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蒸し物 ゆでの数倍の強火力で一気に加熱、素材生かす

京都「木乃婦」3代目若主人 高橋拓児

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NIKKEI STYLE

蒸し物とは読んで字のごとく、食材を蒸したものです。ただ食材を蒸気で加熱するだけで、ほかの「焼く」「揚げる」といった調理法に比べシンプルなもののように思われるかもしれませんが、この「蒸す」という調理法は今までにご紹介したものとはちょっと違った、非常に面白い調理法です。

食材は「蒸す」べきか「茹でる」べきか

まず、基本的には蒸し物は、ご存じの通り蒸気で加熱し火を通す調理法によって作られます。蒸す際には当然水を張りますから、100℃以上の環境下で気体となった水=水蒸気による加熱調理が、いわゆる日常的に行う「蒸す」調理ということになります。

さて、ここで質問です。蒸すのと茹でるのとでは、どちらが早く火が通るでしょうか。

答えは「蒸す」です。

蒸すとは、食材を水蒸気によって加熱する調理法です。この水蒸気は食材に触れて温度が下がり、水に戻る瞬間(これを凝縮と言います)、保有している熱をまわりに一気に放出します。放出される熱の量を凝縮後の温水がもつ熱の量と比較すると、その差は実に2~5倍程度にもなるそうです。この熱が一瞬のうちに放出され、食材に伝わるのです。

食材を煮たり湯がいたりする際には、お湯の熱が直接、じわじわと食材に伝わっていくのですが、強い蒸気で蒸すと熱が一気に、そして大量に食材に伝わり、より強い加熱となります。茹でる際はお湯に食材を入れるといったん湯の温度が下がりますので、蒸す方にさらに利がありますね。したがって、蒸す方が早く火を通すことができるのです。

蒸し物に向く食材、向かない食材

蒸すという調理法は蒸気による加熱であるため、湿潤な状態で食材を乾燥させずに調理でき、調理後の食材はふっくら、しっとりに仕上がることが多くなります。温度は沸点(通常は100℃)以上に上がらず、一定に保つのも容易で形も崩さないため、素材を生かすことのできる料理です。

さらに、茹でる場合のように湯にうま味や水溶性の栄養素が溶け出さず、また炒める場合のように油を必要とせず低カロリーですむため、蒸し加熱による料理はあっさりとした料理に仕上がる傾向にあります。

その一方で、香りに対しては気をつけなければなりません。よい香りは密閉されることで一層引き立ちますが、生臭いものは蒸すとそれが強まりますので、その場合は湯がく方がよいということになります。

また、調理途中に味つけができないため、あらかじめ食材に下味をつけておくか、調理後に日本料理ではあんかけにしたり、西洋料理ではソースをつけて食べることが多いです。

ゆえに日本料理における蒸し物の多くは、蒸しあげるのはあくまで一次処理、二次処理として何らかの形で味つけをし、完成させる調理法なのです。

なぜ蒸し物はアジアで普及し、ヨーロッパでは育たなかったのか

蒸し料理はアジアのものに多く、日本、中国、台湾、ベトナムなどでは古くから欠かせないものです。フレンチでは「ヴァプール」と呼び、調理として取り入れたのは1970年代のヌーベル・キュイジーヌ以降、ごく最近になってからのことです。素材の水分で蒸す「エテュベ」や「ブレゼ」、少量のワインやだしなどで蒸すように煮る「ポッシェ」は古くからありますが、スチーム(蒸気)をあてて加熱するヴァプールは、「世界中のよいものはすぐ取り入れよう」と考えたフランスの料理人たちが、各地で学んできた調理法のひとつなのでしょう。

アジアでこの調理法が普及し、西洋では一般的ではなかった理由は、蒸す調理法が鶏肉や魚介類など淡白な味わいのものを調理するのに向き、臭みの強い肉や、アクの強い野菜類には向かないことが理由ではないかと考えられます。西洋では牛肉や豚肉などが主食ですのでその可能性は高いと思います。

一方、シュウマイや包子(中華まん)などを生み出し、たくさんの蒸し料理をもつ中国では水が硬水のため生では飲めませんし、水自体が濁っている地域もありますので、蒸し料理が発達したと考えられます。炒め料理と同じく加熱による殺菌効果を狙っているのです。

[「10品でわかる日本料理」(日本経済新聞出版社)から抜粋]

高橋拓児(たかはし・たくじ)

1968年京都生まれ。大学卒業後5年間「東京吉兆」での修業の後、実家である京都の老舗料理店「木乃婦(きのぶ)」の3代目若主人に。シニアソムリエ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。

木乃婦HP=http://www.kinobu.co.jp/

10品でわかる日本料理

著者 : 高橋拓児
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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