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しらたきと糸コンの定義判明 果たしてどう違うのか?

納豆(2)

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NIKKEI STYLE

納豆関連メールがたくさん届いている。

まずは海外からのネタを。

ご意見 香港在住20年。いままで、納豆買っているのは日本人しか見なかったのが、最近納豆を買っている香港人のおばさんを発見しました。その人の籠にはなぜかヤクルトとキムチも大量に入っていました。そういえば日本人と韓国人がSARSにかかりにくいのは、納豆とキムチのためだという噂が流れたことがありましたっけ。キムチ納豆にヤクルトをかけたものがSARSの特効薬か。キムチワルー(香港 仏蘭西屋さん)
ご意見 現在SARSで有名な広東省に単身赴任しています。私は納豆菌とにんにくこそがSARSに対抗できるものだと、何の根拠もなく信じて、輸入物の納豆を食べ元気に暮らしています(48歳男性 広東省深セン市在住 スガさん)

香港でそんな噂が流れたんですか。考えてみると納豆もキムチもヤクルトも発酵系〇〇菌つながりの食品です。ですが、残念ながらそれだけではSARSに効くかどうか、何の根拠にもなりません。スガさん、お気をつけて。

ご意見 水戸出身者として一言。大学入学で東京に出てきて驚いたこと。納豆が臭いんですね。最初は腐っていると確信してスーパーに文句を言いに行きました。複数の同級生が経験しています。もちろんスーパーの人には理解されませんでした。納豆ってちょっと枯れ草っぽい、かすかに甘い香りのするものだと思って育ったのですが(納豆なら黙っていられないさん)

いつのころの話かはわかりませんが、東京の納豆はそんなに臭かったんですか。というより、水戸の納豆との間にそれほど差があったんですね。

実は私、水戸から帰ったばかりです。もちろん水戸では納豆を食べました。枯れ草のにおいはともかく、小粒でするするとのどを通りました。同行3人、みんな「うまい」と声に出しておりました。でも「東京の納豆は腐っている」と言われたスーパーの店員さんは困ったことでしょう。「腐ってなかったらただの大豆だ」なんて心の中で反論していたかもしれませんね。

ご意見 納豆は「とっても好き」を通り越すほどの好物! 食べ方は普通ですがご飯、スパゲティ、オムレツ、お好み焼き……調理師なもんで納豆料理のレパートリーは多い!三食納豆でもOKです。砂糖はさすがに入れませんが、マヨネーズは入れますよ(鹿児島県鹿屋市の吉田さん)

吉田さんはよっぽどの納豆好きですね。広東の地で納豆を食べながらSARSと闘っているスガさんのお宅も離乳食はひき割り納豆を入れて煮込んだ「納豆おじや」だったそうで、大きくなったお子さんは今でも納豆を食べないとおなかの調子が良くないということです。

納豆というのはこのように「好きでたまらん」「なかったら体調悪い」という人がいるかと思えば、先週紹介したメールのように「食べ物とは認めない」「好き嫌い以前」という生き方の人もいます。癖はあるし、地域によって食べる習慣が昔からあったところ、なかったところという歴史的背景がある食べ物なので無理もないかもしれません。でも最近のスーパーやコンビニの陳列棚、テレビのコマーシャルの様子を見ていると納豆の勢力圏が徐々に広がっているような印象です。VOTEの結果が気になります。

ご意見 高校まで秋田に住んでおりましたが、確かに砂糖(サッカリンだったかも)を入れてましたし、トマトやゆでたジャガイモにも砂糖をかけて食べた記憶があります。親戚の集まる盆正月や法事でも同様の食べ方をしていましたから、単なる砂糖好きではなく一種の食文化であろうと思います(札幌在住 yanamasa7さん)
ご意見 栃木県出身の作曲家F村氏は納豆に砂糖を入れるそうですが、私の周囲に納豆に砂糖を入れる知人はまったくいませんでした(宇都宮出身のちびたさん)
ご意見 (F村氏と)同じ栃木県北部出身者として発言させてもらえれば納豆に砂糖はいれません。少なくとも一般的ではありません(アメリカミシガン州在住 TMさん)

F村さんに聞きました。「納豆に砂糖っていうのは、F村さんのオリジナルですか?」。すると答えは「秋田出身の人に教わったんです。その人の話だと秋田の方じゃあけっこうやっているらしいですよ」。まさにyanamasa7さんのメールと符合する内容でした。栃木県出身者のみなさんの疑問もこれで氷解したのではないでしょうか。

今回「秋田には納豆に砂糖という食べ方が存在するのではないか」というテーマが浮かんできました。秋田といえば甘納豆赤飯の文化も浸透している地域です。北海道、青森という甘納豆赤飯地帯でも納豆に砂糖という文化が濃厚であれば、実に面白い結果になりそうですが……。

ここで懸案にとりかかろうと思う。「肉」といった場合、地域にとって豚肉を指したり牛肉を指したりするが、その地域分布はどうなっているのか。

結論から言うと、はっきりとはわからない。関西で「豚まん」というのは「肉まん」だと中身が牛肉ということになるので、わざわざ「豚」と表現しているのだといわれるし、反対に関東で「肉まん」が何も問題にならないのは関東が豚肉文化圏だからであるという説が唱えられている。

NHKの塩田さんも「『肉』が何の肉を指すのかは、その地域で一番よく食べられている獣肉が何なのかということと強く関連していると思います」と言っている。牛肉文化圏では牛を指し、豚肉文化圏では豚を指す傾向が強いのではという推論である。「総務省の家計調査なんかをつらつら眺めてみると、1世帯当たりの購入数量の多い肉は、大まかに『東日本は豚、九州は鶏、その間は牛』みたいに言えそうです」ということだし、確かに食卓にのぼる肉はそういうことだろうと思う。

だが、九州で肉と言ったら鶏を指すかというとそうではない。私の周辺では普通豚肉をいう。鶏は九州では「かしわ」である。鶏肉専門店は「かしわ屋」の看板を掲げ、刻んで甘辛く煮た鶏肉をご飯にのせた「かしわ飯」が広く存在し、うどんにトッピングしたら「かしわうどん」である。さあ、難しいことになってきた。

「天かす」か「揚げ玉」かという問題も簡単ではない。塩田さんの回答を要約すると次のようなことになる。

まず、言葉の「形」の地域差としては関東では「揚げ玉」、関西では「天かす」だと言えそうです。関西では「天かす取り放題」の店が多いのですが(ハイカラうどんという名で料金を取るところもあります)、関東では取り放題は比較的少なく、お金を取る「商品」を「天かす」というオマケ扱いをした名で呼ぶことに抵抗があるから、そいういう言い方を避けているのかもしれません。

「意味」の面でも「天かす」と「揚げ玉」は違うという人もいます。「天かす」は実際に揚げた際に出る衣の「かす」だから、大きさも不ぞろいで焦げたところなんかもあるのに対して、「揚げ玉」は関東でいう「たぬきうどん・そば」用にわざわざ作ったもので、粒がそろって玉状のものだという指摘です。おそらく「西の天かす・東の揚げ玉」という形になろうかと思いますが、予断を許しません。

手元のいくつかの資料にあたってみたが、これといった先行調査が見当たらない。すでに克明な調査をした人がいるのかもしれないが、大変興味があるテーマなので、次回あたりこの問題を取り上げてみようかとも思っている。

もう一つの難題が残っている。「しらたき」と「糸こんにゃく」はどう違うのかという問題である。前回、広辞苑の説明を載せ、それに対する疑問を示唆したが、果たして広辞苑の立場が怪しくなってきた。

ご意見 白滝と糸コンの違いですが、おでん種でもあることからチェック済みです。あくまで基礎知識ということで。
「白滝」 板コンニャクより硬めに練った精粉(せいこ=元ダネ)を"白滝製造器"に入れて、細かい穴から熱湯中に押し出して固めたもの。
「糸コンニャク」 板コンニャクを後から千切りにしたもの。
 これはコンニャク屋さんも証言している製法で、白滝は白糸の滝のように作り、糸コンニャクはコンニャクを糸状に加工しているようです。言い換えると前者は細いコンニャクを作る、後者はコンニャクを細くするということになります。また、ところてん式で作られる白滝の方が長くなります。
 とはいうものの、最近は製法で厳密に区別することが少なく、両者ともところてん式で作られているようです。白滝の方が細いようですが、ほとんど同じものと思っていいでしょう。ただ傾向として白滝は東日本、糸コンは西日本での呼び名が一般的のようです。これは一説によると江戸時代の製法の違いからきているとか。江戸ではところてん式に細長いコンニャクを作り、京都や大阪では板コンニャクを細く切って糸状にしていたようです。

長くなりましたが、必要なので紹介しました。「おでん」のときにお世話になった「おでん博物館」の新井由己さんからのメールです。

財団法人日本こんにゃく協会のHPに区分が載っている。新井さんのメールと合わせて読んでいただきたい。

糸こんにゃく こんにゃくがまだ固まる前の糊状のときに細い穴に通しながらゆで、糸のように細いひも状にしたもの。精粉から作るものは、まるで白糸の滝のようなので「しらたき」とも呼ばれています。短時間で味がなじむため、すき焼きやあえ物に向いています。

ただし、江戸時代の頃は、しらたきと呼ぶのは主に関東で、関西では板こんにゃくを細く切ったものを糸こんにゃくと呼んでいたそうです。現在は関西でも細い穴に通して造っていますが、昔のなごりからか糸こんにゃくと呼ぶことが多く、また糸こんにゃくをより細くしたものをしらたきと区別する場合もあります。

過去には関東と関西で作り方の差異は確かにあった。今でも厳密にいうと「細いコンニャクを作る」のか「コンニャクを細く切るのか」という違いはあるのだろう。だが、現在では「白滝」と「糸コンニャク」は製法も含めてほとんど違いがなくなっている。というより協会の説明では「精粉から作る糸こんにゃくは、しらたきともよばれる」とあるから本質的には同じ物である。

精粉というのはコンニャク芋の皮をむき、澱粉質を除いてコンニャクマンナンの粉にしたもの。これに水とアルカリを加えて作ったものは白いコンニャクになる。最近では精粉で作った白いコンニャクに海藻などを混ぜてわざわざ黒くしている製品も少なくないという。生芋より精粉のほうが輸送・保存に適しているからこういうことになるのだそうだ。

ただ、呼び方についてだけは歴史を反映して関東では「しらたき」、関西では「糸コンニャク」という傾向が残っている。

ならば広辞苑の「しらたき 糸ごんにゃくのさらに細く作ったもの」という記述はどこから来ているのか。協会のHPの記述の末尾に付記されている「糸こんにゃくをより細くしたものをしらたきと区別する場合があります」という部分しか合致するところがない。つまり広辞苑は「場合がある」という程度の例外的な定義を採用したということにはなりはしないか。

ご意見 前回糸コンとしらたきの違いについて質問したものです。その後近所のスーパー(奈良)で見てみました。糸コンは白・黒、太・細各種がありましたが、しらたきというものは存在しませんでした(旦那が九州人の関西人さん)

奈良のスーパーに糸コンは各種あるのに、しらたきが存在しない背景はもうおわかりですね。奈良の糸コンの中には関東で言うしらたきが含まれているのです。でも、呼び方が違うのです。関西ですからしらたきも含めて「糸コン」 なのです。

実は私も初めて知りました。「すき焼きの具」のVOTE項目を考えるとき、私は無意識に「糸コンは黒くて割りばしぐらいの太さに切ったもの。しらたきはもっと細くて白いもの」というイメージでした。これは江戸時代の区別に近い分け方であったことになります。広辞苑的な分類でもありました。

で、都内のいくつかのスーパーを回ってみました、すると「しらたき」には細いものもあればけっこう太いものもあるし「しらたき(白糸)」「しらたき(黒糸)」もある。「しらたき」とほとんど変わらない太さなのに「糸こんにゃく」と書いたものもありました。かと思えば「つきこん」(突き出しコンニャクの略か)とか「細切りこんにゃく」もあるのです。要するにばらばら。

いま、しらたきと糸コンの正しい定義がようやくわかった。

「すき焼き」のVOTE項目を決めたときには間違った認識を持っていたわけだが、その結果をどう考えたらいいのか? あの「しらたきvs糸コン」地図は一体何を意味しているのか? 単に呼び方の分布を表しているのか?

表示に関係なく、自分が必要な細さ太さのものを選ぶしかない状況であることが判明した次第です。

「高知では私が子どものころ(30ン年前)には納豆は普通に売ってませんでした。したがって例えば実写版初代「サザエさん」江利チエミ主演のようなホームドラマで納豆を食べるシーンは甘納豆だと思ってました」(高知の恒石さん)というようなこともあるし、今でも納豆は甘納豆を指す地域もあるそうなので念のために定義しておく。ここでいう納豆とは「糸ひき納豆」のことである。

今回はおやじギャグがないじゃないかとお思いのあなたへ。そう、ない。いつもいつも無意味にテンションが高いとは限らないのである。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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