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食べ物 新日本奇行 classic

鹿児島ではラーメンにたくあんが必須 韓国ではキムチ ご当地めん(4)

2016/8/21

大阪で取材したあるラーメンを思い出した。そのラーメンはまさにラーメンスープを作るにあたって動物系のものに加え、昆布とカツオの出しを使っていた。さらに、具材に甘辛く煮たキツネがのっていたのである。

麺は普通のラーメンの麺だったが、ラーメンにもついうどんの姿をさせたくなる大阪の人々のうどんに対する尽きない愛着と、昆布出し信仰の強さを思い知ったのだった。

油そば
ご意見 「油そば」というのは一体どこのご当地麺なのでしょうか(女優の三林京子さん)

「油そば」については日経本紙日曜版ではるか昔に取り上げています。「知る食ロード」というコラムです。これで「しるくロード」と読ませようというのですから、そうとうゴーイング・マイウエーです。「偏食アカデミー」の前の企画で、私がデスクワークをしています。

自分で味付け

元祖の店といわれているのは、いや間違いないでしょうが、JR武蔵小金井駅に近い「珍珍亭」です。亜細亜大学の学生さん御用達の物件。ラーメンのスープの代わりにラードベースの油で溶いたタレを絡ませます。自分で酢やラー油などを勝手にかけてかき回し、自分好みの味付けで食べます。トッピングはチャーシューとナルト、メンマ。1957年と言いますから、47年前から定番メニューになったそうです。

辛いのもある

周辺の店にも伝わり「手抜きそば」「もんじゃそば」「あぶらーめん」などの名前で出ています。東京・武蔵野地区のご当地麺と言えるでしょう。最近は袋に入った生麺の「油そば」も売られるくらい有名になりましたが、私は1回食べたっきりです。今後も食べる予定は入っておりません。

デスクふむふむ 何年か前に確か生麺タイプのインスタント油そばもありました。ちょっとしたブームになりましたね。

自分で味付けする麺料理は「油そば」だけではない。

那珂湊の醤油焼きそば
ご意見 札幌市には「やきそば屋」という名のヤキソバ屋さんがありますが、この「やきそば屋」でヤキソバを頼むと、あまり味付けをしていないヤキソバ(あー、ややこし)が出てきます。で、客は目の前に並んでいるソースやら醤油やら塩やらで勝手に味付けして食べるシステムです。店名と言いシステムと言い、まことにもって北海道らしいと言うか大ざっぱな店です。
ちなみにこの店には普通盛・大盛の上に「これでもくらえ」「死んでもしらねえ」「信じられねえ」などというサイズがあります(みなみ@神奈川さん)

客に好き勝手に味付けさせるというのはゲーム性を高める戦略か。「自分でお好みの味に仕上げてください」方式。いいですねえ。大ざっぱなのではなく、実は計算され尽くされていたりして。

味のついていない麺に自分でしょうゆをかける
ご意見 私は30過ぎまで「うどんすき」とは、すき焼きの残りにうどんを入れたものと思ってました。それが大阪のMみ卯の「うどんすき」で目からうろこが落ちました。「確かにこれなら酒のつまみになるな」と……。しかし、一緒に食べたみんなのこれが当然という反応に「なぜ?」。すき焼き(の残り)にうどんを入れたのはつまみにはなりませんが締めとしては結構いけると思っています(お名前ありません)。
すき焼きにうどん

私の初任地は大阪でした。ネイティブ大阪人の先輩から「うどんすき行こか」と誘われたとき私の脳裏に浮かんだものが、その「すき焼きに入ったたうどん」でした。今でも「なぜうどん『鍋』ではなく『すき』なのか」という疑問が残ったままです。

姫路の駅そば、というより兵庫県の播磨地方一帯および神戸西部にかけて広がると見られる「そばという名の中華麺」は駅以外でも現役情報。

姫路駅そば

「東京生まれ・育ちの、結婚後阪神・西神戸在住の、親の実家が岐阜という激ミックス状態の人間です。だからどの地方の話題になっても毎週うんうん、そーなんだよね~と一人納得しつつ、関西出身・独身時代埼玉の主人と頭つき合わせて読んでいます。結婚当初は豚肉で、こんなもの肉じゃないとばかにする夫に、グラス投げつけてやろうかと離婚の危機に直面したこともありましたが、今はその違いを楽しめるまでに大人になりました(たぶん)」とおっしゃる「生まれも育ちも渋谷」さんからのメール。

えきそば専用(尾道の原さん提供)
ご意見 私は西神戸の某高校の学食に勤めているのですが、例のそばなんです。そう、そばなのに中華麺なんです。うどんは全国共通のうどんで、つゆはかつお出しで、ラーメンはまあ、その黄色い麺で中華スープです。焼き豚とネギとワカメがのってます。そしてそばは、あくまでかつお出しなんですが、黄色い麺なんです~。業者に注文するときは「ラーメン」といいます(なんでやねん)。仕事仲間内では2種類注文したりすると単価が上がるからだとか、そばにアレルギーがある子がいると同じ湯槽で湯がけないからじゃないかとか色々いっていたのですが、そーだったのか……。このあたりの高校はみんな同じ業者の経営なので同じ状態だと思います。関西は奥が深い。いや、神戸周辺でも阪神地区と西神戸方面でここまで違うとは、これからも色々主人と喧嘩交じりに会話していけるでしょう。いやー、あきへんわ。

この証言から神戸西部では、学食運営会社によって複数の高校を舞台に「姫路駅型そば」という「食の方言」が伝承されていることがはっきりしたのである。めでたいことである。

牧のうどん
ご意見 福岡から長崎にかけて存在する「牧のうどん」は、うどんの出し汁が巨大なやかんに入って置いてあるのをご存知でしょうか? 牧のうどんは量が半端じゃなく、食べ進むうちにうどんが汁を吸って「うどんのみ」状態になりますので、やおらやかんからダーっと出し汁を足します。また、うどん汁をすって、やかんダーっ、うどん汁すって、やかんダーっ、無限に食えます(沖縄チャンポンさん)

牧のうどんは何度か食べた記憶があります。でも、出し汁入りのやかんの記憶はありません。いいですねえ、セルフで出し汁足し。神田のガード下の5人でいっぱいになるそば屋(丸椅子があるから座るが、無茶苦茶狭いので本当は立った方が楽)では、そばをいただいていると「出し、足りてますか?」と言ってつぎ足してくれるんです。うれしいですよ。ワカメのトッピングを追加で頼めば、丼全体を覆い尽くすくらいのワカメが出てきます。多すぎる方のためには「半ワカメ」というのもあって、丼半分がワカメで隠れます。安い、うまい、親切なのでいつも昼時には行列ができています。

出し汁をどんどん吸ううどん

ところで「牧のうどん」のうどんは食べているうちに出し汁をどんどん吸うそうですが、どんなうどんなんでしょう。高分子ポリマー? そんなに吸水力があるのなら紙おむつ代わりにもなる? 食事中に醤油かなんかこぼれても、そのうどんで拭いたらいいでしょうね。うどんでテーブル拭くなー。

デスク前回の仕返し 食べ物のコラムなんですから……。ここは読まなかったことにしてください。

先日は高校の先輩から「君、後輩だろ?」メールが来たが、今週は大学の後輩からメールが届いた。ネットの世界って思いもかけないことが起きるものである。

鹿児島では、ラーメンにはたくあん
ご意見 ラーメンに鹿児島では「たくわん」がついている、という話がありました。韓国では、ラーメン(といってもインスタント麺で唐辛子の真っ赤な味がポピュラー)に必ずキムチと「たくわん」がついてきます。鹿児島の影響でしょうか? ちなみに韓国チャンポンも真っ赤な海鮮味でとてもおいしく、留学中は昼の主食にしてました。こちらは「たくわん」と、なぜか「生タマネギに中華風味噌」がついてきます(見明さん)
鹿児島のそば定食

鹿児島ラーメンの元祖「のぼる屋」がラーメンに大根の漬物を付けたのが、たくあんに姿を変えて広がったようです。元祖の店ではたくあんではなく、白い浅漬けでした。韓国ではラーメンだけではなく、とんかつやうどん、そばといった「日式」料理の多くにキムチと並んでたくあんが添えられているのを目撃しました。

そのときの写真がこれである。一品ものの写真は「そば定食」で、囲碁風に言うと左上隅にキムチ、右上方盤外にまっ黄っ黄たくあんがある。いろんな定食が並んだサンプルケースをよく見ていただくと、それぞれにたくあんが付随しているのがわかる。

サンプルケース

日本でも焼き肉屋さんにキムチが置いてあるように、韓国の日式の店にたくあんは必須アイテムのようである。日式の象徴みたいなものであろうか。

たった今、元ソウル支局長の同僚が「日本から韓国に伝わったふたつの食べ物が合体したものをソウルで見たことがある」と言っていた。のり巻き(キンパプ)にカレーがかかっていたそうである。わーお。

焼き肉にキムチ

このサイトにメールをくださる動機は様々だろうが、こんな理由によるものもある。

「人恋しくなって実家に電話したら久しく話をしていない妹が出て、一生懸命いろいろ話をしようと頑張ったのに冷たくあしらわれてしまって悲しいので、代わりにメール書こうと思い立ったところです」

はい、ありがとうございます。で、そのメールの中身。

インスタントラーメン=PIXTA
ご意見 イギリスの大手スーパーでは焼きうどんと焼きそばが真空パック麺にたれつきで売ってますよ。チャンポンはさすがにないですけど。イタリアの友人宅でお母さんが作ってくれた自家製パスタは、子供が粘土でヒモでも作るように、両手のひらで転がしながらながーくのばしたもので、まさにうどんでした。名古屋出身の友人が作ってくれたパスタの味噌煮込みうどんはとってもおいしかったです……。私の住んでるイギリス中部の田舎町では、チャイニーズヌードルバーがあるのですが、ラーメンが「出前一丁」そのまんま。なんてったって、メニューの挿絵も「出前一丁」の少年がおかもち抱えてるあの絵なんだもん。かなしい(よーこさん)
出前一丁

その店で「出前一丁」を注文。持参のマイ卵を割り入れる。グチャグチャにかき回す。先代デスクの表現を借りるなら「混ぜこき回す」。食べる。うまい。

私の好物。カミさんの目を盗んでときどきやっています。

鶏に関するメール2通。

やきとり たれ
ご意見 私の焼き鳥の原体験は、保育園の帰りに街角のお肉屋さんの一角にあった焼き鳥コーナーです。そのころは保温器などはなく、香ばしい香りとともにもうもうとした煙が食欲をそそったものでした。そんな焼き鳥は必ず"たれ"。保育園の帰りは夕方なので、ちょっと甘辛いたれがついた焼き鳥は、少しおなかの空いた私の格好のおやつでした。子供なのでネギが入っているものより肉々しいもの、できればたれがたっくさんからまった"鶏皮"なんて好きでした。
で、会社に入って居酒屋さん。先輩に連れられて部署の人たちが贔屓(ひいき)にしているであろうお店です。器量の良さそうなおばさんが「焼き鳥の盛り合わせ、たれにしますか塩にしますか」の問いに、間髪入れず「塩!」……。えっ? 「塩に決まっているだろうよ」「甘いたれで酒が飲めるか」……。んんん……。野瀬さんに質問です。焼き鳥を食べるときの流派であるたれと塩、なにか傾向のようなものはありましょうか。また、他に変わった食べ方ってありませんでしょうか(焼酎は原酒も好きなイッケーさん)
「社長!」

保育園のころから帰りに焼き鳥を食べていたんですか。好物は鳥皮。そのころからおじさん入ってました? 私はたれと塩は使い分けしています。何でも塩、何でもたれということはありません。というかどっちでもいいんです。ただ、タンは塩ですけど。

行きつけは、どんな客も「社長!」と呼ぶ「焼き鳥の名門 A吉」です。ここのたれは甘すぎず、酒にも合います。食べるものは決まっていて「牛ヒレ」5本、「シロ」10本です。全部たれです。全然参考になってませんね。

変わった食べ方と言うべきかどうかわかりませんが、各地で食べ方はいろいろです。こんなに違うの? とびっくりするくらい違います。書くととんでもない長さになります。というわけで全然お答えになりませんでした。

久留米やきとり

ところで「器量の良さそうなおばさん」というのは器量がいいんですか? それとも一見良さそうだがちゃんと見るとそうでもない? 微妙な表現に思わずほほ笑んでしまいました。

デスクはてな あのぉ、タン、牛ヒレ、シロ、いずれも焼き「鳥」じゃないですよね……。

いいの。「焼き鳥日本一」の久留米じゃ馬もシシャモもエビもみんな「鳥」に分類してるの。

白熊
ご意見 私は鹿児島の出身なんですけど、自分にとっての強烈な「食の方言」体験は二つほど。一つはご存知「白熊」で、大学進学で東京に出てきたころ、夏の暑いさなかに「白熊」を求めてさ迷い歩いた末、「東京には存在しない」ことを知って愕然としました。鹿児島ディアスポラは皆同じ思いをしているのでしょうか。
もう一つは「鶏刺し」。どこにでもあるようなササミや砂肝の刺身ではなく、赤身に黄白色の脂肪たっぷり。そして「毛を取るために表面を焼いた皮」の三層になったものです。ショウガ醤油で食べる人もいますが、私はご幼少のみぎり、毎週のようにワサビ醤油(「甘い醤油」がこれまたよく合うんですわ)をつけて、ご飯とともに貪り食ったものです。聞くところによれば宮崎県の都城が発祥の地ということで、薩隅日(薩摩・大隈・日向)三州では食べるようですが、他県の人間にこの話をすると嫌われること嫌われること。「信じられない」「気持ち悪い」「O157が怖くないのか」てなもんで、当然食堂のメニューにもなく、欲望を抑えかねて鶏肉屋で買った赤身や皮身を、食中毒の恐怖に怯えながら食べてしまったこともしばしばです。
両親は宮崎に移住したのですが、私は帰省すると必ずこれを注文し、焼酎や飯のおかずに暴食しており、昨年などは健康上の理由で母親からタオルが投入されそうになったほどです(薩州薩摩の醜二才@安濃津さん)
鹿児島の地鶏たたきと鳥刺し

中華の店で「蒸し鶏」を頼むと、ささ身を蒸して細かくむしった「棒々鶏」似のものが出てくる場合と、皮つきの肉を薄く切ったものが登場するケースがあります。その「鶏刺し」は後者の非加熱型ですね。宮崎の焼き鳥と言えば串焼きではなく、骨つきもも肉を炭火で豪快に焼いたものが有名ですが、あの辺りの鶏の食べ方には独特のものがあるようです。

その鶏刺し、私は食べたことがありません。今後も食べる意欲がわく予定は入っておりません。

今回のテーマは恒例のVOTEをやらない。皆さんのメールで判明したご当地めんを日本地図に落としてみようと思う。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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