剣先イカ、夏が旬 透き通るコリッコリ、シューマイも
朝市で知られる佐賀県唐津市の呼子。玄界灘に面した港町の名物といえば「イカの活き造り」だ。
海の中から出てきたかのように姿に盛られたイカの身は透き通り、歯ごたえはコリッコリ。見た目の美しさと独特の味わいにファンも多いが、どうしてこんなに透明なイカの姿造りができるのだろう。
呼子で「ヤリイカ」と呼ばれるのは標準和名ケンサキイカのこと。上品な甘みを持つイカで、5月から10月に旬を迎えるので夏イカとも呼ばれる。活き造りに使われるのもこのケンサキイカだ。
イカはゆっくりさばくと墨をはくため、身にもイカ墨がつき黒くなる。これを水洗いすると身が白く濁ってしまう。
しかし、呼子では生きたままのイカをすばやくさばくことで、向こうが透けて見えそうな活き造りが出来上がる。まだピクピクと動くイカの刺身を食べるのはちょっと残酷なようだが、これが滅法うまい。
刺身を食べ終えたあとのイカの耳は、頼めば天ぷらにしてもらえる。これもお楽しみのひとつだ。
呼子のもうひとつの名物がイカのすり身を使ったイカシューマイ。コロンとした饅頭型の外側にふわふわがくっついた見た目はまるで「白いウニ」のよう。
このふわふわ部分は一体何かというと、ワンタンの皮を細かく切ってまぶしたものだ。蒸し上がったものはプリプリの食感と、イカのジューシーな甘さがたまらない。
日本近海で獲れるイカの旬は春夏秋冬さまざま。イカは1年中手に入りやすく、刺身、焼きもの、煮物、天ぷらと、多様な料理で味わえるのも嬉しい。
ところでイカは肝とあわせると抜群にうまくなる。なかでもおすすめは「イカのワタ焼き」だ。
ワタをさばき、日本酒と醤油をちょっとたらして肝醤油を作り、これをイカの身のあえてさっと焼く。ホイル焼きにしてもいいし、鉄板焼きでもいい。
これさえあれば、ビールでも、日本酒でもクイクイ進んでしまう魔法の一品である。呼子までは足をのばせなくても、今夜はおいしいイカ料理を酒の肴にぜひ。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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