適切に使うグリーティングは接客を円滑にする半面、不適切に乱発すると「ダメなマニュアル対応」だと非難される。「される」などと他人事のようだが、さんざっぱら「マニュアル対応」を非難してきたのは、実はこの私だ。

働く若者たちも大変なんだ……

かつて私は、例の「いらっしゃいませ問題」について、書いたり話したりしている。

某古書店が「やまびこ作戦」と称し、客が入店するたび、店の若いスタッフが客を一顧だにせず、仕事の手を休めることもなく「♪いらっしゃいませ……こんばんはー♪」と、変な調子をつけ、大声で歌い上げたり怒鳴ったりを繰り返したことへの違和感を指摘した。あれは今考えてもヘンテコだった。

当時いろいろな人に「なぜだろう?」と聞いて回った答えは、「万引き防止のための威嚇作戦」「自分の士気を鼓舞する」「眠気防止」「経営者の趣味」と様々だった。

十分に検証することはできなかったが「働く若者たちも大変なんだ……」、そう感じて以来、「文句をつける」ことを控えるようになった。

あれから数年。我が家の近所のあの系列のお店、今ではすっかり洗練されて、一般書店と変わらない様子だ。夜遅く店の前を通っても、スタッフの大声が聞こえてくることはない。若者たちの労働条件が改善されたのなら幸いだ。

この5年ほど、私が働く若者たちにぐっと共感的になったのは、大学で二十歳前後の学生と接する機会が増えたからかもしれない。

彼らの何割かが飲食店でアルバイトしていると聞く。私の講義では居眠りすることもあるが、仕事の現場では頼もしく働いているらしい。「グリーティングの技」なんかも結構上手に使っているのかもしれない。

[2016年7月7日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

梶原しげるの「しゃべりテク」」は木曜更新です。7月21日は休載、次回は28日の予定です。
梶原 しげる(かじわら・しげる)
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員を担当。
著書に『すべらない敬語』『そんな言い方ないだろう』『会話のきっかけ』 『ひっかかる日本語』(新潮新書)『敬語力の基本』『最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術』(日本実業出版社)『毒舌の会話術』 (幻冬舎新書) 『プロのしゃべりのテクニック(DVDつき)』 (日経BPムック) 『あぁ、残念な話し方』(青春新書インテリジェンス) 『新米上司の言葉かけ』(技術評論社)ほか多数。最新刊に『まずは「ドジな話」をしなさい』(サンマーク出版)がある。

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