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焚合 決め手はだし、味と香りの成分をすべて取り出す

京都「木乃婦」3代目若主人 高橋拓児

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NIKKEI STYLE

焚合とは、いわゆる煮物のことです。「煮る」というのは、日本料理にとって必要不可欠な調理法です。大根や小芋を焚いたり、鯛や鰈を煮つけにしたり、豚肉を角煮にしたりと、野菜・魚介類・肉類を問わず、煮物は日本料理の調理法の中核です。また、造りのような生食は生命にとって比較的危険のある食し方ですが、煮物は加熱殺菌をすることで食材を確実に安全なものにすることができます。

では、煮物はどのように作るのでしょう。

御椀のだしは「引く」もの、煮物のだしは「取る」もの

しかし、ここには大きな誤りがあります。煮物はただの水ではなく、ほとんどの場合はだしを使います。これからが重要なポイントです。よく聞いてください。

御椀の章では、日本料理における御椀のだしは「引く」といいました。ですが、煮物のだしは「引く」ではなく、「取る」といいます。これは、御椀と煮物の決定的な差です。

具体的に申しますと、御椀のだしは一番だしと言い、昆布と鰹節の透き通ったうま味成分だけを引き抜き、雑味のない味を限界まで追求した抽出法によるものです。いかに上品さ・上質さを引き出すかが鍵です。

かたや煮物のだしは二番だしと言い、一番だしで使用済みの昆布と鰹節を水の入った鍋に入れ、そこにさらに鰹節を加え(追い鰹)、味を出しきるまで弱火にかけて、うま味成分を煮てゆっくり取り出すという抽出法によるものです。

当然、一番だしは調味料で味をつける前から深くまろやかな味わいになりますし、二番だしはそれ自体の味は薄いですが、食材が煮詰められていくと、雑味がある分、味の骨格がしっかりしたものになります。

つまり、御椀と煮物のだしは「味と香りの成分の必要なものだけを引き出す」ものと「残った味と香りの成分をすべて取り出す」ものの違いです。煮物とは、水・煮出しただし・食材・調味料を使って煮たものということになり、必然的に調味料の使用量が、御椀よりかなり多くなります。この調味料の分量や煮詰める時の加減が、料理人の腕と言えるでしょう。

日本における野菜の歴史は、野菜の輸入と品種改良の歴史

日本における煮物の歴史は古く、縄文時代にまでさかのぼります。この頃すでに土器に水と魚、塩、野菜等を入れて加熱する調理が行われており、煮物の条件である「水、煮出しただし、調味料、食材」がすべてそろっていました。

この煮る文化は時代が進むにつれてどう進化していったのでしょうか。

実は、このことについての資料はあまりなく、いろいろな文献を見てもはっきりしないのが現状です。そういう時は文献を積みあげるよりも、実際使われていた煮物の材料に焦点を当てて、その当時の人々の行動の必然性から探っていった方が確実でしょう。美味しい野菜があって、そしてその栽培法が確立できたならば、必然的に鍋に入れて煮る文化も発達するはずです。

まずは、日本の野菜の歴史を見てみましょう。

野菜という言葉は、本来は今でいう山菜のことで、日本原種のもののことを指しました。縄文時代には、蕗・芹・うど・山椒・山葵・自然薯・みつばなどしか自生しておらず、その他は木の実やきのこ類だけでした。要は野原の菜物です。

ということは、これら以外は輸入され、畑で栽培されて広まった外国品種の園菜なのです。皆さんがよく食べるなす・きゅうり・にんじんなども園菜です。古墳時代になってやっと、園菜である生姜、大根が中国から入ってはきましたが、実際の生姜の栽培は奈良時代からで、大根にいたっては室町時代以降であり、それらが普及するまでには年月がかかりました。さらに例を挙げると、なすとかぶは奈良時代で、ねぎも奈良時代に入ってきて平安時代にようやく栽培されるようになりました。

不思議なことに鎌倉時代に新しく輸入された野菜については、記述がありません。これはそのまま捉えるのならば、新しい種類の園菜が入ってこなかったということです。一方で、それまでの園菜の品種改良は行われ、日本の風土と日本人の舌に合うように調整されていったことでしょう。それらが長い年月をかけた品種改良によって、園菜から野菜へと変わっていったと推測できます。

ちなみに、園菜の歴史を申しますと、戦国時代ににんじん・きゅうり・かぼちゃが栽培されるようになり、江戸時代に入るといんげん豆・れんこん・ごぼう・キャベツ・さつまいも・馬鈴薯・春菊・えんどう豆・たけのこ・ほうれん草・トマトなど多くの野菜が栽培されるようになりました。たまねぎ・オクラ・とうもろこしは明治時代で、白菜・ピーマンは何と昭和からです。白菜などは相当前から糠漬けなどにしていそうなものですが、驚きです。

現在、野菜の種類は160種を超えるまでになりました。なすだけで1種類と数えていますが、より詳しく見れば、なすと一言で言えども千両なす・加茂なす・長なす・小なすなどさまざまな種類があります。日本における野菜の多様性は世界でも類を見ません。今、私たちは先代までの努力の恩恵を受けているのです。

すこし脱線しましたが話を戻しましょう。日本における野菜の歴史で重要なことは、ひとつは鎌倉時代に新しい種類の野菜がほとんど輸入されていないこと、もうひとつは室町時代の後期以降、続々と新しい種類の野菜が栽培されてきたことです。

[「10品でわかる日本料理」(日本経済新聞出版社)から抜粋]

高橋拓児(たかはし・たくじ)

1968年京都生まれ。大学卒業後5年間「東京吉兆」での修業の後、実家である京都の老舗料理店「木乃婦(きのぶ)」の3代目若主人に。シニアソムリエ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。

木乃婦HP=http://www.kinobu.co.jp/

10品でわかる日本料理

著者 : 高橋拓児
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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