ところてんの味付けは酢醤油? 黒蜜? えっソース?
ところてん・他海藻系(1)
前回、アルファ米のことを書いたら米国からこんなメールが届いた。
そういえば、こないだ話に出ていたフリーズドライのご飯。ぜひ実験結果を教えてください。私は普段、炊飯器でカリフォルニアで育てられた?Sushi riceを炊いて食べていますが、たまぁ~~にフリーズドライのご飯も食べるのです。そういえば、お湯以外に入れるのは考えたことがなかった。
日本から持ってきている数も少ないので、カケをしようとは思ってなかったんですが。お勧めなのがあれば、次回やってみようと思ってます(Food Science専攻のYokoさん)
正確に言うとフリーズドライの米とアルファ米は違う。前者は凍結乾燥、後者は熱風乾燥。
それはともかく、このご質問にお答えしなければと考えていたら、ある読者の方が早々と実験しておられた。
早速コーラカレーを試してみました。カレーはコンビニで売ってるバターチキンカレーと言うやつ。アルファ米はコーラを注ぐと90分ほどでふっくらと炊きあがりのように仕上がりました(ちょっと時間がかかる?)。
コーラ色を薄くしたようなご飯をそのまま食べてみるとコーラの香りはあまりなく、うっすらと甘みのついたご飯。カレーを掛けると、コーラの甘みと調和してバーモントカレーのような感じで結構いけます。ただ、食べてるうちにだんだんと甘いご飯に飽きが来てしまいました(酒飲みには向いてないかも)。
次回は甘さを抜くことを主眼にトマトジュースでお米を戻して、この前、東京オフ会の会場トリックスターに一緒に行ったmamichanに試食してもらおうかと考えています。
もう一つ、芋焼酎でなくラム酒で戻してみました。こちらは口に含むとラムの香りが口一杯に漂います。しかし、口の中が覚えているのはラムにはスポンジケーキ。それと比べるとお米は歯ごたえがある。それで、つい何度も噛んでしまうと、噛めば噛むほどお米からアルコール分が出てきます。食べるラム酒といった感じですが、やはり酒は飲む方が美味い(夢の途中さん)
はい、ありがとうございました。というかご苦労さまでした。アルファ米は酒飲みのために作られたものではないので、「やっぱり飲んだ方が美味いや」という結論になって当然である。酒で戻したほうが飲むより美味いなら、とっくにそっち方面でブレイクしているであろう。
ただ、アルファ米は戦争の中で生まれ、戦後は災害時の非常食として生き、人知れず途上国への援助物資となって子供たちの命の糧となっている。その陰で、できるだけ食べられる事態にならないことを祈りながらも品質の向上に努めている人々が存在する。そのことの意味を考えながら、普段は口にする機会がないアルファ米を食べてみるのもいいのではないかと思ったのである。
そう思って、私もコーラ戻しカレーかけアルファ米をやってみようとたくらんでいたら、何のことはない家にあったアルファ米はお父さんが知らないうちに子供たちの胃袋に収まっていたのだった。
本題は今週から「ところてん」などの各種海藻系物件を取り上げる。関西はところてんに黒蜜をかけるという、当サイトで間欠的に出てきた問題を立証するメールから。
ほーら、こんなに軽々と「黒蜜」です。
場所は違うが「ところてんに砂糖」というメールも来ている。
昔は尾張一宮辺りまで黒蜜文化圏だった可能性がありますね。黒蜜ではなく酢醤油しか付いていないときには何か物足りなくて砂糖を加えたのでしょうか。
ところてんは元「凝海藻」。和名は「こるもは」または「こごろも」。これが「こころぶと」となまって俗に「心太」の二字を用いた。「こころぶと」がなまって「こころてい」、さらになまって「こころてん」。さらにさらになまって「ところてん」となった。以上、『たべもの語源辞典』(清水桂一編)。しかし、ここまでなまるとはなあ。
ところでところてんは(あ~読みにくい)、今から1300年前に中国から伝わり、平安京にはすでにところてん屋が存在していたと言われています。当時は「心太」と書いてそのまま「こころぶと」と呼んでいたとか(モノの本による)。
ところがところてんはところを変えて(しつこい)、江戸に伝わり、江戸の洒落ものが「太」のテンだけを読んで「こころてん」→「ところてん」となったとか?(さる筋が明らかにした情報。どの筋やねん!)
なお、食の方言ではありませんが、京都の老舗のところてん屋さんでは「吟醸酒のところてん」がありますよ。左党の方にはうれしい逸品かと思います(いけずな京女42歳さん)
「こころぶと」が「こころてい」を経て「こころてん」へとなまりになまったとの説に対して「そこまでなまるか?」というのが正直な感想であった。しかし、京女さんが「さる筋」から入手された「洒落者が太の中の『点』だけ呼んで『てん』となった」という話の方がわかりやすい。納得しやすい。そうかもしれない。
エミー隊員 私もこの説を信じたい。江戸っ子な感じがします。
四国では黒蜜でも酢醤油でもないようである。
高知、愛媛はところてんを、そうめんのつゆで食べる。全県的にそうなのか。そして香川、徳島でもやはりそうめんつゆ大活躍なのか。もしそうなら、関西の黒蜜に驚いているバヤイではない。食べ物地図の四国の部分だけが違う色に染まってしまう。続報を待ちたい。
ところでこんなところてんも世の中には存在する。
ほかにカルピス派の方がおられたら「あさちゃん」にエールを。で、ところてんにソースの目撃情報。
ただ見ていると、何割かの人達は酢醤油も辛子も付けずにそのままテーブルに持っていき、卓上のソースをかけていました。実はウチのメニューには「ところてん」というものが存在せず、そのときも(今も)食べたことがなくて、当時は「ところてんの好みは人それぞれだなあ」程度にしか思わず、地域差があるとは思いも付かなかったです。
ということで、「全国規模で人がやってくる神奈川県の自動車工場にはある程度はところてんにソースをかける人はいるが、ところてんを出すカウンターにソースを常備するまでには至っていない」ということで。まあテーブルにはソースがある訳ですから、敢えてカウンターに置く必要はないのかもしれませんが(みなみ@神奈川さん)
ソース派はいた。たしかに存在した。一体どこから来た人々であったのだろうか。ぜひ知りたいものである。
ところてんは何で食べる? 箸? それなら何本の箸?
子供のころ、ところてんなんて好きなわけないじゃないですか。でも、弥彦神社にお参りに行くと、なぜがところてんでねー。だから、そのトラウマで、正直、今もあんまり好きじゃないです。
海草は、好きです……エゴはわさび醤油&酢醤油で二つの味で楽しむのがおいしいかな。あ、佐渡のエゴは薄いものをくるくると巻いてあるんですよ。かわいいで~す(矢作さん)
呼び方:本土=えごねり、佐渡=いごねり
形:本土=四角く固めたものを刺身のように切る、佐渡=薄く固めたものを端からクルクル丸めて切って麺状にする
たれ:本土=主に酢味噌、佐渡=主にショウガ醤油
越後平野のど真ん中で生まれ育った私は、佐渡のえごねりを初めて見たときは本気で驚きました。海草を固めたものを麺状にして食べるなんて、ところてんしか知りませんでしたから。
その「ところてん」ですが、越後一ノ宮の弥彦神社の名物が、冷たい清水でキリリと冷やした「ところてん」なんですね。ここ弥彦神社では少々変わった食べ方というか、ところてんは箸一本(一膳にあらず)だけを使って食べるんです。
たれ(酢醤油)は松の小枝が口にさしてあるビンに入っていまして、これをポタリとところてんに垂らし、箸一本で食べにくいことこの上ないですが、杉木立の中でいただくのは夏のなによりのごちそうです。ほんと、美味しいので、お近くにいらした際には是非お試しくださいませ。あっ、ところてんに黒蜜? きな粉? これは邪道ですよー(月潟生まれさん)
弥彦神社参道のところてんは一本箸。しかも塗り箸ですから「食えるもんなら食ってみろ」と言っているみたいです。
さっき、スーパーの各種ところてんを見てきました。「フォーク付き」がありました……フォークー?
で、問題は味よりも食べ方です。私の独自調査によると愛知県各地で、ところてんは箸一本で食べられています。理由は知りません。とにかく物心ついたときからそう決まっていました。だいたいは箸一本で上手くところてんをすくうことはできず、器に口をつける「犬食い」になってしまうのですが、それでも一本でなくてはいけないということになっています(今度母に聞いてみます)。
この「一本食い」ですが、周辺の三重県、岐阜県の人は箸二本で食べているようで、愛知県特有の行動かと思われます。
また、愛知県でも名古屋より西の地域では箸一本は同じだけど、タレが黒蜜になるようです(中村さん)
中村さんのメールには重要な情報が詰まっている。愛知県は箸一本、隣の三重、岐阜は箸二本。
さらに愛知県内でも西部は酢醤油ではなく黒蜜。どら21歳さんのメールを思い出していただきたい。愛知一宮に黒蜜の痕跡が残っている。酢醤油VS黒蜜の境界線は愛知県内を走っているのだろうか。
四国のそうめんつゆに愛知境界説。いきなり大物が飛び出した。「なぜ箸一本で食べるのか」についての考察も待つ。
福岡の「おきゅうと」に関連して「関東でも手に入る」というお便り。
「おきゅうと」はエゴノリを煮て薄く流し固めたもの。矢作さん、月潟生まれさんのメールに登場したエゴは親戚である。海藻の名前は土地土地で異なる。
ふのりを食べる人はいるけど、角又を食べる人は少ないでしょうね。でも分類的には非常に類似したものです。北海銀杏はどうなるんでしょうね?(もちろん、これも仲間です)とっても楽しみです(川野辺さん)
といった具合である。角又って? 北海銀杏も海藻? どうやって食べるんだろう。
日本人の海藻好きは世界に類例がないとされる。四方を海に囲まれているから当然とも思えるが、では海だらけ島だらけのフィリピン人は海藻好みだろうか。韓国人は岩海苔以外の海藻をどんどん食べているだろうか。中華料理に海藻を使ったものがあっただろうか。フレンチは? イタリアンは?
と考えれば外国人から見ると日本人の日常の食卓はそうとうヘンかも。
だが、海藻は体にいいと信じられてきた。再びみなみ@神奈川さん登場。
それから10年以上は経ったでしょうか(その間に祖母は他界)、北海道で「根昆布ウォーター」なる飲料が売り出されたとの話を聞き、引っ繰り返るほどビックリしたことがあります。
我が家にもなぜか「昆布水」と印刷されたプラスチックの瓶がある。きっとどこかで買ったのであろう。だがいまは焼酎の緑茶割りを作るためのお茶が入っている。
デスクやっと乱入 おきゅうとはもちろん、実はところてんも食べたことないんです。もちろん存在は知っておりましたが。海藻系はもしかして、食わず嫌いなのかなぁ。ので、ここまで乱入する機会を失っておりました。でも、昆布とかワカメとかは大好きですよぉ。
実は、野瀬さんに「食いすぎはあなたの健康を害する恐れがあります」といわれたのでダイエットしたんです。お酒はひたすらダイエットビール、つまみは納豆か松前漬け。この松前漬けがうまいんですよ。昆布が糸引いて……。でも、体重もウエストも減ったんですけど、健康診断で尿酸値が高いって怒られちゃって……。ビールと納豆、松前漬け、ぜーんぶ尿酸に悪いものばかりなんだそうです。ダイエットして不健康になっちゃいました。
エミー隊員ついつい乱入 ダイエットなのにビールを飲むあたりがすでに間違っている気がします…。確かデスクはコーラもダイエットコーラだったと思うのですが、私の3倍は消費している気がしてなりません。
二人ともごちゃごちゃ言ってないで、もっと野菜を食えー! いつも言ってるでしょ。
「夢の途中さん」がトマトジュースでアルファ米を作ってみるよう依頼していたmamichanが実験したようである。成果はいかに?
さて、早速アルファ米を試してみました。まず、トマトジュース。コショウと塩を少々入れて薄く焼いた卵で巻けば、オムライスって感じです。薄味のケチャップライスって感じで、じゅうぶん食べられますよ。
次に私のダイ好きなクリームソーダで試してみました。コンビニで探した「白桃クリームソーダ」はですねぇ……。んーと、カレーをかけずに食べられました! けどぉー、また食べたい!とは……んー、中途半端ですね。
例えば 「東南アジアで人気のデザートです」って言われて、ちょこっとだけ盛ってあったら、「ふーん、なるほどぉ」って思えちゃう感じですね。その国では甘くて美味しいモノだけど、ちょっと日本人の味覚には合わないなぁ~みたいな。でも、面白い!
しかも、あのお米が本当に美味しく出来ちゃうのにはびっくり! それが一番の驚きでしたね。それでは、暑さに負けずに、ふぁいとぉ~~。
というわけであった。わたしはおじさんなので書き出しの「うふふ」が気に入ったのである。だが、どっかのおじさんが「うふふ」と書いてきたらきっと気に入らないであろう。書いてこないでね。
ここでデスク乱入 う・ふ・ふ。
エミー隊員も負けずに う・ふ・ふ。
あっち行けー!
たくさんのメールが積み残しとなってしまった。「NYじゃけん」さん、ちゃんと拝読していますよ。ありがとうございました。高石さんもありがとうございました。小迫さん、お気持ち感謝。
今回紹介できなかったメールは来週以降、突如として紹介することもあるので油断してはいけませんべからず。新しいテーマのご提案もいただいた。「円筒形和菓子」が有力候補に浮上中。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。