東京・大阪のきつね、京都のきつねうどん、全部別物?
いわゆる冷やし中華(4)
あの物件を何と呼ぶか。それにマヨネーズをつけるか。ようやく速報値が出た。なるほど予想通りの結果ではあるが、改めて数字で裏付けられると新たな感慨がわいてくる。
結論から言えば「冷やし中華」の圧勝。圧勝ではあるけれど「冷麺」が頑強な抵抗を続けている地域も少なくない。その抵抗地域の方から見る。数字は「冷麺」の%。
京都89、和歌山69、高知67、滋賀61、大阪61、奈良59、福岡54、兵庫54、徳島・島根50。すなわち「冷麺」ははっきりと西日本型の呼称である。ところが九州における「冷麺」地帯は福岡だけで、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島は「冷やし中華」が圧倒的に強い。理由はわからない。四国は両者が拮抗(きっこう)している。ほかの地域は北海道、岩手を除いて「冷やし中華」が席けんしている。
で、北海道はどうかというと「冷やしラーメン」が57%に対し「冷やし中華」が40%(残りは「冷麺」など)。岩手は「冷やし中華」と「冷風麺」が50%ずつまっぷたつに割れた。沖縄で「見たことがない」が25%あったことに注目したい。
さてマヨ問題だが「つける」が半数を超えた県を列挙する(数字は「つける」の%)。岐阜・愛知75、滋賀69、佐賀67、三重61、福島60、山形55、福井50。岐阜、愛知、三重はスガキヤの出店地域と重なっているので理解しやすいし、これまで紹介してきたメールの内容をしっかりと裏付けている。しかし、滋賀、佐賀、福島、山形、福井は何だろう。冷やし中華マヨ文化の飛び地だろうか。
「つけない」が90%を超えたところは愛媛・香川100、新潟97、岩手・山口94、埼玉・福岡93、東京・秋田・北海道91となっている。それ以外の地域は基本的にマヨつけない地帯なのだが、どう眺め回しても傾向が読みとれない。ばらばら。中間地帯が茫漠として広がり、「つける」が20-30%の「はっきりしない地帯」が17府県にのぼる。そこで私は疑う。明らかに地域の文化として「つける」中部地方は別にして、その他の地域の「つける」は単にマヨラーの影響ではないかと。
話はそれるが、近所のスーパーを巡回観察していたら「冷やし中華」一色の麺類売り場で孤高の光りを放つ「冷やしラーメン」を発見した。生麺と袋麺の2種類がある。
パッケージの写真を見る限り、正真正銘の冷やし中華。「北海道のメーカーかな」と思って手に取ると、意外にもあのマルちゃんの東洋水産の商品だった。マルちゃんが北海道限定で売っているものを東京に持ち込んだのだろうか、というのが次の疑問だった。疑問は解かれなければならない。東洋水産に取材した。
野瀬 「おたくの商品だけが冷やしラーメンなんですが、あれって北海道の呼び方ではないでしょうか」
マルちゃん 「そうなんですがね、うちでは1966年の発売当初から冷やしラーメンなんですよ。名前を付けるときにあんまり意識しなかったんですね。冷やしラーメンの方がわかりやすのではないかと思ったみたいです。それと発売当初は北海道以外の地域で販売していました」
野瀬 「あ、そうなんですか」
マルちゃん 「山形の冷やしラーメンが知られるようになって、紛らわしいのではという議論は確かにあります」
野瀬 「あ、そうなんですか」
マルちゃん 「でも、お客様になじんでいただいている名前なので、簡単に変えるわけにもいかないんですよ」
野瀬 「あ、そうなんですか」
マルちゃん 「まあ、方針を決めかねているというところです」
野瀬 「あ、そうなんですか」
以上のような取材で以上のようなことがわかったのだった。でも売り場の一角には「復刻版 冷やし中華」というマルちゃんの商品もしっかり並んでいる。
「冷やしラーメンじゃなくて冷やし中華が食べたいんだよ」というお客さんも取りこぼさないような配慮というか戦略のようだ。どうも雰囲気からすると「冷やしラーメン危うし」の感なきにしもあらず。
メールを紹介しようと思うのだが、もう皆さん完全にテーマから離れて思いつくままの徒然草状態。多少まとまりがあるのは例のレイコさん・コール君問題くらい。
アイスコーヒー(名)(英iced coffeeから)
氷で冷やした、または、氷片を入れたコーヒー。関西では「コール(cold)コーヒー」とも「冷(れい)コー」ともいう。
また、名古屋の「ころ」については、旗の台にある名古屋系うどん店「でら打ち」では「香露」という表記を採っていました。ここはメチャウマで、超おすすめです。「ころうどんとカレーうどんのセット」があるのですが「半ライス付き焼き飯」みたいで好感が持てます(NHKの塩田さん)
名古屋の「ころ」については「愛知県製麺組合でも『香露』という表記を使っていますが、語源については明言を避けているようです」と塩田さんのメールは続いています。
毎回メールをありがとうございます。よく次から次にネタが浮かんでくるものですね。ところで「フライ」ですが私は以前、深谷辺りでも発見情報を聞いた記憶があります。埼玉県では意外に広く分布しているのかも知れません。一度食べて見たいとは思っておりますが、埼玉出身の知人は「あれはお店のメニューではなく家庭のおやつ」と言っておりました。食べさせる店があれば知りたいものです。
また出ましたね、名古屋物件が。そう、たこせんべいですよ。東京の駄菓子屋にはギョウザの皮くらいの丸い薄焼きせんべいに同封の「梅ジャム」や「あんずジャム」を塗って食べるヤツはありますが、A4サイズなんて巨大なものは見たことがありません。ましてそれを鉄板で温め、ソースを塗り、最後は卵までのせるなんて凄いと思います。
愛知県は駄菓子メーカーが集まっているところですから、こんな豪快な駄菓子の食べ方があったんでしょうね。駄菓子屋自体が激減していますが、名古屋では今でもたこせんべいが食べられますか。なんかビールのつまみにもよさそうですが。
地方色がないから取り上げなかったわけではありません。私が食べたことがないし、記憶にもないからです。「サラダうどん」という言葉を目にして「えっ、うどんが入ったサラダ?」と思いました。
同僚に聞いてみました。「巣鴨の六地蔵のそばのうどん屋さんで食べた。レタスやキュウリ、トマト、千切りのゴボウとニンジン、錦糸卵なんかがのってた。ハムはなし。ごまだれか大根おろし入り醤油ドレッシングを選べる。1000円くらい。もっと上のやつはえびの天ぷらがのってる」「ファミレスの『ガスト』にあるって話聞いたことあります」「そばサラダなら食べましたが」「あれはあくまでサラダが中心だから、うどんのたれじゃなくてドレッシングで食べるものよ」「サラダうどん? 何それ」「知りません」。という具合でした。
私の周辺では冷やし中華の麺がうどんに変わっただけという物件の目撃例はありません。
名古屋ではサラダうどんてそんなにポピュラーなんですか? そのサラダうどんのこと、もっと教えてください。
ホルモン激辛都市広島が呼んでいる。
刃渡り12センチがゴロゴロ? きっとギラギラに研がれているんでしょうね。きっと、すっごくよく切れるんですよね。それでもって気性が荒いんですよね。でも、刃渡り12センチにも行きますよ。
私辛いの、だめなんです。ハウスバーモントカレーでも汗びっしょり。
いやです。辛いのいや。
前回は北海道の大学生協でジンギスカン用の肉を売っている話にたまげましたが、今回は「使い捨てジンギスカン用鍋」にびっくりしました。使い捨ての鍋というのは紙かなんかでできているのかなあ。アルミ製なら家に持って帰ればまた何回かは使えそうだし、ペットの餌入れとかにもなりそうですが……。どんな使い捨て鍋なんでしょうか。想像できません。
元津支局長の同僚はこのように話していました。「津のうなぎは"ひつまぶし"のように切った名古屋風とか、腹開きの関西風とかいろいろです。でも総じて硬めに焼き上がっています。
津といえば"味噌かつ"発祥の地なんです。カトレアという店です。地元の人はみんな知っていますが、他地域の人は全然知りません」
で、高木さんから「夜のお菓子うなぎパイ」について質問がきていますが、意味はわかると言えばわかるし、わからないと言えばわからない。ただ、パッケージにそう書いてあるのです。傑作コピーだと思っています。
関西以外の方には説明が必要でしょう。過去にもこの話は出ていますが、もういちど書きます。大阪で「きつね」は油揚げがのったうどんで「たぬき」というとうどんがそばになります。東京でいう「きつねそば」です。
京都の「たぬき」は、そばにはならずうどんのままで、油揚げの代わりに「あん」がのるのです。ああ、ややこしい。要は上部構造を替えるか下部構造を替えるかの違いです。もっとややこしい? 白あん入りメロンパンは初耳ですが、パン生地だけのメロンパンが出てきて損した気分になったのはよくわかります。同じ値段なら実際損です。
とっても深刻な悩みですね。個人的には、マヨがお好きなようですから私の最終兵器「魚肉ソーセージ同量マヨかけ」をお勧めします。
ここでデスク乱入 魚肉ソーセージと聞いては、黙っていられません。私のおすすめは「魚肉ソーセージじっくりいため醤油がけ」です。5ミリくらいの厚さに切って油をひいたフライパンでいためます。忙しくひっくり返したりせず、片側ずつ表面がパリっとなるまで。すると、ふわふわで軟弱だったソーセージが「俺は、おかずだー」と、自分の使命に目覚めます。ご飯の時は醤油をかけますが、そうめんなら、何もかけないでどうぞ。お好みでAの素も。結婚以来、Aの素とは没交渉ですが、これを作る時だけは、復縁したくなります。
野瀬 キャベツが抜けてる。キャベツ入れて。
「納豆」再戦の申し入れが来た。
納豆というのは本当に語らずにはおれない食べ物のようだ。実はほかの方からも本戦終了後、散発的に納豆関連メールが届いている。といって、同じような形で再び納豆を取り上げるわけにはいかない。
そこで「場外戦」をやろうと思う。
本編終了後「粘りの場外乱闘」コーナーを設けメールを紹介するのである。テーマがないと散漫になるので「納豆に生卵を落とすか」「ご飯にかけるのはOKそれともNO」についてご意見を求めたい。再戦申し入れメールを今回の「場外」で紹介するので、ゴング代わりに読んでいただきたい。3回戦の期間限定。メールが少なかったらサドンデスである。
次回のテーマは迷った末に「冷やしトマトに何かける?」。サブが「麦茶に砂糖入れる?」にする。
前者についてはいくつかの地域で特色が出るのではないかと期待している。ウスターソース優勢地域とか絶対マヨ地帯とか。でも、また意表を突くメールがたくさん来て驚かされるんだろうなあ。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
初めまして。A日新聞のM山K二と申します。今さらですが、もし機会がありましたら、再度納豆を取り上げて下さい。
私は長野県松本市出身ですが、私の家でも親類の家でも納豆は粘りが出るまでよく混ぜてから生卵を入れて、そこにネギ(ミョウガなどを入れる家もあり)と醤油を混ぜて、ご飯にかけて食べていました。それが普通だと思っていました。
ところが、10年ほど前、茨城県出身のM日新聞記者に聞くと「茨城では納豆に卵を入れたことがない」との答え。本当に驚きました。山形県新庄通信局に勤務していたときはもっと驚きました。1つは最上地方のご馳走「納豆汁」、もう1つは、つきたての餅を、あんこを絡ませるように納豆に入れて食べる方法です(納豆汁については、最上地方の友人のレシピご参考までに末尾に記しました)。
東京出身の友人(医師)と納豆の臭さについて話していると、彼は「納豆が臭いと思ったことは一度もないので、議論できない」。子どものころから慣れ親しむと、水戸出身者が「腐っている」と文句をつける東京の納豆でもこうなるのです。
容器も違います。私が佐賀県で勤務しているときは、鹿島市では納豆はキャラメルの箱を大きくしたような、紙箱に入って売られていました。茨城県で勤務していたときには、プラスチックの円形容器に入っていたものや、最初から大根を和えたものや、乾燥したものまでが、どこのスーパーにもありました。
このように全国で大きな違いがある納豆について、どうか「2回戦」の機会を与えて下さいますようお願いします。
(ご参考:納豆汁についてwritten by 最上地方の教師)
うちの納豆汁は、
1.具はたくさんでみそ汁を作るように作っておきます。(具の中身は自由。でも山菜が多いとおいしい。)
2.納豆はすり鉢できちんとつぶします。これが一番大切です。(挽き割りでは納豆本来のいい味が出ません。)
3.すりつぶした後、最後に日本酒少量でのばします。
4.それをできあがっている鍋にみそをこすのと同じようにして入れます。
5.その際、なべを煮立たせないように気をつけます。納豆汁は温めるときも弱火で煮ないと、変な香りになってまずくなります。
ちなみにうちの納豆汁の具は、ワラビ、うど、ナメコなどのきのこ、薄揚げ、豆腐、などです。山菜が嫌いなお子さんの場合はそれ相応のものを使うといいと思います。
また、うちでは大鍋で煮るのでパックでなく、経木?で包まれている昔からの納豆を7個とかつぶしますので重労働です。納豆が少なすぎると逆にまずくなるので、その辺が難しいところでしょう。納豆が少ないと上品な味になりますが、その辺をうまく調節してください。
うちは正月、お盆、彼岸の他に食べたくなると定期的に出てきます。
(以上)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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