天然氷のプレミアムかき氷 一瞬の涼感、柔らかい食感
夏を乗り切るひんやりグルメ(2)
天然氷をご存じだろうか? 冬の間に凍結した氷を氷室で保存した、昔ながらの氷なのだが、この天然氷で作ったかき氷が抜群に美味しいという。そんなに味が違うものなのだろうか? 実際に食べてみることにした。
天然氷といえばまず日光。木製の冷蔵庫があるなど、歴史の深さがうかがい知れる松月氷室を訪ねた。
機械による冷凍に比べ、天然の氷は不純物や空気が入りにくいため美しいほどの透明度になる。また、自然の温度変化の中で、長い時間をかけてゆっくりと凍結するため、驚くほどふわっと、柔らかい。
ひとくち食べただけで、その違いが実感できる。一般にかき氷というとしゃりしゃりとした食感、つまり氷を砕いたような感覚があるのだが、天然氷は口の中で氷が「ほどける」。舌の上で「天然氷」がすっと「天然水」に戻る感覚だ。
氷の冷たさで頭が痛くなるようなことはない。要は冷たすぎないのだ。「一瞬の冷感」が口中に涼をもたらし、潔いほどに引いていく。
日光と並び、古くから天然氷の産地として知られる埼玉・秩父。長瀞にある阿左美冷蔵も訪ねた。
木造の店舗がやはり伝統を感じさせる。食べたのは「秘伝蜜スペシャル」。氷の柔らかさは日光と同様。そこに「秘伝蜜」をかけ、あずき、白あん、抹茶あんを好みで加えて食べる。
この「秘伝蜜」が実にソフトな甘さなのだ。かき氷のシロップは概して甘く、食後に水がほしくなるが「秘伝蜜」だけなら、水は不要だろう。
そして、梅干し。食後に小さな梅干しを口に放り込むと、見事に甘さがリセットされる。
山梨県の南アルプスに近い北杜市や、富士山でも天然氷が生産されている。北杜の天然氷を味わうべく道の駅はくしゅうを訪ねた。
フルーツ王国・山梨だけに、様々なフルーツ味のバリエーションがある。氷室から離れた仮設店舗のため、器は使い捨てだが、柔らかい氷の食感は、天然氷そのものだ。
現地まで行かなくても、都心で天然氷のかき氷を出す店もある。貴重な天然氷だけに、いずれもちょと贅沢な価格設定だ。しかし、食べれば納得。
大人にぴったりのプレミアムなかき氷だ。
(渡辺智哉)
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