夏だビールだ枝豆だ!「edamame」は世界の合言葉
「日本では緑の大豆を茹でたものをビールのおつまみにする。◯か×か」というクイズをアメリカのテレビで見たことがある。もう四半世紀は昔のことだ。
今とは流通も情報量も全く違うその時代の、アメリカ人の答えは軒並み「×」。「大豆を茹でただけ? そんなものわざわざ食べるわけないだろう」と笑い話になっていた時から幾星霜、今や枝豆はアメリカでも大人気。そのまま「edamame」で通じてしまうほどである。
もともとアメリカには大豆は存在しなかった。アジアからアメリカへやってきたのだ。
日本へは米とともに大陸から伝わったとされている。しかし取らずにおくと大豆になる枝豆を、若いうちに食べてしまうのは贅沢なこと。しかも枝豆の収穫時期は短く、収穫後の劣化も激しいということで、大々的に普及するには至らなかった。
そんな「農家のお楽しみ」的な存在であった枝豆がブレイクしたのは、江戸時代。塩ゆでにした枝豆を行商人が売り歩き、それを歩き食いするのが大ブームだったという。いわばお江戸の食べ歩きファストフードである。
現在、枝豆の作付け面積1位は米どころ新潟県。実は、米と大豆には意外な関係がある。
昔から日本には、田んぼのあぜ道を強くするために植物を植える習慣があった。特に大豆は、根から生じる根粒菌が田んぼに窒素を供給してくれるとあって人気だったため、「あぜ豆」という名前で呼ばれていたほどだ。減反政策が施行され、転作を余儀なくされた人々が枝豆に目をつけたのは、日々田んぼを守っていてくれた存在だったからだろう。
ところが作付け面積でなく出荷量となると、新潟県はなんと6位となり、1位の千葉県の半分程度にしかならない。これはどういうことか。
つまり新潟県民は、おいしい枝豆をせっせと作り、せっせと自分たちで食べてしまうのだ。新潟の夏は、枝豆の夏と言っても過言ではないかもしれない。
枝豆には300種類ほどの品種があるという。夏のイメージがあるが、涼しい秋風が吹くころにようやく旬を迎える品種もある。黒枝豆に至っては、なんと10月下旬まで食べられる。長い期間楽しめる喜びを、豆と一緒に噛みしめようではないか。
(食ライター じろまるいずみ)
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