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あなたは、「名前」を間違えたメールや手紙を、受け取ったことはありませんか? うっかり間違ってしまったのか、それとも間違って名前を覚えているのか? いずれにしても、ショックを受ける人は多いはずです。名前は、自分のアイデンティティーと密接につながっていて、「間違える」ということは、自分に関心がないと受け取れるからです。

しかし、ちょっと考えてみましょう。

「変換ミス」という可能性は、ありませんか? 例えば、「小見」(おみ)と入力すべきところを、「尾身」に変換したり、「小」の字に注目して「小田」(おだ)や「小山」(こやま)になってしまう。

世の中には覚えにくい、間違えやすい名前もあります。例えば、「さいとう」さんは「斉藤」「斎藤」「齋藤」……。以前お会いした方には「西東」さんも、いらっしゃいました。気を配っていないと間違えかねません。

ですから、名前の間違いや勘違いは誰にでもあると理解した上で、指摘するならば「さらっと」がベスト。相手が自然に、「ごめんなさい」「うっかりしていた」と言いやすいような流れをつくってあげるのがポイントになります。

間違えられやすい名前「臼井由妃」の場合

実は、私自身がいただくメールや手紙の2割ほどが、「白井(しらい)由紀」や「臼井由紀」、あるいは「薄井由紀」などのような間違いです。

間違えられやすい名前であることは承知していますが、それでも、「私って、存在感がないのかしら?」と疑問を感じてしまうときもあります。初対面の相手ならば、「仕方がない」「よくあることだから」とも受け取れるのですが、それでも寂しいものです。何度かお会いしている相手ならば、「これまでのお付き合いは何だったのかしら?」と正直、へこみます。

そんなときには、「その名前のほうがすてきだけど、本当は○○ですよ」とあえて間違いに触れて明るく指摘します。あるいは、「□□という漢字が違っていたのですが……本当は△△です。でもよく間違えられるんですよ」(笑顔)と、「いつも間違えられる」ことをアピールしながら、間違えたのは、あなただけではないということを必ず伝えています。

さらに、過去にあった「名前の間違い」を披露することもします。例えば、「『臼田由美』もありました。それって、もはや別人ですよね」「『由姫』もあったな~。お姫様なんて光栄ですけれど」

すると笑いが起こり親密になり、名前も覚えてもらいやすくなります。名前の間違いは、親しい間柄になればなるほど関係に大きな溝が入りがちです。なるべく知り合った早めの段階で、間違いに気づいてもらうようにしましょう。

上司が言葉を間違えたら、あなたはどうする?

上司も人間です。時には、言葉遣いを間違えることがあります。上司がメンツを気にするタイプや怒る可能性があるときには、指摘せずに自分は正しい言葉を使うといいでしょう。

よく耳にするのが「的を得る」です。正しくは「的を射る」。これは「当を得る」と混同されやすいのです。また、「汚名挽回」は×、正しくは「汚名返上」なのですが、「名誉挽回」と混同している方が多いようです。

私自身、たまに口にしていた「思いもつかない」は、正しくは「思いもよらない」でした。これは「考えもつかない」との混同です。気を付けたいですね。

では、上司が勘違いをしている案件をあなたが気がついた場合は、どう対応したらいいでしょうか? そのままでは業務に支障が生じます。かといって、「○○部長、それは違います!」と、ストレートに伝えれば、「恥をかかされた」と思う人もいます。反感を買えば、その後の仕事がやりにくくなりますね。このような場合は、上司を責めずに業務上必要な指摘であるということを示すと、いいでしょう。

例えば、「部長からご指示いただいた案件ですが、○○だと思っていたのですが、私の理解不足だったようで、実際は△△だったと判明しました。すぐに対応しますので、もう少し『お待ちください』」

ポイントは、上司の勘違いを「私の理解不足」と表現することです。そうすれば、上司の勘違いを改善しながら、「責める意思」がないことも伝わります。

間違い・勘違いの上手な指摘の仕方

始業時や終業時、業務が立て込んでいるとき、相手が疲れているときなどに間違いや勘違いを指摘すると、きちんと伝わらない可能性があります。

相手によっては自分が間違っているとわかっても、聞き入れず指摘したことに文句を言ってくる場合もありますから、タイミングを計るのは欠かせません。そして、遠まわしな言い方を心がけましょう。「気のせいかもしれませんが」「もしかしたら……かもしれないです」「○○ということは、考えられませんでしょうか?」とお伺いを立てるように。

できる限り「違う」という言葉は使わずに、自分たち以外には聞こえないくらいの声で、控えめに伝えましょう。上司に限らず、間違いや勘違いを伝える場合には、「指摘」するというスタンスではなく「補足」するという心構えでいることもポイントです。

間違いをした相手に、恥をかかせないようにするには、さりげなさが肝心です。ですから大勢の前ではなく、2人だけのチャンスを狙ってこっそり教えてあげるのも気遣いです。「やんわり」「さりげなく」「さらっと」に注意しながら伝えてください。

その上で、「そういう間違いは、ありますよね。私もありました」「これは勘違いしやすいですよね。私も最近気づきました」のような、自分も間違った、最近分かったというような「フォローの言葉」を添えればいいでしょう。「自分も」ということで、相手と自分を同じレベルにもっていけば、相手の立場を落とさず、感じ良く間違いを指摘することができます。

日ごろから、もし、あなたが上司だとしたら、間違いを部下や後輩から指摘されるときはどのような言い方、タイミングならば、すんなり受け入れられるのかを考えておいてください。そうすれば、実際上司に間違いを指摘するときでも、配慮ができ関係が悪くなることはありません。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は8月31日の予定です。

[2014年12月24日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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