理想のカレー ルーとライスどっちが右でどっちが左?
カレー(2)
これまで、関西方面からの「カレーそばなんて見たことないぞ」メールを紹介してきた。「カレーそばなど考えられない」との声も西の方でたくさんあがっている。
だが、びっくりされる方もあるかもしれないが、関西では「カレーそば」の方が「カレーうどん」より先に誕生しているのである。かなりの確率で「カレーそば」は大阪生まれのようなのである。
ちなみに、カレーうどんの正しい食べ方はどのような食べ方なのでしょうか? 実家では前日の残ったカレーをゆでたうどんの上にかけ、混ぜて食していましたが、学食のカレーうどんはお出汁のうえにカレーをかけられ、かなりびっくりしました。それ以外のお店でもカレーのみをかけたところと出汁&カレーのところがあったのですが。
実家では残ったシチューをご飯にかけて食べていました(愛媛生まれ神奈川在住さん)
関西でカレーそばが消えたのは、そばそのものをあまり食べないということと関連しているのではないか、と考えています(NHKの塩田さん)
「カレー南蛮」について『たべもの起源事典』が依拠したのは『近代日本食文化年表』です。同年表の明治42(1909)年の項に「大阪市東区谷町五丁目の『東京そば』の主人角田酉之介が営業不振挽回のため、そばに向くカレー粉を工夫して『カレー南蛮』を売り出したところ、これが浪花っ子に受けて大ヒット。これに気をよくして翌年東京に戻ってはじめたが東京ではそっぽを向かれて大正3、4年頃やっと軌道にのることになる。ちなみに東京では明治40年に早稲田の三朝庵がカレー南蛮を売り出したという説もある」と書かれています。
本当に「東京そば」が大阪で始めたカレー南蛮はそばだったのか、うどんではなかったのか、著者の小菅桂子さんに確認しました。
「間違いありません。そばでした。角田さんが生前、専門紙に書いた文章にはっきりとそばだったと書いています。私、その新聞持ってます」
大阪ではまずカレーそばが生まれ「大ヒット」した。うどんがそれを追いかけた。ところが東京では当初「カレーそば」は不評だった。現在と逆です。ではなぜ大阪からカレーそばが消えたのかについては私も塩田さんと同様の見方ですが、カレーそばに次いで現れたカレーうどんがうどん文化圏の関西人の舌に合い、そばを駆逐したのではないかと思います。でも根拠はありません。
カレーそば・うどんの分布は関東と関西でこの100年をかけて激変したというのは面白い事実である。カレーの卵についてはどうだろうか。
北海道で学生生活をおくったとき、学食のカレー(60円)に生卵のキミを落として食べ始めると、友達が信じられないものを見た顔をしてよってきました。「そんな気持ち悪いものをよくたべるなあ!!」。私は家業を侮辱された怒りに震えた悲しい記憶があります。友達は東京出身でした。
東京では生卵をカレーに入れる習慣がないと断言されましたが、東京に就職したとき、京王線新宿駅の立食カレーC&Cで生卵を入れる卵カレーを見つけた時「あるやんか」と思いました。ただし、今は温泉卵を使っています。生卵派とゆで卵派の闘争の末の和解策でしょうか。
カレーに卵は、卵を食べるためではなく、ルーをマイルドにするための調味料です。ゆで卵では到底その任を全うすることはできないと思います(船場のやっちゃん)
長じて大阪に出、初めてカレーに生卵を入れることを知りました。Oガスに勤め、社員食堂でカレーを頼むと生卵を勝手に1個持って行っても良かったので(O-157事故以来、生卵は出なくなりました)。私はそれでカレーと卵かけご飯の二つの味を楽しみました(仁円さん)
「大阪と生卵」では前回、デスクがJ由軒のカレーのことを書いていました。私はチャンポン専門チェーン「中央軒」のチャンポンに生卵がのっていたことを思い出します。本場長崎ではどうなっているか知りませんが、少なくとも福岡では生卵ではなくゆで卵です。
徳島ラーメンの中には生卵を落とす店が結構あります。しかし博多も久留米も卵を加える場合はゆで卵です。東京辺りでは煮卵が最近のトレンドでしょうか。
どうもカレーを初めとして何かに生卵を加えて混ぜるというのは大阪を中心とした関西と四国辺りの食べ方ではないかという気がしています。CoCo壱の半熟卵は案外、文明の衝突回避策なのかもしれません。VOTE項目が浮かんできました。
名古屋から、カレーうどんに関するメールが2通。
カレーも独特なとろみがあり、こしのある太い麺とからみあっておいしいです。ぜひお試しください。ちなみに若鯱屋のカレーうどんがスーパーのユニーグループ限定でカップ(日清食品製)で販売されていることがありますよ。関東や関西にも店があるようなので、ぜひ名古屋のカレーうどんを食べてみてください。
追伸 名古屋でカレーそばは見たことはありません!(現在、社会人1年生さん)
だそうです。カレー煮込みうどんは当然でしょうね、名古屋では。エビフライカレーうどん、カキフライカレーうどん、カツカレーうどん、チーズカレーうどん……。すげー。東京や大阪でカツカレーうどん(そば)って見たことあります?
おっと、これも名古屋の物件。
このカレー×スパゲティ=インディアンスパゲティという呼称にはそれ以来出合ってはいないのですが、全国的な呼称なのかいまだに気になります(お名前ありません)
50円でご飯にカレーをかけてくれるなんて、いい食堂ですね。でもどうして「今はなき」になってしまったんでしょうか。「良心的なまずさ」のせい?
「インディアン」は確かに名古屋でよく見かけました。あんかけスパの元祖、ヨコイにもあったはず。「でらうま亭」にもあります。名古屋にしかない呼び方とまでは言いませんが、名古屋系以外ではあまり見かけないような気がします。
どんなカレーが好きか、どういう風に食べるのが好きか。人それぞれ。
女房はカレーは好きですが肉が好きではありません。特にインド風カレーが好きです。私もインド風カレーは好きなのですが内臓系、羊系のディープなのが好きなのに対し、女房はひき肉のキーマカレー、豆カレーが好きです。また日本風のカレーが好きな私はキーマカレーよりドライカレーが好きです。
「カレー」が好きという一致点はあるのですが、カレーのたびにお互いが譲歩しなくてはなりません。カレーのタイプでは女房が譲歩する率は大きいですが、費用の関係で(国産)牛は却下されます。世の家庭では辛さ具合でもめることはあってもここまで対立している事例は少ないと思います。カレーミュージアムに行ったときもどの店に行くかでもめました(発射口さん)
あらー、ずいぶんもめていますね。しかも複雑にもめています。もめているところを、そばで見ていたら面白いでしょうね。
デスク実況 東方キーマカレー、西方ドライカレー、差し手争いから両者がっぷり四つであります。おっと、ここでキーマが隠し持っていた大量のスープを鍋に投入しました。浴びせ倒しーっ! 浴びせ倒してキーマ勝ちました。ドライ、ぼう然。肩を落として花道を引き揚げていきます……ってな感じ?
野瀬敗北 ここまでやるとは……
鍋のふちにたまったルーがお玉で取りきれず、仕方なく洗い流していましたが、恒石母の手口があったんですね。今度やってみます。
カレーライスの方はご飯にカレーがかけてあるごく普通のものです。ライスカレーの方はカレー鍋にご飯を入れて混ぜ合わせたドライでないドライカレー状態のもの。友人の説明では、鍋にこびりついたカレーを、ご飯を入れて完全にすくい取る商品とのことでカレーライスより50円安く、ご飯全体に味がしみていて非常にうまいのだとのことでした(千葉都民の辛党さん)
鍋こびりつきカレーが30年も前に商品化されていた!
札幌のあのカレーに関するメールがやっと届いた。
白いご飯をスプーンにのせる
↓
カレーのルー(スープ)に浸す
↓
ルー(スープ)がしみたご飯を食べる。
という感じで、ご飯とルーが必ず別々に出てきます。で、ルーの中の具はというと大きな塊の野菜類と大きな塊のお肉類が主です。特にチキンなんかはレッグがそのまま入っていたりします(札幌のぺんぱらさん)
給食でカレースープが出るとコッペパンをびたびたに浸して食べていた悲しい記憶がよみがえってきました。何が悲しいかというと、給食のアルミの食器に入っていたのは大きな塊の野菜でも肉でもなく、小さな野菜とクジラ肉の切れ端だったからです。チキンはレッグがそのまんま? ミルメークと同じくらいぐやじー。
これはいかがなものか。
「このまま出してはいけません」というのは「客の前でレトルトを使っているのを見せびらかしてはいけません」という意味でしょうが、その店ではつい見せびらかしちゃったわけですね。
それともレトルトの袋がそのまま出てきたのでしょうか。ならば、いくら何でもいかがなものか。お店が特定されるとマズいので、ちょっとぼかしました
難解な問題。
個人的には「ご飯が左下、ルーが右上」くらいが最も食べやすく、右上あたりからスプーンを始動させ、ルーを先にすくった後でご飯をざっくり取るようにしています。店で出されたカレーも、食べやすいように回転させているのですが、最初から福神漬けがのって出てくる場合、左:ご飯、右:ルー、下:福神漬け、のようなフォーメーションで出てくると、福神漬けを上に移動させた後に回転させたりしています。
なんだか知能テストの図形問題のようになってきて頭が混乱してきましたので、この辺で止めます(ミルフォードさん)
えーっと、ご飯が右でルーが左? 逆? 下にあった福神漬けが上に来るように回転させるとご飯が右下に来るからルーは左上か。すると右利きの人はルーからすくうのではなくご飯からスプーンに取ることになるので、ルーを先にすくいたい場合は……わかりましぇーん。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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