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食べ物 新日本奇行 classic

こしorつぶあん?汁ありorなし?ぜんざいお汁粉の違い ぜんざい VS お汁粉(1)

2016/7/22

PIXTA

先日、甘味の店に入った。甘いものはよっぽどのことがないと口にしない私がなぜ甘味の店に入ったかと言うと、その店の「ひもかわ定食」がおいしいからである。「ひもかわ」ってわかります? きしめんのことである。名古屋の人怒るかな、ひも扱いするなーって。

で、定食が出てくるまでメニューをにらんでいたら私の記憶の底深くに沈殿していた怒りがよみがえってきた。

いろいろあります

「ぜんざい 〇〇円」「田舎しるこ 〇〇円」「御膳しるこ 〇〇円」とある。この「田舎しるこ」というのが問題なのだった。今から30ウン年前のことである。大学入学で久留米から東京に出てきたばかりの私は、1年先輩のおねえさんに連れられて甘味屋さんに入った。

「野瀬君、何食べる?」
「じゃあ、ぜんざいを」
「この店、ぜんざい置いてないのよ。おすすめはお汁粉」
「お汁粉って小豆が粒々じゃないでしょ? 粒々のぜんざいがいいんです」
「田舎モーン。粒々のはぜんざいじゃなくて田舎しるこっていうのよ」
「田舎……しるこ? すごく力強くバカにしてません?」

あのときはぐやじがっだなー。

つぶあん 焼いた丸餅入り=PIXTA

というトラウマがあったのだが、そのトラウマを思い出させる物件に再び遭遇したのだった。店の人の説明だと「ぜんざいは小豆が粒々で汁がないもの。田舎しるこは粒々汁あり。御膳しるこはこしあんで汁あり」なのだそうだ。その後、スーパーに行ってみた。するとさっきの説明とは違う物件がたくさん並んでいる。Aメーカーの「ぜんざい(粒あん)」「ぜんざい(こしあん)」のコンビにはちゃんと「汁」が入るようになっているし、その隣りにあるBメーカーの「しるこ」の写真はAメーカーの「ぜんざい(粒あん)」と同じではないか。一体どうなっているのだ。

2002年2月11日付の日本経済新聞文化面に美術家の横尾忠則氏が池田満寿夫氏について書いている。

こしあん 焼いた角餅入り=PIXTA

「お互い共通することが多かったが、ひとつだけ意見が対立して、ケンカになってしまった。ぜんざいが好物だというところまではよかったが、彼はこしあん派、ぼくはつぶあん派で、二人とも考えを譲ることができなかった」

ほら、ぜんざいにも粒あんとこしあんがあるじゃないか。少なくともそう認識している人がいるじゃないか。

「田舎しるこ」という言い方は、東京では「しるこ」または「お汁粉」が標準的な名前であること、同時に「こしあん」がスタンダードであることを示している。だが、大阪では「夫婦善哉」でわかるように「ぜんざい」が主役である。名古屋だって「小倉」は粒だろう。

小倉トースト=PIXTA

デスク乱入 「ぜんざい公社」という落語がありました(今もありますが…)。上方の新作落語です。

野瀬 「どうろ公団」の方はブラックユーモア満載。

ということで今回のテーマは

▽あなたが住む地域では「ぜんざい」が優勢ですか、「お汁粉」が優勢ですか?

▽「あんこ」と言えば「粒あん」ですか、「こしあん」ですか?

私は甘味方面にめちゃくちゃ弱いから何を言い出すかわからない。皆さんのご指導よろしきを得て進めて行きたいと思う。

まずは「ぜんざい派」の声。

懐中汁粉
ご意見 大阪の日常に「汁粉」はあまり見かけません。甘党の店で見掛ける以外は「懐中汁粉」くらいなものでしょうか。「汁粉」の場合は小豆の皮は除けてほかすことになります。大阪ではそんなもったいない食べようはせえしません。だから皮も残らず食べる「ぜんざい」が主流です。特に「ええしのお家」では平素の外食や買い食いは禁忌ですから、そして始末もけた外れにしますから、年末の餅つきに炊いたあんの残りに形の悪い小餅を入れて、小正月の小豆がゆのついでのあんに鏡開きの固い餅、厄除け節分の振る舞いに、上棟式(じょうとしき)の餅が手に入った時などに「よきかな、よきかな」です。
我が家では、20リットルくらいの大鍋で「ぜんざい」を炊きましたので、3日ほどは楽しめました。作りたての温かいのも楽しみなのですが、私は明くる日からの盗み食いがもっと楽しみでした。翌朝にはあんの部分は底にたまり、その上には皮だけになった小豆。上澄みは小豆味の透明なシロップになっていて、これがおいしいんです。台所を通る度にこそっと杓子(しゃくし)を口に運びます。今回のテ-マがなければ忘れてしまっていた情景です(豊下製菓株式会社 豊下正良さん)
大鍋で作るぜんざい

大阪の言葉は柔らかでいいですね。お国言葉でのメールは大歓迎です。ほかの皆さんもなまってくださいね。英語なまりとかフランス語なまりとかスワヒリ語なまりは歓迎しませんが。

で、豊下さんのメールで大阪のぜんざい事情がよくわかります。そして、私も子供のころぜんざいの盗み食いをやっていたことを思い出しました。お互い懐かしいですねえ。「よきかな」つまり善哉(ぜんざい)。

デスク補足 ホントは何なまりでも歓迎なんです。スワヒリ語でも、インカ帝国の公用語だったというケチュア語でも、インドネシア南スラウェシ州の一部で話されているトポイヨ語でもいいんです。でも、問題は読めないこと……。

ぜんざい=餅に粒あん汁?=PIXTA
ご意見 我が家ではぜんざいです。祖父(兵庫で生まれ育つ)もぜんざい。しることは聞いたことがありません……。
ぜんざいとしるこの形態は次のとおり。「ぜんざい=餅に粒あん汁」「しるこ=餅にこしあん汁」。こしあんのぜんざい、粒あんのしるこはない!(と思う)……夫婦善哉もありますが、他にも厄のときにぜんざいを作っていろんな人に食べてもらって厄を持ってってもらうってなこともします……あんこも粒のような…。あんこの粒&こしは好みかと思ってました。こしあん作るのは粒あんよりよけいに手間がかかるし。皮ももったいないし。せこい(native関西人さん)

関西では、ぜんざいという呼称が一般的なようです。むしろ面と向かって「しるこってどんなもの?」と聞かれると「えーっと」状態になる感じ。

白玉あんみつ=PIXTA
ご意見 滋賀は関西と関東の味の境目(滋賀の大半は関西組ですよ)ですが、このことについては絶対ぜんざい派ですね。「東京のある店で出合ったぜんざい。九州でこれを出すとただのあんこと言われるかも」とありましたが、滋賀はもちろん、京都、大阪、兵庫、奈良どこでも、「汁がないぞ!」と力強く言われると思います。餅が小さくて丸い場合は、白玉のあんみつそのものだと思います。
ぜんざいたるもの、あんといえば「粒あん」でしょう。これに決定ですよ……小正月に「左義長」、もしく「どんど焼き」という火祭りがありますが、この際に鏡開きしたおもちを使ったぜんざいが振る舞われます(滋賀に住むTAZUさん)
小豆雑煮=PIXTA
ご意見 私の出生地は島根県東部、代々この地の住人です。よび方は「ぜんざい」。「お汁粉」というのはメディア(雑誌やテレビ)、いわゆる‘都会風’のよび方で少なくとも自宅でつくるものは「お汁粉」などというよび方は致しません……さて、島根県東部には「あずき雑煮」なるものがあります。当然正月に食べる雑煮のバリエーションのひとつです。ただ、島根県東部全地域というより「松江市周辺がよく食べると思う」「元旦はあずきだけどあとはふつうの雑煮というところも多い」らしい……「ぜんざいとどう違うのか?」と聞かれますが、違いはわかりません。たぶん食べる時期じゃないかと(正月に食べれば雑煮)。「ぜんざい」の語源は「神善(じんざい)」つまり神にお供えしたあずき雑煮がルーツだとききましたので、「古くからの神社がある」ところには「ぜんざい」派が多いかもしれません。我が地方にも古い神様がいらっしゃいます(かんなさん)

ぜんざいと神事の関連は重要なポイントです。これから紹介するメールにもそれをうかがわせる内容がぽちぽち含まれる可能性がありますのでマークしてください。

ぜんざいとお汁粉がテーマだから仕方ないが、読んでいるだけで頭の中が甘甘になってくる。こんなテーマにしなきゃよかった。渋ーいお茶がほしいな。

渋いお茶がほしい=PIXTA
ご意見 私の実家(大阪府堺市)では「お餅(丸餅で焼かず)+汁+小豆粒」で「ぜんざい」と称しております。もっとも、私の両親は両方とも和歌山県出身なのでぜんざいではなく正確には「でんだい」なのですが。和歌山の言葉に「ざじずぜぞ」は存在していないみたいです(明渡@奈良県さん)

メーカーも和歌山出荷分は「でんだい」にした方がいいと思います。私が久留米で学校の先生かなんかやっていたら「のしぇしぇんしぇい」と呼ばれています。

梅が枝餅=PIXTA
ご意見 ぜんざいか汁粉か……そりゃーぜんざいでしょうもん。汁粉は自動販売機で売っているくらいかな? あんこは粒あん。梅が枝餅も峰楽まんじゅうも粒あんでしょ。こしあんは「こしあんです」って断らないといかんとじゃない?(福岡出身で最近大阪在住のキナコさん)

そげんそげん。梅が枝(うめがえ)餅は太宰府天満宮の門前町名物。福岡空港でも売っています。うちの子は福岡に住んでいるとき神社のそばで売っているので「お願い餅」だと信じておりました。

何て言うん?=PIXTA
ご意見 現在、南半球に生息していますが、生まれも育ちも(大学卒業まで)ずっと関西でした。我が家は昔々から一族郎党そろって同じエリアに根をはっており、地域性・方言性としてはある程度信用できると思います。
単刀直入に答えを申し上げるなら、迷わずぜんざいです。ええ、ぜんざいですともっ!いや、いや、と言うよりもぜんざいとしるこは違います。実家の母(50代)へ電話して確認しましたが、「何でやのん、全然ちゃうやん。ぜんざいは小豆の粒々があるねん」。言わば、ぜんざいは粒あん+液体、しるこはこしあん+液体とのこと。確認のため、「じゃあ、汁気のないのは何て言うん?」と聞いたところ、「それは単なるあんこやんか、どないしたん、あんた!」(YUKESさん)

わーい、YUKESさんのお母さん好き。私と同じ答えだー。あれは東京の甘味屋さんがどんなに「ぜんざい」と言おうと、ただのあんこなのだ。

ここまでがぜんざい派。続いてお汁粉派の声。

おしるこ!=PIXTA
ご意見 私は熊本出身(北海道経由)東京在住ですが、熊本は「おしるこ」と称し、粒あり汁ありだと記憶しております。幼少時代、「おしるこ会」という行事があったことからも共通名称として間違ってないでしょう。これは、「もぐら打ち」という行事に付随する打ち上げみたいなものです。もぐら打ちとは害獣のもぐらを追い払うための(多分)行事で、1月13日に地区の子供たちが各家庭を回り、勝手に藁(わら)で作った叩き棒で庭先の地面をを叩きながら「13日のもぐら打ち」と歌っていると、その家からお菓子やお金、お餅や小豆をもらえます。そうして集めた物資を元に、おしるこメインの宴会を開くのです。ハロウィンに似てますが、いたずらや仮装はしません。全国に似た行事があると聞いたことがあります)。「ぜんざい」や白玉「しるこ」との違いを知ったのは、大人になってからでした。「呼び名がたくさんあってめんどくさいなあ」と思った覚えがあります。なお、餅は焼いてもそのまま投入して形がなくなってもOKです(しゅうさん)

九州でも熊本はお汁粉派。お肉問題のときに九州各県は牛派と豚派に分かれ団結のなさがはっきりしましたが、この問題でもばらばらなのかもしれません。でも「田舎しるこ」という呼び方さえしなければいいんだ、お汁粉派でも。

岩手にもあります
ご意見 僕は「お汁粉」で育ちました。山梨では「ぜんざい」と言う呼び名は一般的ではないようです。こしあん、粒あんひっくるめてお汁粉です。
甲州名物かぼちゃのほうとうはもちろんご存知だと思いますが、なんと「あずきほうとう」というものが存在します。粒あんのお汁粉の中に餅ならぬ、ほうとうが入っている凄まじいものです。どんな味がするかというと……僕も気持ち悪くて食べたことがありません(甲府のかんたさん)

甲府では粒あんでもお汁粉ですか。粉じゃないじゃないですか。お汁粒でしょ。なんて言っても仕方がありませんね。「あずきほうとう」というのは昔はたいそうなごちそうだったのではないかと思います。一品プラスですから。

粒入り=PIXTA
ご意見 東京育ちの私が「ぜんざい」と認識していたものを、関西では「亀山」と言うそうです。お汁粉のことが気になったので、和菓子の「とらや」の前でじーっと売り場やカタログを見ていたら「小倉汁粉」というのが目に付いた。店員さんに質問してみました。
私:「とらやさんには小倉汁粉というのがありますが、つぶしあんの汁粉(=田舎汁粉)はないのですか?」
店員:「違います。仕上がりの美しさにこだわっているので、あんを作ったあとで、別に煮た小豆を加えています」
ということで、少なくとも「御膳汁粉」「田舎汁粉」「小倉汁粉」の3種類が確認されたことになります。
「小倉汁粉」の仲間として「白小倉汁粉」=白あん製もあるようです。また、白あんの汁粉に抹茶を加えた「常盤汁粉」というのがあるという情報もあります(ミルフォードさん)

小倉汁粉に白小倉汁粉に常磐汁粉まで乱入して、もう何が何だかわかりません。もともとわかっていなかったのにー、イジワル。

亀山?=PIXTA
ご意見 ぜんざい=粒入り、冬になると家のストーブの上で炊いてるもの。汁粉=粒なし、本の中で出てくるもの(裏ごしがめんどくさいので家では作らない)です。そのほか、亀山=汁なし、小豆の粒を崩さずに炊くというものも存在します(関西人さん)

関西の「亀山」が東京で「ぜんざい」と言われるものと同じ物件のようです。

ぜんざい=PIXTA
ご意見 今回のお題ですが、結構前から論争になっているようです。十数年前に「ズームイン朝」の中で、関東と関西の食文化の違いをネタにコーナーがつくられておりその中で以下のようなことが放送されていました。
粒あん汁なしは、関東=ぜんざい、関西=ぜんざい
粒あん汁ありは、関東=田舎しるこ、関西=しるこ
こしあん汁ありは、関東=しるこ、関西=しるこ
(どらねこさん)

問題は関西の「粒あん汁なし」が果たしてぜんざいかどうかです。あんこか亀山ではないでしょうか。関西の粒あん汁ありがぜんざいではないかと思います。

甘い。頭の中が甘い。「おーいお茶」と叫んでも我が家ではお茶の方から歩いてきたことがないので、今度から部屋で飼っているワンコの首に小さなボトルをくくりつけておいて、お茶が飲みたくなったらワンコを呼ぶことにしよう。これがほんとのペットボトル……失礼しました。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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