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麩、大根、タマネギ、糸こんにゃく…西日本のすき焼き

すき焼き(4)

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NIKKEI STYLE

私は、日本の飲食店で感染者が激増している「ニナリマス症候群」が気になっている。かかっても熱は出ない。絶対死なない。本人に自覚症状はなにもない。むしろ「どこが悪いのよ」という気分にさえなるようだ。

つい先日、喫茶店でこの感染者に遭遇した。

「こちらアイスコーヒーニナリマス」

(初めからアイスコーヒーになりっぱなしなんですけど)

「こちらガムシロップニナリマス」

(だからこれもさっきからガムシロップになってるでしょ)

「ミルクはこちらニナリマス」

(ミルクがこちらになっては困るんです。ミルクのままでほしいんです)

帰るときも、

「1000円からお預かりします。こちらお釣りニナリマス」

(もう……)

あるテレビ番組で、その家の奥さんが母親を紹介しながら何と言ったか。

「こちらが母になります」

と言ったのである。

ほう、そうかい。じゃあ早く母になってくれ。母になるところを見せてくれ。それともナニかい? あなたの家ではさっきまで父だった人が急に母になったりするのかい? などとツッコミたくなってしまった。

どうして「です」とか「でございます」という普通の正しい日本語があるのに、それを使わないのだろうか。飲食業界のマニュアルを作っている人にお願いしたい。ニナリマス症候群、何とかして。でないと困ったことニナリマス。

すき焼きの速報値が出た。大した結果にはならないだろうと思っておられた方も少なくないだろう。私も少し不安だった。だが、有意な地域差が表れたのである。その解説に移る前に、VOTEの結果から見えた平均的な日本人のすき焼きの具を紹介しよう。

牛肉、白いネギ、白菜、焼き豆腐、春菊、シイタケ、エノキ、しらたきまたは糸こんにゃくである。まあそうだろうなと多くの皆さんは思われるに違いない。北海道では例の「肉鍋」の関係で豚肉が60%近くに達したほか、岩手も60%、新潟が35%、沖縄40%という数字だったが、おおむね牛肉で覆われている。

しかし都道府県別のデータを子細に見ていくと、いくつかのことに気づく。まず、しらたきか糸こんにゃくかである。しらたきという回答が糸こんにゃくという回答を上回った地域を列挙する。

北海道、青森、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、新潟、山梨、長野、福井、静岡、高知、佐賀、鹿児島。

逆に糸こんにゃくがしらたきを上回った地域。

秋田、山形、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、福岡、熊本、大分、宮崎、沖縄。

しらたきと糸こんにゃくが同数だったのは岩手、富山、石川、鳥取、愛媛、長崎だった。

東北はわずかに糸こん優位、関東、甲信越は圧倒的にしらたき地帯、そこからほぼ全域が糸こん優勢の基調になっている。おおまかに言えばしらたきは北海道と関東、甲信越に特徴的な文化であって、それ以外ではしらたきの飛び地はあるものの、ほぼ糸こんの方が好まれているということが言える。複数回答なので両方同時に入れる人、日によってしらたきにしたり糸こんにしたりする人もあるから両方のパーセンテージを合わせると100を超えるが、それでも全体の傾向は表していると思う。しらたきと糸こんの分布が見えてきた。

次にタマネギ。4人に1人、つまり25%を超えた地域をみる。北海道61%、福井50%、滋賀63%、京都35%、大阪35%、兵庫26%、奈良25%、和歌山28%、鳥取50%、岡山27%、広島38%、徳島28%、鹿児島50%、沖縄40%だった。北海道を除くと西日本型の文化であることがはっきりした。特に関西勢が軒並み顔を出している。中国勢も目立つ。列島の南端でもタマネギが強い。

大根でも面白い結果が出た。25%超の地域は鳥取25%、島根43%、岡山27%、広島27%、山口33%、徳島57%、香川81%、愛媛33%、鹿児島25%。圧倒的に中四国の文化である。今後、すき焼きに大根を入れる人を見掛けたら中四国出身の人ではないかとの疑いが浮上することになる。香川県人の疑いが最も濃厚である。

麩はどうだろうか。今度は半数以上が「入れる」と答えた地域。福井75%、滋賀85%、京都64%、大阪50%、兵庫58%、和歌山78%、鳥取50%、岡山65%、徳島57%、香川56%だった。関西、中四国を中心とした西日本型と判明したのである。

詳しくは詳細地図で確認していただきたい。

ご意見 鳥取県出身38歳です。私が食べて育ったすき焼きには「玉ねぎ」が入ります。「牛丼になってしまいませんか?」とのご指摘ですが、逆に私は「牛丼」を「すき焼きをご飯にのせたもの」と思っていました(思うことに決めていた)ので、初めて吉野家の牛丼を食べたときは具材の単調さにとても驚きました(玉井さん)

今回調査でも鳥取が「タマネギをすき焼きに入れる人が多い県」との結果が出ていますが、数字だけからでは見えない「食卓の情景」が浮かびます。これからは「すき焼き丼」を召し上がることをお勧めします。難点は吉野家にも松屋にも神戸らんぷ亭にもないということと、ちょっと値段が高いことです。私は家ですき焼きをした翌朝に玉井さんのおっしゃる牛丼を満喫しております。

ご意見 高知らしさは家庭によって青ネギの代わりにニンニクの葉っぱを入れるところでしょうか(恒石さん)

やっぱり意表を突く具が出てきました。ニンニクの葉っぱなんて想像もしていなかったのでVOTEの項目に入っていません。失礼しました。

ご意見 九州出身です。私の実家では必ずニンジンと大根、たまーにジャガイモも。ネギが足りなくなるとタマネギも投入(「やっぱり仮名にしてください」さん)

ニンジンにジャガイモにタマネギですか? これに肉が入っているわけですから、まるでカレーですね。ひょっとして煮汁が黄色かったとか……。ニンジン入りすき焼きは超レアものだと思います。

ご意見 東京生まれ東京育ちの40代兼業主婦です。昔は秋にはマツタケも入れていましたが、大人になってからはマツタケは高価なのでめったに登場しません。マツタケの代わりにシメジ、マイタケなどのキノコ類を入れるようになりました。ことにこの1、2年、歯ごたえがマツタケに似ているエリンギが我が家のすき焼きにmustな素材になりました(Mari Ishiiさん)

エリンギ入りすき焼きは今のところまだレアな物件でしょうが、健康番組なんかで取り上げられる機会が増えているのでそこそこの存在にはなるかもしれません。私はかつてエリンギの健康パワーみたいな雑誌の特集を読み、その晩さっそく買って帰りました。食べました。でもそれで安心してしまって、以来すっかりエリンギのことを忘れていました。みのもんたさんの番組に健康にいい食べ物として紹介された食品は、その日の売上が跳ね上がるそうですが、跳ね上がったままではなくて、いつの間にか元にもどってしまうという話を聞きました。みんな私と一緒だなって安心しました。

ご意見 出身は大阪。今里です。子供のころ我が家では糸こんにゃくも入れていましたが、ちぎりこんにゃくも入れました。肉の味がしみて歯ざわりもこりこりしておいしかった。煮ているうちに煮汁がしみて肉色になってくるので、ひょっとしたら肉を多く見せるためのもどき?だったかも(東京在住の福井さん)

ちぎりこんにゃくが煮汁を吸って肉色になるとは知りませんでした。「もどき」ではないかというご意見ですが、私は違うと思います。本物の肉は薄切りですが、ちぎったこんにゃくはかたまりです。カレーかシチューの牛肉にしか見えません。バレバレです。でもおいしそう。同姓同名の方かもしれませんが、ひょっとしてカンランシャの福井さん?

いくつかお答えしなければならないメールが来ている。「田舎は岡山ですが、私にとって『肉』というのは牛肉であり、豚肉は『豚』と表現します。『肉』と一言でいっても、それが牛をさすのか豚をさすのか日本各地様々なのでしょうね」(シンガポールのマーライオンさん)。「関東の人間が肉ジャガの肉は豚と言っていたので腰を抜かしたことがあります。肉の意味するところが地域によって違うことを再確認しました」(旦那が九州人の関西人さん)。「天かすと揚げ玉の呼び方が違うので調べてください」(名古屋Tさん)。

実は「焼き飯vsチャーハン」をやったときに紹介したNHK放送文化研究所の塩田雄大さんが「肉の呼び方」と「天かす・揚げ玉」問題をご存じである。ご存じでなくても調べてくださると思うのでお任せする。お礼は「焼酎の緑茶割りを飲めるだけ」である。

ご意見 香港(と広東省)ではカニかまにさんざん泣かされましたよ。なんか香港では和食のシンボルというか、料理を「日式」に変身させるアイテムの筆頭に、カニかまが位置づけられている感じでした。野菜サラダにサラミと黒オリーブをのせれば「イタリアンサラダだよーん」みたいなのです。そのカニかまがおいしければいいのですが「今回も匿名さん」がおっしゃるように、粉っぽくてまずいんですよーこれが。それがラーメンにも入っているし、鍋物にもするし、味噌汁にも入れる。カニかまだけがのった握りずしまでありました。(中略)匿名さんのご報告の場所がシドニーだという点から私は勝手に確信するんですけど、それ香港から持ち込まれてるだろう……と。香港からシドニーに移民した人は山のようにいますから(『香港・広州 菜遊記』の著者、日野みどりさん)

外務省が海外危険情報を出していますが、今後は「香港ではカニかまに注意してください」と書いてほしいと思います。何しろ水気を含むとリレーのバトンのように膨れる物件なのです。カニかまずしを3個食べたら胃の中にバトンを3本詰め込むことになるのですよ。死にますよ、私だったら。これが「日式」のシンボルとは驚きました。やめてくれー。

これから香港式カニかまを1個とか1本とか呼ぶのはやめて単位を「バトン」にしてはどうでしょうか。1バトン、2バトンなどと言うのです。「いやー、味噌汁にカニかまが2バトンも入ってて参ったよ」とか「寿司屋でカニかま8バトンも食べたけど、まだ生きてる」とか。

かれこれ20年前、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフに行ったときのことです。レストランの前のワゴンでシュリンプカクテルを買い、新鮮なムキエビにケチャップをつけて食べました。うまかった。見るとワゴンではクラブカクテルも売っています。これも買いました。食べました。思わず笑みがこぼれました。

カニかまだったのです。

周りの非日本人たちは「うめー」とか「さすが安いな」みたいなことを多分いいながら満足そうに食べていました。日本人の私は「あっはっは」。しかしカニかまを本物のカニとして売っていたレストランも、考えてみるとひでえなあであります。このカニかまが本物として通用したのはまだそんな日本製コピー食品の存在を米国人が知らなかったからでありましたし、歯触り、味とも実によくできていたからでしょう。香港式カニかまの恐るべき実態を知って、つい思い出したことでした。

ご意見 かつて近所に〇イカル系のスーパーがありました。買った商品を温める電子レンジがあって便利でした。ある日、メニューごとの温め時間を記した一覧をよく見ると「カレー×分」の下に「ツチュー×分」とあるのを発見。結構脱力しました。製造元はかの発明王の興した会社だったと記憶しています(もう出番はないのかと思っていた久保さん)

温め時間表をジーイーっと見てたら発見したんですね。私は国内でもよく似た問題があると思っています。「コヒー・コラー問題」と言われるものです。喫茶店のメニューでときどきあるでしょ。「コヒー300円」とか「コラー250円」「コーラー350円」とか。いいですねえ。なんか好きです。「ツチュー」もかわいい。でも裏返せば日本国内に氾濫している外国語にもトンデモ系がいっぱいあるに違いないということです。日野さんの著書でも日本でいう「飲茶」は本来の意味とずれていると指摘されています。

本題に戻ろう。NHKの塩田さんからはメールとともに「現代日本語方言大辞典」の「すきやき」の項を送っていただいた。「すきやき」をどう呼ぶかがよくわかる。各地の古老に尋ねたものなので「今」ではなく「過去」を記述しているが読んでいて面白い。北海道・礼文は「シキヤギ」、青森「シギヤギ」、八戸「スチヤギ」、岩手「スギヤギ」、京都「スッキャキ」、鹿児島「スッキャッ」、長浜(沖縄県伊良部町)「シュキヤキ」。この辞典には料理の内容も簡単に書いてあって長浜のところには「牛肉や山羊肉、ねぎ・豆腐を砂糖・しょうゆなどで煮付けた料理」とある。

このGWに沖縄放浪の旅に出る予定の福島のテレジアさんは伊良部島の「うずまきパン(サンド)」を狙っているそうだ。どうせ伊良部に行くのならこの山羊のすき焼きにも挑戦してほしい。人生は挑戦だ。山羊のすき焼きだ。

沖縄といえば前回、チャブニチュード5の久留米ラーメンを紹介した際「薩摩揚げやモヤシ入れるなー。沖縄そばじゃないんだぞ」というようなことを書いたら吉濱さんから「沖縄そばには薩摩揚げもモヤシもはいりません。一番ポピュラーな具は豚ばら肉の煮たものにかまぼこ(といいつつ穴のない竹輪のような物体)を薄切りにしたものです」というメールをいただいた。

そうでしたか。すいませんでした。でも薩摩揚げだったなあ、あれは。そこまで手を抜いていたとは。チャブニチュード6を作らなくてはならない。

兵庫県高砂市45歳男性さん。テーマと関係ないので紹介できませんでしたが、魚の目玉をめぐる友人たちとの会話、爆笑しました。鍋の残りにご飯を入れて食べるのはいいですが、そこにウスターソースをぶち込むのはいかがなものでしょうか。

久留米情報が2件届いた。次回あたりに紹介する。ちょっと連絡をとりたいところがあるので。

さて、次回は「納豆」をやることにした。納豆は以前ほどではないが、好き嫌いがはっきりした食べ物である。私が大阪で勤務していたとき、アシスタントの女性は「納豆を食べる人とは結婚しない」と公言していたほどである(その後、結婚したけれど、彼はたしか納豆を食べるのでないか) 。従って納豆の食べ方を聞くと食べない人、嫌いな人は参加できない。そこで「納豆好き嫌い調査」にしようと思う。とっても好き、少し好き、普通、ちょっと苦手、大嫌いだーの5段階に分け、数値化しようと考えている。

サブテーマは「納豆を食べるとき砂糖を入れるか」。「いや、ソースに決めている」とか「マヨでしょ」という人はメールでどうぞ。調査の焦点は砂糖である。

今日の昼飯は「サバの味噌煮」だった。そういえば、大阪では味噌煮は少なくてほとんどが醤油煮だった。これって東西比較が可能なのだろうか。そのうちやるかも。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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