かほく冷たい肉そば、鶏ガラスープのそば ラーメンも
夏を乗り切るひんやりグルメ(3)
夏に恋しくなるのが冷たい麺料理。冷やし中華やそうめんなどが定番だが、最近、新宿や銀座、六本木など都心でよく見かけるようになったものに「冷たい肉そば」がある。
「冷たい肉そば」は山形県河北町のご当地グルメ。そばというと、かつお出しのつゆを思い浮かべるが、河北の肉そばはラーメンのような鶏出しのつゆになる。トッピングの肉も鶏肉、しかも歯ごたえの強い親鶏だ。
河北町は、日本列島の「背骨」にあたる内陸で、かつて、魚といえば干し魚くらいしか手に入らなかった地域。魚は貴重品。そこで、卵を産まなくなった「廃鶏」を使い、ガラで出しを取り、肉をトッピングにした。
雪深い土地柄にもかかわらず、冬でも冷たい汁で食べるのは、そのルーツが「飲み屋」にあったから。そばどころ・山形では、かつて酒を飲むのもそば屋で、しかも魚が乏しい土地柄、つまみといえば煮込んだ馬肉くらいだった。酒飲みらしく、煮込みをシメのそばにぶっかけて食べたのが、そもそも肉そばのはじまりで、それが定番メニューになった。
トッピングの肉をつまみに酒を飲み、最後にそばでシメる。となれば、熱いつゆでは酒を飲んでいるうちにそばが伸びてしまう。そこで、冷たい汁になったというわけだ。
鶏出しのつゆは、高級な中華スープのよう。鶏をベースに、出しの味を引き立てるようにほんのり醤油が加えられる。実に味わい深い。
味わい深いと言えば、トッピングの「親鶏」。独特の歯ごたえだが、噛めば噛むほど味が出てくる。
肉そばの麺を中華麺に変えた「冷たい肉中華」というメニューもある。和風のあっさりした冷やしラーメンだ。麺の香りが抑えられる分、スープの味わいをより深く噛みしめられる。
スープに氷を浮かべ、見た目にも涼しげな「かほく冷たい肉そば」。
冷凍や冷蔵、さらには常温流通の「肉そばセット」も発売されている。暑い夏でも汁そばが食べたい、という向きにはおすすめだ。
(渡辺智哉)
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