これぞ日本人の味、食の絶滅危惧種 しおかつお茶漬け
西伊豆カツオ探訪(2)
静岡県西伊豆町は、しおかつおによるまちおこしに取り組んでいる。
しおかつおとは、鰹節誕生以前に一般的だったカツオの保存食。カツオの塩蔵品だ。
冬の初め、内臓を取り除いたカツオを、丸ごと2週間塩漬けする。その後3週間かけて西伊豆特有の強い西風にさらし、水分が抜けたら出来上がり。
半永久的に保存がきく鰹節に比べれば賞味期間が短く、また塩気も強すぎるため、西伊豆以外ではほぼ廃れてしまったという。西伊豆では、藁で飾り付けられ、正月の神棚に供える「正月魚(しょうがつうお)」として生き残った。いわば「食の絶滅危惧種」だ。
郷土料理・しおかつお茶漬けをいただく。
白粥を丼に盛り、そこにしおかつおのふりかけ、削った田子節をのせ、海苔とネギをちらせば出来上がりだ。
発酵によって増したしおかつおならではのうまみがシンプルに味わえる。
添えられた椀は、潮汁。3枚におろしたカツオの中骨から出しを取り、塩で味を調えた、これまたシンプルこの上ない料理。しかし、驚くほど味が深い。
2杯目の丼には、この潮汁を上から注いで食べる。しおかつおと潮汁、うまみの競演だ。
おかずとして添えられたのは、カツオの心臓・星の唐揚げ。下味をつけた星は、筋肉の固まりだけにしっかりした歯ごたえで、魚とは思えない。
そうしたしおかつおの魅力を全国に発信すべく、地元の有志で結成されたのが西伊豆しおかつお研究会だ。しおかつおを使ったうどんでB-1グランプリに出展、わがまちの魅力をアピールする。
うどんの上にのるのは、焼いてほぐしたしおかつお、しおかつおのふりかけ、なまり節、田子節。薬味のネギに加え「夕陽日本一」をうたう同町の夕陽を模した温泉卵を添える。
しおかつおの強い塩気が、すべての具材をひとつにまとめる。
ありがつお!
しおかつおを食べてくれた、西伊豆を知ってくれたお客様への研究会流の感謝の合言葉だ。
(渡辺智哉)
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