
デスクお答え うーーん、分からん! 赤いというとふのりの一種なんでしょうか? 僕の行き付けの船橋のすし屋さんでは、ふのりを梅酢で戻した真っ赤なものを焼酎に入れてくれたりしますが……。ななさんは千葉のどちらのご出身なんでしょうか? JIROMALの奥様・いずみさんも千葉出身でしたが、房総半島南端、いわゆる安房の国のご出身で、下総の僕とはやはり食に違いがありました。
おモチとは見た目も違うし、やたら黒いし、アンコもつけず酢味噌で食べるのにナゼ「あかはたモチ」なのか? まったく分かりません。しかもこの辺の人はなまっちゃってて、知らない人には「あがはだもず」と聞こえるらしい(八戸市・久しぶりのアンぱんちさん)
「あかはたもち」で私が連想したのは、あの70年安保。トシだなあ。
ただ、つけて食べるものが少々違います。酢味噌もありますが、主なものは辛子+酢醤油(または単に辛子+醤油)です。ところてんと同じような味付けですね。あっ、ところてんって酢醤油+辛子が普通ですよね?(お名前ありません)
ところてんに辛子が普通であるのかどうか、これから皆さんのメールを待ちたいと思います。そうめんつゆで食べる四国も辛子がないような気がしますが、いかがでしょう。
ここでデスク乱入 わさびもあるでよー。
海藻を意識して食べることもあれば、知らないうちに食べてしまっている場合もある。
むちゃくちゃ専門的な内容です。ほとんどわかりません。でも、確かに海藻が粉末や抽出物の形で多用されているようです。ところでカラギーナンて何? 質問されているのに質問している私です。
海外情報。
食材としての昆布は中国では「海帯(ハイダイ)」と言うそうです。ちなみに検索サイトで「中国 海帯」で検索してみたら昆布と豚肉を煮込んだ中華料理ってのが出てきましたが、それって沖縄料理なんじゃないの?と思いました。
もっとも最近の中国ではMBAやら留学帰りだけど、うまく就職できない人のことを「海帯」と呼んでいるようですが(みなみ@神奈川さん)
那覇の牧志公設市場で台湾からの一団を目撃したことがあります。干しシイタケと昆布を大量に買っていました。買い出し部隊だったようです。中国・台湾に伝わった昆布を使った料理は沖縄経由の可能性があるなと思った次第です。
ところが! かかっているものが麺つゆだとおもったらこれが黒蜜で、最初の一口は衝撃的でしたが、食べていくうちにこれはこれでおいしいな、と思いました。
お皿に平らに盛られ、上に具ものっていて、見た目はまったくの冷やし中華なんですけど。タイに赴任している日本人の友人に聞いても、どうもあれを食べた人はあんまりいないらしい(Masakoさん)
黒蜜つながりでこのメールを紹介したら、冷やし中華つながりでこんな情報を。
新潟県栃尾市界隈では冷たいラーメンのことを「冷中華丼・冷丼・冷し丼」と多少お店によって表現が異なるようですが「冷」と「丼」がキーワードのよう。いつからこのようなネーミングになったのでしょうか(kazusuketさん)
kazusuketさんは、相変わらず全国でいろんな物件を食べまくっておられるようである。第1部で「冷やし中華を何と呼ぶ」というのをやったが、その際にはこの「丼」系呼称は登場しなかった。kazusuketさん、是非、現地リポートを。
「餃子の中心で野菜を叫ぶ」というメールのタイトルについ釣られてしまった。
ところが、磐田に来て食べる餃子はキャベツや白菜なのどみじん切りの野菜が肉と同じかそれ以上入っていることが多いのです。だいたい5軒中4軒はこんな感じでした。
この餃子の肉:野菜比問題、食の方言のテーマになりませんでしょうか?
なぜこのことに気づいたかというと、私の母親の作る餃子はキャベツ、白菜、シイタケなどの野菜たっぷりで、とてもおいしかったので、外で餃子を食べるたびに「何で野菜がちょっとしか入っていないの?」と不満に感じていたのですが、磐田に来て「お母さんの餃子だ!」ととてもうれしかったからです。
気になって周辺の人に聞いてみたのですが、浜松や磐田は野菜中心餃子の比率が多く、はやっている店の餃子はやっぱり野菜中心だと言います。どうやら名古屋~浜松の間に境界線がありそうです。ここから東や北、そして宇都宮の餃子はいったいどうなっているのでしょう? 気になります。夜も眠れません。何卒、テーマとして取り上げていただけるよう、よろしくお願いします(野崎さん)
お母さんのギョウザに合えて良かったですね。それにしても静岡県の人はよくギョウザを食べる。確か、浜松のギョウザは上にゆでモヤシがのっかって出てくるのではなかったか。ギョウザの中身、形状、食べ方にも地方性があるのかどうか興味がわく。実はギョウザはテーマ候補の一つ。しばしお時間を。
新聞の方の仕事が忙しくて、この原稿を書くのが遅れてしまった。さっき、デスクとエミー隊員がそろって「まだー?」と催促に来たところである。取りあえずエミー隊員には読者から送っていただいたレトルトの「漬物ステーキ」を渡して帰ってもらったが、そろそろ原稿を送らないとどんな目に遭うかわからないので、これでやめる。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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