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グルメクラブ
食べ物 新日本奇行 classic
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すた丼、スタカレー…カツ丼以外の関東ご飯ものどんぶり・ライス(4)

2016/7/18

食べ物 新日本奇行 classic

三林京子さんからメールが来た。「あたまライスって何?」「あたまライスですか?」「私のHP読んでないの? 早く読んで、築地に行ってちょうだい」

いまはなき築地の風景

というわけで彼女のHPを読んだら確かに「あたまライスって何だろう」と書いてある。築地の場外市場にある店で出しているメニューなのだそうだ。築地といえば寿司でありマグロ丼。そこで私の第一感は「アジ、タコ、マグロがのった海鮮丼ではないか」というものだった。だってアジ、タコ、マグロの「あたま」の文字を並べると「あたま」になるでしょ? 本当っぽいでしょ?

というわけで小雨降る中、築地の場外に行ってきた。道路、路地、通路を縦横に歩き回ること1時間。入りもしないのに店という店の壁に張り出されたメニューをしげしげながめまわすこと1時間でもあった。だが、見つからない。どこにもない。

遭遇したのは「合がけ」というメニューであった。ご飯の半分に牛丼の具を、残り半分にはカレーをかけた物件である。松屋の「カレ・ギュウ」と同じだが、こっちの方は「40年来の人気メニュー」だそうだから年季が違う。年季も違うが「あたまライス」とも全然違う。収穫なし。

というわけでとぼとぼ会社に帰ってきたら、こんなメールが届いていた。

カツ丼の具が別のお皿に盛ってある=PIXTA
ご意見 築地市場の定食屋さんに「あたまライス」というメニューがあって、“玉子でとじた”カツ丼の具が別のお皿に盛ってあるものだそうです。まだあるかどうかわかりません。お店の名前はたしか「○○ちゃん」だったと思います(山吹さん)

うわーん、どうして読者からのメールを先に読まなかったんだろう。うわーん、「○○ちゃん」にあったんですか。わからなかったなあ。でもってそれ、普通のカツ煮定食じゃないですか。なんで「あたま」なんてネーミングにしちゃったんでしょうか。まさか「台」のご飯を抜いて別盛りにしたら「あたま」が残ったなんて意味だったら怒っちゃうぞ。チャブニチュードするぞー。

ここでデスク乱入 はいはい。そう興奮しないで。たぶん、それが正解でしょうから。このお店では「あたま十文字」なんていう訳の分からない注文が飛び交っているという噂もあります。ちなみに「からだライス」というのは、カバ、ライオン、ダチョウがのった野生丼ですが、この店にはありません。

こんな切り方

野瀬ハテナ 「あたま十文字」って何のこと? 「からだライス」は動物園の食堂にあるの?

デスク得意げ カツをざくざくっと切ってあるのが普通のカツ丼。その後で包丁を横向きにしてもう1回ざくっとやったのが十文字です。一口サイズになるわけですね。

からだライスは、確かアフリカの方に……。

那須塩原のソースカツ丼

卵とじ煮込みカツ丼の包囲網にただ一点空いた穴的存在である栃木県。先週私は「何となく栃木にもソースカツ丼があってほしい気分」を表明したが、ついさっき元弊社宇都宮支局員である社員某がつかつかとやってきて「栃木にもソースカツ丼あります。JR両毛線沿線が中心です。都市名で言うと佐野市とか足利市。私も何度か食べました。地元では群馬県桐生市がソースカツ丼発祥の地だという説があります」と言ったのである。

この発言を裏付ける読者からのメールもいただいた。メールによれば「栃木市、今市市、塩原にもある」という。よし! 包囲網完成。

コンソメスープに紅ショウガという組み合わせ

正直に書くと、私は今回のテーマを始める段階では首都圏を囲む半円状のソースカツ丼地帯が存在するなどとは、これっぽちも思っていなかった。こんなにソースカツ丼が広く食べられていることを想像すらしなかった。しかも、会津若松のソース味卵とじ煮込みカツ丼や山梨の自力ソース(醤油)かけカツ丼のように、地域によって実に多様な顔を持っているのを初めて知った。

新潟の醤油味カツ丼の存在にも驚いた。毎回同じことを言って恐縮だが、日本は広い。

おっと、VOTE速報値が届いた。福井は当然として福島、栃木、群馬、山梨、長野という首都圏包囲軍団は予想通り「各種ソース」のカツ丼が有意な数字になっている。新潟は84%が例の「醤油味」であると答えたが、残りは各種ソースとなっている。ということはメールにあったように醤油味は新潟市を中心とする地域で、ほかの所ではソースなのだろうか。デミグラスカツ丼の岡山も70%が各種ソースとの回答。

意外だったのは岐阜、愛知にもそこそこ各種ソースとする回答があったことである。さらに奈良にいたっては「ソース味あります」が60%になっている。事前情報が全くなかったので正直びっくり。地図をじっくりご覧になってそれぞれに読みとっていただきたい。

関西だからビフカツ!
ご意見 一番びっくりする丼は、実は「カツドン」。当然ですが、関西で肉と言えば牛肉。少なくとも昭和40年前半までは大阪キタ、京都で「カツドン」「カツカレ-」と言えばビフカツ使用でした。それがいつの間にか豚に化けた(ナニワのオジンさん)

「お肉問題」のときに書きましたが、東京に豚肉を普及させたトンカツが本格的に関西進出を果たしたのは戦後のことでした。それから20年余りでカツの分野ではポークがビーフを圧倒したということになります。でも私なぞは一度、ビーフのカツカレーを食べてみたいと思います。復刻すると案外いけるかもしれません。

釜石は卵とじでした
ご意見 昔、岩手県に住んでいたころ、丼ご飯の上にカツを置き、その上からかき玉汁にとろみをつけた物(グリンピース入り)がかかった丼を食った気がします。卵とじの物も食べた記憶があるので、その店だけかもしれませんが……(名古屋のす~さんさん)

煮込まないで、とろみあんをかけるタイプ。これも珍しいですね。丼ものは融通無碍(むげ)、何でもありです。

訓子府のカツ丼に不可欠?=PIXTA
ご意見 17年ほど前、北見市の隣の訓子府町と言うところでアルバイトをしていたときに食べたカツ丼も卵をとじたものではありませんでした。白飯の上にのりを敷いてカツをのせ、甘辛味の天つゆのようなものがかかっていました。ソースカツ丼のようにキャベツはのっていません(個人的には「ソースカツ丼」のキャベツは大層余計だと思っています)。北見や網走では卵とじのものしか出てこなかったので、我々は「訓子府カツ丼」と呼んでいました。お弁当屋さんのカツ丼も食堂のカツ丼も同じです。今はどうなのか判りませんが(匿名希望さん)

そういえば、北海道のカツ丼情報は初めてです。局地的に非煮込み型カツ丼が存在するのかもしれませんが、それにしてものりを刻んで振りかけるのではなく、カツの下に敷くというのはレアな物件でしょう。

東京多摩地区限定丼?

すた丼
ご意見その1 学生時代の忘れえぬメニューに「スタ丼」があります。おそらく「スタミナ丼」の略称だと思うのですが、みんな「スタ丼」と呼んでいました。
 丼に並々と盛られたご飯にのりを敷き、その上に醤油・にんにく(ポイント1)・みりん・酒などと特殊エキス(ポイント2=秘伝のたれ?)で炒めた豚肉をのせ、肉の間に生卵(ポイント3)を落としたメニューです。もやし入り味噌汁とタクワンが付いてきます。上記ポイント1~3が奏でるハーモニーが不思議と舌に刷り込まれ、腹が減ると無性に食べたくなる味でした。もともとは東京都下・国立市のある店が発祥で、当時は国立・国分寺に3店舗ほどあったのですが現在は業容を拡大し八王子、立川、小平、府中と多摩各地に進出しているようです。国立や国分寺近辺の若者の間では知られたメニューで、かつ多摩限定だと思いますので、対象は狭いが、ある意味ではギリギリ「食の方言」になるかなあと……。
塩原のスープ入り焼きそば
ご意見その2 以前、(栃木県の)塩原に「スープ入り焼きそば」を食べにいきました。本題とは離れますが、この「スープ入り焼きそば」も面白いメニューで、あっさり醤油味のスープの中に麺としてソース焼きそばが入っているという、かなり変わった組み合わせです(見た目はラーメンそのもの)。塩原温泉近くの2軒の店(「釜彦」「こばや食堂」)で食べられます。(以上2件ともミルフォードさん)
さいたま市のスタカレー

さいたま市の「スタカレー」が登場するかと思っていましたが、その代わりに多摩の「すた丼」の登場です。スープなしの「油そば」もどっかあの辺生まれでしたね。武蔵境でしたっけ。

スープ入り焼きそばという文字を見て思い出したのは「ソース味ラーメン」です。某チェーン店の新商品で店の前にでっかい看板を出していましたが、ヒットしたのかどうか人ごとながら心配しています。でも醤油味のスープにソース味の焼きそばを入れて立派な商品になっているくらいですから、なんとかやっているんでしょうね、ソース味ラーメンも。

ご意見 実家の愛媛(南予地方)には親子丼ならぬあじ飯があります。あじを焼いて身を取ります。それを出汁にタマネギを入れて沸かせたものに入れ、最後にとき卵を入れるというものです。
 ちなみに親子丼も一般的なものと異なります。大きな鍋で4~5人分まとめて作れるものです。鶏肉、タマネギ、ニンジンを炒めた後、出汁を入れ、薄口醤油で味をつけて溶き卵を入れます。出汁は薄め、つゆだくの状態になります。大学で兵庫に行き親子丼を食べたとき、その味の濃さにすべて食べられませんでした。……カツ丼もほぼ同様の製法でした(愛媛生まれ神奈川在住さん)

アジ飯はうまそうですね。南予一帯にあれば立派な食の方言だと思います。親子丼、カツ丼の作り方も珍しい。特にニンジンが入るところが珍しい。

NHKの塩田さんが某店で「世界初の冷やしカツ丼」を出しているのを発見した。「冷やしカレー」「冷やしおでん」と似た発想のようだ。でも塩田さんは「あるよ」と言うだけだし、私も「あるね」である。「冷えたカツ丼」なら昔からあっちこっちで食べているし。特に出前取ったりしたときなんか。以上。

ソースカツ丼=PIXTA
ご意見 学生時代、福岡市東区箱崎のとある定食屋のメニューに普通のカツ丼と並んで、それまでの私の人生で見も聞きもしたことがない「ソースカツ丼」という食べ物があることを発見し、ソース好きの私は大いなる期待と不安を込めて注文しました。しかし出てきたのはご飯の上にキャベツの千切り、その上に切り分けたロースカツがのっており、ウスターソースがさらりとかけてある、全く予想しなかったスタイルのカツ丼でした。「こらカツ丼じゃなかろうもん」「これやったらトンカツ定食ば頼んだ方が良かったばい」という失望を抱きながら食した当時の記憶を……突然思い出しました(流れ星ギンさん)

ソースカツ丼としては特に問題ない物件のようですが、事前の知識がないとびっくりすることはよくあるものです。でも当サイトをご覧の皆さんは、もう日本国中どこでカツ丼を食べても驚かないと思います。このメール、九州弁につられて紹介した気がしないでもない。

東京のとんかつ
ご意見 三重県伊勢市で18歳まで過ごし、その後上京しました。現在32歳ですが伊勢時代にカツ丼というものに出合ったという確信がないのです。各家庭、食堂にはあったのかも知れないですが、実家ではたまーに(頻度は月に1度以下)トンカツが食卓に上がったくらいのものだったと思います。私の場合、カツ丼とは上京してからの出合いであり「卵でとじてあるのが普通」という認識になっております。また上京当時、東京の「トンカツ屋」「ラーメン屋」の多さには驚いたものです。伊勢にトンカツ屋があった記憶がありません。恐らく松坂牛文化によるウシナイズのためでしょう(渋谷区のピイコさん)
立ち食いの春菊天そば

実は今回のテーマで一番心配していたのは牛肉文化圏にお住まいに皆さんはどんな反応を示されるだろうかということでした。カツ丼そのものをあんまり食べないという人にとって興味が持ちづらいテーマですからね。VOTEの数字を見ると杞憂だったことがわかりましたが、伊勢地方にトンカツ専門店が存在しない、あるいは数えるほどしかないというのなら、それも一つの食の方言かも知れません。でもここは逆にトンカツ・ラーメン専門店が異常に多いという点を東京の方言と考えた方がいいのでしょう。ほんと、東京はトンカツ・ラーメンに加え立ち食いそばが多い。

サキイカチョコをちょっと調べたが、正確には「いかチョコ」でメーカーは名古屋ではなく愛知県春日井市だった。どこに売っているのかなあと思っていたら予想もしない所から驚くべき情報が飛び込んできた。

いかチョコ
ご意見 同じものがハワイ島にあります。この夏、ハワイ島ヒロにある"Big Island Candies" の直売工場に行ったとき、さきいかチョコをどうしようか迷ったのですが、買わないできてしまいました。残念です。なお"Big Island Candies" はチョコディップのショートブレッドで有名で、ハワイ諸島で贈答用に使われています。日系人の方が経営してらっしゃいます。チョコレートが高純度で溶けやすいので、チョコディップの商品(さいきかチョコも含む)は、流通による品質劣化をおそれて工場直売か通販でしか扱っていません(奈良の多田さん)

ワオ。どこでどうつながってしまったんでしょう、春日井市とハワイ。ハワイ州というのはアメリカの愛知県? 送っていただいた写真を見ると、姿形はムズカシイですね。公式マスコットには向かないかも。だって、一個一個全部違う形してるんですから。

予想通り「台抜き」への反響。短めに。

天ぬき
ご意見 (私が前回書いた「台抜き」に関する)文章を読んでいて?と思いました。というのも関東では昔から「天抜き」と呼んでいるからであります。ご年配の江戸っ子などはただ単に「抜き」と呼ぶ方もいらっしゃいます(higeoyaji39)
ご意見 酒のつまみに天抜き、鴨抜きですよ。蕎麦前にやって盛りで〆る。奥多摩駅の駅前辺りの食堂に「あわび丼」有り。山里なのにと思い食す。茸(エリンギ)を使った玉子丼。食感が似ているからとのこと(世田谷の道楽息子さん)

天抜きだったら天ぷらそばの天ぷらが抜けてしまって、つゆだけになってしまいます。「天抜き」は「天ぷらそばの台抜き」の略ではないでしょうか。「鴨抜き」も同じだと思います。大阪にある某うどん店の「肉吸い」の場合は、肉うどんからうどんを抜いた「汁物」ですが……。

皿盛りにして定食に
ご意見 台抜きという言葉を見て書かずにはいられませんでした。台抜きという言葉は大阪にしかないものだと思っていました。10年以上大阪で仕事をしていましたが、会社の近くの北浜と堺筋本町の間にある「やなぎ」で「台抜き」を頼むと、関東でいうカツとじ定食が出てきます。普通のカツ丼もあります。なぜそんなメニューがあるのかよくわかりませんが、だし汁がごはんにかかるのがイヤな人のためという話を同僚から聞いたことがあります。でもここのだし汁は関西の店なのにやや辛めなので、ごはんにかかっていないと薄味が好きな人にはつらいかもしれません(小野さん)

私が「台抜き」という言葉を知ったのは金沢勤務時代です。小野さんと全く同じでカツ煮定食が出てきました。天ぷらそばの台抜きは福岡で初遭遇。ということは「台抜き」は西日本の言い方で、「天抜き」「抜き」は東日本的言い方の可能性があります。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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