箸に小皿に包丁&まな板 広島ホルモン天ぷらの食べ方
いわゆる冷やし中華(3)
おしゃべり抜きで即本題。
名古屋マヨ中華の乱れ打ちから他地域へとメールを順次紹介する。
当地で娶(めと)った我が妻は根っからの尾張人ですが、冷やし中華には"絶対に"かけます。つゆが甘酸っぱい醤油でも、香り豊かな胡麻ダレでも関係ありません。怨念のごとく「冷やし中華=マヨネーズ」という図式になっているようです。
理由を聞くと、上に乗っている「トマト、ハム、キューリ、薄焼き卵のため」だそうです。その割には、麺上にまで幅広く大量にかけられているのですが。「たまたま勢い余った」のだそうです。
私も、生卵かけご飯にはAメーカー、焼き海苔サンドイッチにはQメーカーと、私なりにマヨラーをもって自任しておりますが、節操の無いかけ方には反対しています。と言いつつ、かき揚げに生醤油とともにQメーカーのカロリーハーフをかけるので、妻はそれを強烈に批判します。おいしいのに……。
ちなみに妻は、いくら私が味に繊細な趣向を凝らした苦心のカレーを作ってあげても、何も言わず当たり前のように「ソース」と要求します。一瞬私の顔色をうかがいますが、知らん振りしていると50cc以上は確実にかけています。食後、「おいしいカレーを作ってくれてありがとうね」というセリフがとても空虚に響くのですけどね。
さらに言うと、ほうれん草や小松菜を買ってくると、ほぼ100%「おひたし」を要求されます。それは好き好きだから良いのですが、そこにひき肉や崩した豆腐であんをこしらえてかけようが、胡麻ダレを作ってかけようが、ダシを張って出そうが、ほぼ間違いなくその上から生醤油を(私から見て)かなりの勢いでかけられます。きっと「青菜=生醤油」という図式が確固としてあって、そうしないと生理的に許せないのでしょう。
こんど、オレンジかなんかでフルーティなソースを作ってかけて出そうかと目論んでいます。もしかしたら、それにも生醤油をかけるかも知れません。楽しみデス(りばーさん)
りばーさんからいただいたメールには西三河のご家庭における食事風景と夫婦の情景が活写されているので、思わずほぼ全文を紹介してしまった。
奥さんは冷やし中華には大量のマヨ、カレーにはドバドバのソース、葉物にはズボボボの醤油と鉄の規範をお持ちのようである。いっそ、気持ちいい。そして大変わかりやすい。
「食は保守的である」と言われるけれど、このような文章を読んでいると、全くその通りであることよと思えてくる。それにしても、かき揚げにマヨ醤油というのはおいしいのだろうか。本当においしいのだろうか。
ここでデスク乱入 シークヮーサーと聞いては黙っていられません。スダチだのカボスだのを2回りくらい小さくしたような青いヤツ。健康にいいとかで結構有名になりましたね。
フィリピンでは、これに似たカラマンシーというのがあって、ジュースにしたり、ヤキソバや魚、肉の料理にかけたりします。これをかけると、ピリッとしない料理が不思議においしくなります。で、結局、片っ端からかけてしまう。カララーとしては、マヨラーもショーラーもウスラーも他人とは思えません。
野瀬 ボクは酎ラー。あっ、意味が違うか。
名古屋以外の地域。
・ガラス製高さ10センチ超えの器
・麺は卵麺の汁だく
・具材はキュウリ、ハム、卵が千切り、トマト8分の1切れ
・練り辛子が縁についていた
・マヨネーズはなし
・つゆは酸味ベース
・値段はやや高め設定
と記憶しております……どうもマヨネーズに対して「庶民の味」が連想できない。「中流より少し上の味」ってところでしょうか(京都の井上さん)
もはや名古屋とその周辺が「冷やし中華マヨ地帯」であることに疑いの余地はないようだ。そしてスガキヤの影響を見落とすわけにはいかない。
今度名古屋に行くのでスガキヤで冷やし中華とパフェを女子高生にまじって食べることにする。ついでにスガキヤのラーメンはなぜぬるいのかも取材してくる。
ただ名古屋の人はスガキヤのラーメンスープがぬるいという自覚はないだろうから、取材にならないかも知れない。
さて、このところ広島に焦点が当たっている。知らないことばかりなので興味津々。
ホルモン汁とか、でんがく汁と言われるスープものもあるんですね。
渡辺さんのメールにあるチギモ、ガリ、アギって何のことかわかりません。久留米の馬ホルモンのダルム、センポコのように相当ディープな世界が広がっているようです。
それにしても、ポン酢に粗びき唐辛子を山盛り入れるんですか? 飲んだ後のシメが辛ーいつけ麺だったら、広島というのは知られざる激辛地帯です。日本のタイといっても過言ではないでしょう。
で、まな板に包丁ですか? 自分で切って食べる? そんなに巨大なんですか。
そば屋のカレーうどんを食べても汗びっしょりになる私は0.01倍で結構です。昔、2倍カレーを食べてカレーの上に汗をボタボタと垂らし「軟弱だなあ」と言われたことがあります。はい、辛さに対してはとても軟弱です。根性なしです。
大阪の冷コーヒー、レイコ(レーコ)さんは今週も出演している。
さっきの「白肉の天ぷら」の方と同じ方ですか? 白肉と名探偵コナンが結びつかないので、あるいは別の方かもしれませんね。
それはともかく、コールコーヒーですか。懐かしい。大阪というか関西ではレイコさんと張り合っていた時期がありました。普通の喫茶店ではレイコさんが強くて、コーヒー専門店ではコール君が頑張っていたような記憶があります。でもいつの間にか2人ともどっかに行ってしまいました。コールがコールドから来ているのか、クールが変化したものか。そう思って喫茶店のおばさんに聞いたことがあります。返事は「どっちでもええやんか」でした。
白状しますが私はこの「コール」を求めて各地を徘徊したことがあります。大阪の京橋駅前で「コール・コーヒ」(コーヒーではない。コーヒ)のメニューが付いたサンプルを発見して写真に撮っております。香川県の高松市で「コールカフェオレ」「コールティー」「コールコーヒー」のメニューを掲げる喫茶店に入り、そこでアイスクリームトーストを食べています。3年前のことですが高松の喫茶店のママは「この辺じゃあ、アイスとコールが半々かねえ」と言っておりましたので、高松ではまだコール君が元気で働いているかもしれません。
脈絡なく、面白いメールを何点か。
私の初ころは岐阜でした。郊外のそば専門店でファーストころ。その時点で知っていた「ころ」は大阪のクジラ系おでん種だけでしたので、その「ころ」がそばに入っているのかと思いました。
次の日にも岐阜駅前の立ち食いそば(うどん)屋でセカンドころしました。セカンドころに際してついに我慢できず、店の人に「ころって何ですか」と聞いてみましたが「この人何を言ってるんだろう」みたいな顔をされてしまいました。ほんとにどうして冷たい麺類を「ころ」と呼ぶのか全然わかりません。どなたか語源をご存じの方は教えてください。
食べ物の呼び方というか名前って、ときに不可思議なものがあります。次のメールもそんなひとつ。
オトナの会話ですね。夜のお菓子うなぎパイみたいな。
でも、これは「牛の静脈があまりに酒に合い、お父さんが毎晩のようにこれを食べて酔っ払って帰ってくるので嫁が泣く」のではないかと愚考します。うれし泣きではなくって、本当に悲しいのです。違う?
広島式重ね型お好み焼きならいいですか? それとも、広島の人が普通にお好み焼きと呼んでいるお好み焼きですか? ちょっと長いですが。
最初は牛乳9対焼酎1かと思いましたが、酒乱会の会員であれば焼酎9に牛乳1でしょうね。
ところで、ウイスキーの場合は牛乳割りというのが確かにあります。私が飲んだバーでは石原裕次郎がこれを好きだったということから(本当かどうか知りません)、「裕次郎カクテル」と呼んでいました。これからは「焼酎の裕次郎割りば知っとるね」と自慢げに飲んでください。
ちなみに私は自宅で甲類焼酎の牛乳割り、飲むヨーグルト割り、充実野菜割りなど手当たり次第に飲んでいます。韓国の健康ドリンク割りは有名です。日本でもリポD割りとかオロC割りとかやる人がいます。牛乳くらいフツーですよ。
一番驚いたのは大学生協で肉を売っているということです。北海道の学生は生協に肉や鍋を置かなければいけないほど頻繁にジンギスカンやっているんですか。
さあ、最後にとっておいた久留米ネタ。
実体不明の非営利道楽団体「久留米焼き鳥学会」広報部長の豆津橋さんです。
ちょっと説明しますと豆津橋は筑後川に架かる橋の名前です。カッパが出てきたのは昔から筑後川流域にはカッパ伝説が広く存在するからです。田主丸町には「河童のへそ」という有名なお菓子があります。「ちっご川」はミスタッチではありません。地元の人は筑後川をちっご川、筑後弁をちっご弁と発音します。
で、ちっご川大鳥焼き大会ですが、槍はいいですね。銃刀法に注意しながら、ぜひやりましょう。この間発表された「焼き鳥Boogie(ブギ)」のダンスコンテストはどうでしょう。高齢者向け「入れ歯でも食べられる焼き鳥ネタ」を募るのもいいかもしれません。センポコのつくねとか。
ギネス狙いもいいですが、ずぼらな私は「後片づけ大変そう」と思ってしまいます。片づけが簡単なものにしましょうよ。私、片づけに参加しなくてもいいのなら大賛成です。
肝というのはレバですか? レバはちょっとねえ。あんまり好きじゃないんですよ。ほかのものにしません?
気がついたら本題の「いわゆる冷やし中華」はちょこっとしかやらず、テーマ外のことばっかり書いてしまった。というより、皆さんの関心も冷やし中華から離れ、いろんなことを書いて来られるのでこうなってしまうのである。それでいいのである。
次回はVOTEの速報が出る。名古屋周辺以外にマヨ地帯はあるのか。個人的にはそれが最大の関心事である。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。