旬の味、ヤングコーンはヒゲ命 焼いて香り揚げて食感
ウニやマグロ、牛肉などのごちそう食材と違い、好物であることを公言しにくいものがある。ヤングコーンなどは、その典型だろう。
八宝菜やサラダなどに、なんとなく入っている地味な野菜。わざわざ言及するまでもない存在。
しかし一見目立たないこの脇役野菜を好きという人は案外多い。
またそのおいしさが知られるようになり、最近では堂々の主役を張ることも少なくない。
ところでヤングコーンとは、特別に小さい品種というわけではない。一般的なトウモロコシは甘く大きく育てるため、1本の株には1~2本の実しか残さず、残りは間引いてしまう。この小さいうちに間引いたものが、ヤングコーンだ。
ベビーコーンとも呼ばれるように、トウモロコシとは大人と子供の関係である。
缶詰や水煮の状態で1年中手に入るが、本格的な夏になる手前のこの時期だけ出回るのが、生のヤングコーン。そのフレッシュな味わいは格別。しかも皮付きは、目からウロコのおいしさだ。
なぜ皮付きがいいのか。
それは鮮度がいいことの証であり、さらに中のヒゲをおいしく食べるためでもある。皮付きヤングコーンは、ヒゲが命と言っても過言ではない。
まず大人のトウモロコシと比べ、ヤングコーンのヒゲはフサフサと量が多く見えるだろう。実はヒゲの正体は雌しべ。ヒゲに受粉して実を結ぶため、ひと粒に1本の割合で存在する。
粒の数は大人と同じヤングコーンだが、粒の大きさが小さいため、相対的にヒゲが多く見えてしまうのだ。
ヒゲをおいしく味わうなら、まず皮付きのままグリルすれば良い。
皮を割った瞬間に立ち上る香気、しっとり蒸し焼きにされたヒゲは絶品である。
ヒゲの特徴を活かすのなら、天ぷらも良いだろう。ヒゲごと揚げるもよし、ヒゲだけまとめてパリパリのかき揚げにしてもよし。軽く塩をふれば、箸が止まらない。
そしてヤングコーン飯もすばらしい。
実と一緒にヒゲも刻んで入れれば、香りと食感の二重奏。甘く、シャキシャキした食感は病みつきになること請け合い。
ヤングコーンは、ヒゲが命。ぜひ残さず食べていただきたい。
(食ライター じろまるいずみ)
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