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赤飯、茶碗蒸し、卵焼の甘さ際立つ北海道・青森・秋田日本の甘味処(4)

PIXTA
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「日本の甘味処」調査の速報値がでた。予想通りでもあり、意外でもあった。

予想通りというのは、みなさん先刻ご承知のように「甘納豆赤飯」は戦後の北海道生まれである。従って北海道からのVOTEの84%が「こっちの赤飯は甘いぞ」という回答だったことにさほどの驚きはない。青森も71%が「甘い」であった。これも予想の範囲。青函トンネルでむすばれたこの道県は「甘納豆赤飯」の絆でも結ばれていたのである。

青森の隣の秋田は「甘い」と「甘くない」が半々。その隣の岩手、山形となるに従って「甘い」が徐々に減って……いかないのである。岩手こそ「甘い」が22%いるものの山形はゼロ。福島もゼロ。つまり「甘い赤飯」は北海道と青森、強いていうと秋田固有の食べ物であって、そこから西にはまるで断絶したように果てしもなく「甘くない」地帯が広がっているのである。

ところがである。山梨に至って突如として「甘い」が「甘くない」を上回る。長野も23%が「甘い」と答えている。日本アルプス周辺は甘い赤飯が存在する地方なのである。そして西に向かって再び「甘くない」地帯が沖縄まで延々と続く。

これをどう考えるべきだろうか。アルプス甘味地帯は北海道・青森甘味地帯との人的・文化的交流から発生した飛び地なのだろうか。それともアルプス甘味は北海道甘味とは別のルーツを持っているのだろうか。どなたかご存じの方はお教え願いたい。

「茶わん蒸し」の速報値をみよう。まず「砂糖を入れる」という地域。北海道26%、青森35%、秋田25%。ここでも甘い赤飯トリオが上位を占める。つまり、甘い赤飯と砂糖入り茶わん蒸しはペアなのである。

全国的には砂糖を入れない茶わん蒸しが圧倒的なのだが、ここでも飛び地のような県がある。新潟である。33%が砂糖入りと答えている。そして南の鹿児島でも25%、沖縄で14%が「ジャパニーズ・スイート・プリン」を食べているのである。鹿児島や沖縄では黒砂糖をつかうのだろうか。うー、食べたいような食べたくないような。

三林京子さんも「ああ書けば、こう食う」で「栗きんとん入りの茶わん蒸しは茶わん蒸しではなく、マロンプリン」と断じながら「甘い茶わん蒸しのおいしい店があったら行ってみたい」と書いている。自分の個人史にはない未知の味覚にであうと軽い反発とともに興味もわくものである。食べたいような、食べたくないようなという気分になったら、まず食べてみることだろう。勇気をだして。

茶わん蒸しに栗の甘露煮を入れるかどうかという問題。入れる地域のトップは秋田で75%、青森が57%、北海道は55%。50%オーバーはこの3道県だけだった。やっぱり甘味トリオの勝利である。

甘納豆赤飯、砂糖入り茶わん蒸し、茶わん蒸しの栗の甘露煮の三種競技において、この3道県は金メダルを1個ずつ仲良く分け合ったのである。見事な結果といわなければならない。こんなにはっきり甘味処が浮かび上がったのであるから、今回は大成功といえるだろう。みなさんのご協力に多謝。

「卵焼き」(だし巻きおよび厚焼き卵のような形状をした卵料理)の甘味度を北からみていくと、山形を除いてずっと「甘い」が「甘くない」を上回っている地帯が続く。石川が半々、福井で甘くない方が優勢だが、岐阜、静岡は甘い方が強い。ところが愛知で半々になったあと、関西にはいると俄然「甘くない」優勢地帯に入る。滋賀「甘くない」77%、京都「甘くない」95%、大阪「甘くない」82%、兵庫「甘くない」71%、奈良「甘くない」78%。圧倒的である。「卵はだしのうまみを楽しむためのつなぎに過ぎない」と豪語する関西人は、だしの味を消す甘みを極力排除しているようである。

しかし、和歌山の数字をみて首をひねった。「ソースでてんぷら」の項で強力な関西度を示したあの和歌山がなんと全員「甘いぞ」と答えているではないか。100%である。あのときは「和歌山こそ純粋な関西人が住んでいるところかもしれない」などという観測が流れたが、この数値をみる限りコトはそう簡単ではないらしい。世の中は難しいのである。

私が書いているのは一読して感じたことであって、それぞれの立場でご覧になればまた違う列島の姿が見えてくるかもしれない。

さて、今週いただいたメールを紹介しよう。

台湾ラーメン
ご意見 台湾ラーメンは名古屋を出て周辺にも進出(滲出?)し始めているようです。京都、銀座、恵比寿にもあります。東京の2店を出しているZettonという会社は名古屋資本のようです。
「甘味」という点では、私なぞは鹿児島を中心とした「甘い醤油」が気になります。社内で尋ねたところ、福岡の醤油も関東のものより甘いという意見(福岡出身者)がありました。これも真偽のほどが定かではないんですが、宮崎(?)の人が刺し身を食べる際に醤油にワサビを加えるみたいに砂糖を入れるということをどこかで耳にしました。野瀬さんも東京で刺し身を食べるとき砂糖を持参するんですか(NHKの塩田さん)
九州の刺身には甘い醤油?

銀座にでも台湾ラーメンを見に行きましょうか。私は見るだけで結構です。かつて名古屋の台湾ラーメン発祥の店で実食し、あまりの辛さに全身から汗が噴き出しシャワーを浴びたようになる「汗シャワー現象」を初めて体験しました。冬だったので外に出たら湯冷めならぬ汗冷めで風邪をひきそうになったものです。

さて九州の醤油の件ですが、はっきり言って甘いです。今でも田舎に帰って醤油味に接すると「甘いなあ、やっぱり」と思いますが、生まれたころから親しんだ味ですから、甘さの中にしっかりと大豆のアミノ酸を感じ「うまいなあ」と思います。刺し身や冷ややっこは「これでなくちゃ」とうなずきながら食べます。

馬刺しにはやっぱり甘い醤油!

でも、砂糖は入れません。刺し身に砂糖を振りかけたりもしません。してる人をみたら離れた席に移ると思います。宮崎の人がそうするかどうかも知りません。もしそうするなら、宮崎県人への認識を変えようと思います。

これまでの宮崎県人観は「九州で一番釜あげうどんを食べる人たち」「特異的にブランデーを好む人たち」だったのですが、これからは「砂糖醤油で刺し身を食べる人たち」という新たな一章が加わります。でも、本当にそうなのか。宮崎県人のみなさん、教えてください。

ササゲの入った赤飯=PIXTA
ご意見 赤飯に小豆を入れるとのことですが、「ササゲ」を入れるはずです。普通の小豆では煮崩れしてしまいます。「赤飯にはササゲ」。私は豆好き人間です。正しく豆を広めましょう(赤飯に小豆マッターさん)

ちょうど、別のことで「ササゲ」について調べているところでした。平凡社世界大百科事典の「ササゲ」の項に以下のような説明が載っています。「風味に乏しいが種皮が破れにくいので、慶事の赤飯にはアズキ代わりに使われることも多い」。

ササゲ=PIXTA

確かに小豆ではなくササゲで赤飯を炊く地域があるようです。が、今回のVOTEでは「小豆」という回答が圧倒的でした。小豆とササゲを特に区別せず、「少なくとも甘納豆ではない」という意味で「小豆」と答えた方もいたかもしれません。私たちはとりあえず「ササゲが赤飯に使われることも珍しくない」ということを学んだわけです。メールありがとうございました。

ちなみにササゲはインゲン豆のように勾玉型に湾曲していて、そのくぼみのところが黒くなっています。カウピーのほかに「ブラック・アイ・ビーン」とも呼ばれます。

やきそば弁当

それから複数の方から同じ内容のメールをいただいた。(1)東洋水産の「やきそば弁当」というカップ麺は北海道でしか売っていない。粉末の「中華スープの素」がついていて、捨てられる運命の湯切りのお湯でスープが作れる(2)ペヤングのソース焼きそばは北海道では売っていない。

どちらもぜんぜん知らなかったが、湯切りのお湯が再利用できるなんてすてきなアイデアだ。

ぺヤング 激辛

ところで札幌の光塩学園から「甘納豆赤飯」の生みの親、南部明子氏の著書を送っていただいた。『北の食卓』(北海道新聞社刊、著者名は南部あき子)。その中にはもちろん「甘納豆入り炊き込み赤飯」のレシピが収録されているが「甘納豆は手早く洗って水きりをする」と書いてある。一応洗うわけだから、表面の砂糖は少しは流れてしまうだろう。元祖の「甘納豆赤飯」は私たちが思っているほど甘くなかったかもしれない。

すき焼き

さて、今回はこれで終わり。というのも急に出張になってしまい、その飛行機の時間が迫っている。出かけなければならない。取り急ぎ次回のテーマのご紹介。

「すき焼き」である。しかも、すき焼きの具全国分布調査なのである。「そんなもの牛肉に白ネギ、焼き豆腐、あとしらたきに椎茸てなところじゃないの?」などと考えていると「白菜を忘れてるぞー」という声が聞こえたと思ったら「白菜なんて邪道だー」と誰かが叫び「豚肉でしょ」と囁く人があり「あれー、大根入れないの」という疑問があがり「紅白かまぼこ無視してる」と不満のご仁があるかと思えば「麩は?」と口ごもる人もあるだろうし「ささがきゴボウはどうした」と口をとがらせるお父さんも現れるだろう。

りゅうきゅう

冬、すき焼きのお世話になった人は多いと思う。さあ、胸に手を当ててあなたが食べているすき焼きの具の定番を思い出してほしい。具の種類は多い。従って次回の調査ははちゃめちゃになる可能性もある。それを覚悟の上で問う。「あなたはどんなすき焼きを食っているか」

出張先は大分である。夜は「りゅうきゅう」を食べるつもりだ。「りゅうきゅう」とは、塩田さん、サバやアジの切り身にあの甘い九州の醤油をぶっかけ、ゴマを散らしたものですよ。博多の「ゴナサバ」似のあれですよ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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