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食べ物 新日本奇行 classic

「冷やし中華にマヨネーズ」は名古屋だけの食べ方か? いわゆる冷やし中華(2)

2016/6/24

東京の弊社社員食堂で出る「いわゆる冷やし中華」は典型的な社食バージョンである。食券を渡すと冷凍中華めんをお湯で温めて冷水にさらし皿にあける。そこに酸味のきいたスープをかけ、はい出来上がり。

具はのっていない。具は別の小鉢で渡される。

セパレート型冷やし中華

小鉢を上からのぞくと、まず紅ショウガ。その下に錦糸卵、千切りハムに千切りキュウリ、さらにその下にはモヤシが敷かれている。これを自分の力だけを頼りに麺の上に敷設していくのである。

ハムの隣りに錦糸卵を置こうがモヤシを置こうが気分次第、お好み次第でマイ冷中をつくることができる。でも、面倒くさいのである。キュウリの一群をはしできれいにつかみとったはずなのにモヤシが一筋まじり、錦糸卵の黄色が一筋の紅ショウガによって色彩を乱され、そもそも紅ショウガが嫌いなので取り除こうとすると大好きなハムの一片に赤く色移りしていたりして悲しいのである。

セパレート冷やし中華の具 自分で麺にのせる

安い、早いが信条の社食では「これくらい我慢してよ」「我慢しなくちゃね」という暗黙の了解があるからこそ具別盛り自力敷設型冷やし中華が存立しうるのであって、これを外の店がやったらチャブニチュードの嵐が吹き荒れるであろう。

しかし、これでも業者が変わって社食の内容はぐんと良くなったのである。以前はひどかった。カツ丼なんか四角い大きな鉄板で一度に大量に作り、注文がくると包丁で一人前ずつ長方形に切り取って丼にのせていた。丸い丼に四角い卵とじカツの、しかも冷えたやつがのっているのであった。

お好み次第でマイ冷中をつくれる

今は注文を受けてから一人前ずつ作ってくれるので、普通のお店並みである。しかも、なぜか見本ケースの横に黒服に身を包みちょうネクタイまでした食堂請負会社の人が立っていて「いらっしゃいませー」を連呼している。そこまで正装されると260円のカレーで済まそうとするときなんか、かえって恐縮するのである。

なんかどうでもいいこと書いてるなあ、と自分でも思うのだが、実は風邪を引いていて鼻はズビズバと音を立て、頭はモヤモヤの幕に包まれている。絶不調。昨日はベッドから落ちなかったのに、どうして風邪引いたんだろう。

どうでもいいことですが、からしもセパレートでした

ここでデスク乱入 「普段はベッドから落ちる→風邪を引く」ということになってるわけですね。ふむ、これには何かのシャレが隠されているのかなあ。だって、落ちたら普通起きるでしょ。そいでもってのそのそっとはい上がって、ふとんかけるでしょ。そこまで前後不覚になるっていったい…。

野瀬 私の場合、眠るとは気絶することである。

冷やし中華にはマヨネーズ(名古屋のす~さん提供)
ご意見 かれこれ30年前(幼少のころ)、当時岐阜市在住の私が出合った「冷やし中華」(そうです。「冷やし中華」です)にはマヨネーズが添えてありました。ところは岐阜ローカルの持ち帰りおにぎりチェーン「子の日」(その後「子の子」に改称、平成13年に倒産)の本店でした……いまでは一般に普及したマヨネーズ入りのルーツは、ひょっとしたら今は亡き「子の日」なのではないでしょうか(千葉の國江さん)

野瀬感心 30年前にすでにマヨ入りとは。おしゃれー。

サラダと同じ感覚?=PIXTA
ご意見 冷やし中華で名古屋ネタといったら、絶対出てきますよねぇ。冷やし中華にマヨネーズ……外で冷やし中華を食べたのもやっぱり「寿がきや」です。もちろんマヨネーズ付き。名古屋の冷やし中華にマヨネーズの原点は寿がきやですから……冷やし中華の具は基本的にサンドイッチやサラダの具と同じなのです。サンドイッチやサラダにマヨネーズをつけるのはおかしくないのに、なぜ冷やし中華にマヨネーズをつけるのを他府県の人はあんなにバカにするのでしょう。「名古屋人がやるから」バカにするかもしれないけど、普通に考えたらちっとも変じゃないと思うのですが(生まれも育ちも名古屋中心部のValさん)

私たちはバカになんかしていません。このサイトは食べ物に優劣はない、いい悪いはないという原則に立っています。ただ違いを確認し、その過程を楽しんでいるだけです。バカになんかしてませんよ、本当に。

サラダ感覚で冷やし中華にマヨネーズ
ご意見 冷やし中華マヨネーズ問題ですが、名古屋が発祥で名古屋めしのヒット作だと私は思っています。そもそも具をみても卵やキュウリやハムなどサラダでお目にかかることの多い食材で、マヨネーズを入れるとスープの酸味がまろやかになって食べやすくなるし、名古屋の味付けはこってりが多いですしね。私は「冷やし中華=マヨネーズ」です。ちなみにコンビニやスーパーの総菜売り場で販売されている冷やし中華にはマヨネーズが絶対ついています(愛知県知立市の新社会人さん)

就職以来初めてのメールです。お元気そうですね。お仕事は慣れましたか? さて、マヨネーズ添えに関して岐阜の「子の日」発祥説、名古屋の寿がきや発祥説が出てきました。ほかに説がある人は教えてください。

味噌カツ
ご意見 生まれと育ちは大阪で、結婚を機に名古屋へ引っ越し8年目です。引っ越した当初、食文化で数々のカルチャーショックを受けました……寿司屋に入っても当然のように赤だしを頼む名古屋人の味噌好きは大したものです……コンビニでおでんを買っても味噌が付いてきますし、味噌だれのかかった味噌カツは名古屋名物です。味噌がどうしても合わない食べ物にはマヨネーズをかけるような気がします。冷やし中華はその代表格です。ちょっと酸味があるたれに甘みがある味噌だれというのは、いかに味噌を愛する名古屋人でもくどいんでしょうね(名古屋の二宮さん)
どて煮

「冷やし中華の具はサラダみたいなものだからマヨをつけても変じゃない」というネイティブ名古屋ンの論理も、外来の目で見ると「味噌が合わないからマヨつけてるんだ」という風に映るのでしょうか。

冷やし中華の具=サラダ説はわかるのですが、そうするとマヨをつけない地域の人には同じ具がサラダに見えていないということになりませんか。あるいは「たれが十分にドレッシングの役割を果たすわけだし、そもそもそういう発想で作られた食べ物なのだからマヨを加えるのはドレッシングを二重にかけることになる」という論理も出てきそうです。ただ、どちらが正しいというようなことではありません。念のため。

マヨネーズと和からしでどろどろにして食べるのが福島流(浪江焼麺太国の浅見さん提供)
ご意見 福島出身の友人は冷やし中華にはマヨネーズが不可欠だ!と申しておりました。ちなみに山形の一部でもマヨネーズがのっているところがあったような……(東京在住山形出身さん)

個人の趣味か、地域的傾向か。そこが問題です。マヨ問題が名古屋以外に広がる可能性があります。

呼び方問題で4通。

盛岡では冷風麺(岩手町のポン太さん提供)
ご意見 盛岡では「冷風麺(れいふうめん)」という食べ物です。最近「冷やし中華」と書く店も多くなったようですが、多分東北新幹線が開通してからではないかと思います。小学生のころ、袋もののインスタント麺で「冷麺」が発売されたとき、CMを見て「オイオイ冷麺はそれじゃないだろ」と思いましたが、私だけでなくクラスのみんなもそう思っていたようです。母校の盛岡一高では「冷麺同好会」なるものまで作られる始末でしたが、もちろん最近でいう「もりおか冷麺」のことで、半透明のコシの強い麺が牛のスープに浮かび、キムチののった辛いヤツです(盛岡離れて早20年のY.Oさん)
岩手の冷風麺(岩手町のポン太さん提供)
ご意見 香川県ではメニューで「冷やし中華」が多くなっていますが「冷麺」「冷やし中華(冷麺)」のお店もあります。30年前は「冷麺」onlyだったと記憶しておりますが、冷やしうどんや素麺を食べる機会が多いのであまり意識していなかったのかも。我が家では、いわゆる冷やし中華も盛岡も韓国式も「冷麺」と呼んでいます(讃岐人さん)
冷コーヒー
ご意見 「冷麺」で思ったことですが、少なくとも私が学生だった20数年前、大阪ではアイスコーヒーのことを「レーコー」(冷コー?)と言いました。「冷麺」という名称は外来にしても「冷……」という表現自体が関西と親和性が高いのでは?(上海の田中さん)
冷どんとは言わへんな
ご意見 やっぱり関西では「冷コー」(アイスコーヒー)があるように、冷たいラーメンは「冷めん」でしょう(しかし冷やしうどんは冷どんとは言わへんな)私の中では「冷やし中華」はよそ行きの言葉、標準語というイメージです(大阪生まれ滋賀県育ちのうずら40代♀さん)
「冷やし中華」に駆逐される?

コンビニやスーパーに並ぶ全国一律商品の「冷やし中華」、「冷やし中華」のテレビコマーシャル、冷やし中華文化圏からの訪問者の増加。各地の以前の呼び方が「冷やし中華」に駆逐されている可能性は十分にあります。盛岡の冷風麺や関西・四国の冷麺という呼び方が劣勢になっているとしたら、ちょっと寂しいような気がします。

同じように関西の「レイコ」「レーコ」も絶滅危惧(きぐ)種です。

レイコー、帰ってきてくれー

私が大阪で初めて勤務した27年前は喫茶店という喫茶店にレイコがありました。多分、ウエイトレスの中にもレイコさんがいたでしょうが、そのレイコさんは客が「レイコくれ」とか「レイコでええか?」「うん、レイコ好きやねん」などと言うたびに複雑な思いをしていたことでしょう。それが今やアイスコーヒーばかりになってしまいました。はやりのコーヒーショップチェーンやカフェで「レイコ」って絶対言ってくれそうにありません。レイコが懐かしい。レイコー、オレが悪かった。帰ってきてくれー。

ここでレイコ乱入 探さないで…。もう終わったのよ。

デスクも乱入 アイスコーヒーを略したのに「アイコ」にならないところが、大阪の懐の深いところですね。もしかして初めは「冷やしコーヒー」と呼んでいたのでしょうか。

上方レイコ・アイコ?=PIXTA

野瀬註 どこかにアイコがいたら、コンビ組む? 上方レイコ・アイコとか。

レイコ ウチ、そんなんいやや。

広島の「何にでも大盛りのご飯がサービスでついてくる店」の詳細を教えてくださいと書いたところ、早速みんみん(♂)さんから地図までついた詳しいメールをいただいた。ありがとうございました。で、そのメールには「ただ、『なぜご飯をおまけに付けるのか』なんておばさんに聞かない方がいいかもしれません。『そこに飯があるからだ』と言いかねませんから」とあった。

ホルモンの天ぷら

了解。聞かない。怖そうだから。でも、どういう答えが返ってくるか、ちょっと聞いてみたい気もする。本当に「そこに飯があるからだ」という返事だったら、どんなにうれしいことだろう。

みんみんさんの続報に「広島の『食の方言』を探検されるのであれば、ぜひ『ホルモン天ぷら』を食べてみてください」と書かれていた。「ホルモン天ぷら」? そんなのが広島にあったなんて知らなかった。みなさん知ってました? いまだに久留米の馬ホルモン焼き鳥の衝撃が残っているのに、今度はホルモンの揚げ物とは……。日本は広すぎる。

広島のお好み焼き

でも、これは絶対食べなければならない。久留米の馬ホルモン焼き鳥と広島のホルモン天ぷらが縁になって姉妹都市提携に発展するかもしれない。ホルモンが結ぶ友好の絆である。広島のみなさん、ホルモン天ぷらがおいしい店はどこですか?

ご意見 ぜひとも(広島風)お好み焼きを召し上がってください。お好み焼きを召し上がった次はつけ麺ですかね。激辛の……(40代 お好み大好きのぶちゃんさん)
劇辛つけ麺

広島でお好み焼きを食べたときメニューに「まぜ焼き」とありました。聞いてみれば大阪風に具と小麦粉をまぜて焼くのをそう言うのだそうです。なるほど広島風はまぜませんね。大阪の人々は自分たちが愛してやまないお好み焼きが「まぜ焼き」と呼ばれていることを知っているのでしょうか。

ところで激辛のつけ麺て広島ではスタンダードなんですか? 繁華街の交差点の角っこで激辛ラーメンの看板を出している店を見たことがありますが、辛いのはあの店だけじゃないのですか。広島の人ってカプサイシン好きですか。広島に行ったときに、よーく観察いたします。

砂ずり入りのお好み焼き

前回の観察でやたら砂ずり(肝)メニューが多かったのでひそかに「広島は隠れ砂ずり都市である」と思っていましたが、本当は「隠れホルモン天ぷら都市」であり「隠れ激辛都市」でもある可能性がでてきました。楽しみです。そうそう、広島には結構「天ぷらラーメン」とか「和風ラーメン」とか、エビの天ぷらがのったラーメンがありますね。それも食べなくっちゃと思っています。

「煮抜き」の「抜き」問題。だんだんミクロな話題になってきた。この辺で、終止符を打ちたい。

天ぷら中華
ご意見 「除外する」という意味の「抜く」よりむしろ、「やり抜く」「貫き通す」という意味の「抜く」ではないでしょうか。余談ながらこの「煮抜き」という語法を初めて知ったのは、週刊モーニング誌でかつて連載していた「大阪豆ゴハン」(サラ・イイネス作)でゆで卵のことを卵の煮抜きと表現していたことからです(枚方生まれ東京在住の宗方さん)
ゆでるのを貫き通したら半熟になりません

同様のご意見がほかの方からもありました。なるほどと思ったのですが、三林京子さんによると大阪では「煮抜き半熟」という表現があるのだそうです。ゆでるのを貫き通したら半熟になりません。

本来は宗方さんや先週紹介した皆さんがおっしゃるように「固ゆで卵」のことを指したのかもしれませんが、一方では単に「ゆで卵」の意味でも使われているようです。取りあえず、私にとって「煮抜き」問題はあんまり切実じゃないので、どっちでもいいです。

愚息が卒業した高校には「帰宅部」というのがあった。さっさと家に帰るというのが唯一の活動で、別名はGHQ。ゴー・ホーム・クイックリーの略である。みなさんの会社でも「帰宅部」を結成し、居酒屋なんかでぐずぐずしてないでいそいそと家路につくようになったら家族には……迷惑だったりして。

いわゆる冷やし中華(3)「箸に小皿に包丁&まな板 広島ホルモン天ぷらの食べ方」は25日(土曜日)に公開します

<!--罫囲み>いわゆる冷やし中華(3)「箸に小皿に包丁&まな板 広島ホルモン天ぷらの食べ方」に続く

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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