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多様な人材が活躍する組織へ、内外の先進事例から学ぶ

50年以上にわたり女性活躍推進に取り組む国際団体カタリスト主催のセミナー「女性活躍の先へ」が先日開かれました。職場で女性が活躍する機会が急速に広がっている日本の現状をめぐり、同団体のデボラ・ギリスプレジデント兼最高経営責任者(CEO)と日本経済新聞社の佐藤珠希女性面編集長が話し合うなど、企業経営の視点から活発な議論が交わされました。

D&Iを加速させるために日本の企業ができること

ホットジョブから疎外、スポンサーシップ必要

――日本は4月に女性活躍推進法が施行され、行動計画を届け出た企業が5月末で91.6%に達するなど、社会全体で女性の活躍を支援する機運が高まっています。

ギリス 日本は素晴らしいステップを踏み出しました。今後は進捗状況を測定・公表し、行動を継続し続けることが必要です。英国は近年、大企業の役員の女性比率が大幅に改善しました。一方で、対策が滞る企業にはキャメロン前首相が書簡を送るといった対策を続けているのです。

――日本では第1子出産を機に6割の女性が仕事をやめる状況が続いており、働き方改革が避けて通れません

ギリス 世界の先進的な企業では、経営者がまず働き方改革の重要性を理解し、法律を守る「コンプライアンス」から行動へと移る「コミットメント」へとステップを歩んでいます。その過程で男性は職場でも家庭でも自身の役割が変わっていることを認識することが重要です。

――日本でも女性管理職比率は上昇傾向にあるものの、部長や役員クラスは依然低水準です。その背景には成果や昇進につながりやすいホットジョブや情報交換の場から女性が疎外されがちという指摘があります。

ギリス ダイバーシティ(多様性)は"事実"、インクルージョン(個のユニークさを生かした連帯)は"経営上の選択"です。インクルージョンの文化があれば女性にもホットジョブやチャンスがめぐってきます。女性に助言するメンターシップだけでなく、重要な機会に明確な支援をするスポンサーシップも欠かせません。

無意識の偏見が壁に、疑似体験し新しい見方

――ダイバーシティとインクルージョン(D&I)を推進するには、どうすればいいでしょう。

ギリス 例えば2009年にカタリスト・アワードを受賞したグローバルなエンジニアリング会社、CH2M HILL社が参考になります。同社は主なプロジェクトの候補者リストに必ず女性を入れることを社内に義務付けました。その結果、上級管理職や重要プロジェクトでリーダーを務める女性が増えました。幹部へのパイプラインを多様にする方法を意図的に決めることが必要です。

――そうした取り組みが進む一方、「泥臭い交渉ごとは男性が向いている」「育児中の女性は負担が重い仕事を担当したがらない」といったアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が見えない壁になっているようです。

ギリス 世界の働く女性に共通する障壁です。あるグローバル企業では双子を持つ女性と男性幹部がペアを組み、女性の一日を男性幹部が疑似体験することで新しいものの見方が醸成される経験をさせました。臆測でものを言わなくなり、必要な支援を提供することにつながります。働き方ではなく仕事の結果を出すことをより重視するように上司がマインドを切り替えることが大事で、それこそがインクルージョンへの道のりです。

――日本と韓国で実施した意識調査では性別役割分業意識も依然根強いことが分かりました。

ギリス 労働力が減少するなかで、女性の労働参加の重要性をしっかりと訴求していくことが必要です。

――多様な人材が活躍するためには働いた時間の長さではなく、生産性と成果を考慮して評価する仕組みが必要だと感じます

ギリス その通りです。時短勤務など柔軟な職場環境づくりにも世界の企業が目を向けるべきです。女性も男性も家庭で責任を分担し、仕事も家庭もうまくいくように柔軟性を持つことでより幸せで充実した人生を送れると信じています。

カタリスト・アワード受賞 ギャップ社からの学び
ギャップジャパン代表取締役のエリン・ノーランさん(前列左から2人目)を囲む登壇者

ギャップジャパン代表取締役のエリン・ノーランさん(前列左から2人目)を囲む登壇者

カタリストは1987年以来毎年、グローバルで、職場のインクルージョンを推進し成果を上げた企業の革新的なイニシアチブをカタリスト・アワードとして表彰しています。カタリスト・アワード評価委員会委員長のローラ・サバティーニさんは「カタリスト・アワードは、(1)戦略とその合理性、(2)経営戦略の取り組み、(3)説明責任と透明性、(4)コミュニケーション、(5)社員の参画、(6)革新性、(7)測定可能な成果――という7つの基準に照らして審査しています」とグローバル基準の評価方法を説明しました。

2016年の同賞受賞はギャップ社。創業者夫妻は1969年当初からイコールパートナー。受賞対象の同社のグローバル戦略「女性と機会」について、ギャップジャパン代表取締役のエリン・ノーランさんをはじめ、同社社員によるパネルディスカッションを通じて紹介されました。

個人の属性による偏見を禁じる規定を明文化し、投下時間ではなく成果に基づいて評価すること、従来の評点や記述式のレビューをやめ、対面でのキャリア目標設定、育成と成果の議論を重視するよう変更したこと、性別を問わない同一労働同一賃金の徹底、まずはトップ自ら行動を変えていく必要性など、会社のカルチャーとして定着させていく上で多くの日本企業にも参考になる点が語られました。

日本企業の事例から

インクルーシブ・リーダーシップとは

三井住友銀行執行役員 人事部研修所長 寄高由季子さん(右) カタリスト・ジャパン バイスプレジデント 塚原月子さん(左)

三井住友銀行執行役員 人事部研修所長 寄高由季子さん(右) カタリスト・ジャパン バイスプレジデント 塚原月子さん(左)

調査部などで磨いた専門性を武器に幅広い視野を持つゼネラリストをめざしてキャリアを積み、今春、三井住友銀行執行役員人事部研修所長に就任した寄高由季子さん。「無意識の偏見を克服し職場にD&Iをもたらすにはインクルーシブ・リーダーシップが重要」という塚原月子カタリスト・ジャパンバイスプレジデントの指摘を受け、寄高さんは全員参加型のチームを導くリーダーシップについて自身の経験に基づき披露しました。

「質の高い提案をいち早く行うため、各人が得意技を発揮して一体となって戦うチームを組成しました。1人の優秀な人だけに任せるよりも成果に結びつく可能性が高まります。

リーダーは、各人の得意技を認めプラスの発想でチームづくりをすることが重要です。成果評価では、案件の担当者もサポート側もwin-winになるよう工夫しました。成功体験を全員で共有することで、個人も組織も成長する好循環が生まれ、組織の力は何倍にもなりました」(寄高さん)

「日本版リコグニション」 創設を準備
カタリスト・ジャパン バイスプレジデント 塚原 月子さん
 カタリスト・ジャパンは来年、「カタリストによる日本版リコグニション」の創設を予定しています。日本で成功している様々な事例、ベストプラクティスを集めて表彰します。会員企業・組織の皆様がD&Iを進展させる上で参考になり、実行可能な解決方法を提案する場となるよう考えています。ぜひご期待ください。

カタリスト・ジャパンとは
 職場のインクルージョンを通じて女性のキャリア推進をグローバルに支援する企業会員制の非営利団体カタリストの日本拠点で、2014年創設。カタリストは1962年米国で創立され、その後活動を欧州やアジアパシフィックにも広げました。会員企業は世界で800を超え、日本でも50を超えました。グローバルでの調査研究とそれに基づくコンサルティング活動などが高い信頼を得ています。

[2016年7月25日公開の丸の内キャリア塾を再構成] 丸の内キャリア塾とは、キャリアデザインを考える女性のための実践的学習講座です。毎回、キャリアやライフプランに必要な考え方と行動について多面的に特集しています。facebookページは https://www.facebook.com/marunouchi twitterアカウントは https://twitter.com/_marunouchi_

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