トコロ天は酢醤油に青海苔、からし? それとも黒蜜?
日本の甘味処(1)
先週の木曜日に歯医者に行った。
歯医者さんといえば、ずっと昔にこんなジョークを聞いた覚えがある。
「歯医者さんがスポーツやると相当執念深くなるんだって」
「ほう、そりゃまたどうして?」
「一度負けてもハイシャ復活戦でシカイシするんだ」
失礼しました。私自身、どうしてこんなつまらないことばかり覚えているんだろうと思うことがないでもないが、覚えているものは仕方ないのである。
歯医者さんの話から入ったからというわけではないが、今月のテーマは「日本の甘味処」である。その前に、これまでのテーマに関して送られてきたメールを若干紹介する。
全人生を愛知県で送ってきたということは、要するに全力で愛知県人してる人。じゃあ、やっぱりカゴメでしょうね。コーミもいいような気がしますが、やっぱりカゴメですか。ところで、ソースの調査は去年終わってしまいました。ごめんなさい。甘味処の調査に参加してくださいね。
愛知県を中心に「濃い口」というのもあります。A1ソースはどっちに入るんでしょうか。でも、すいませんソースは終わっちゃったんです。地域の好みも調べようとしたんですが、失敗したんです。確か「ソースでてんぷら(4)」に経緯を書いたと思いますので、ご参照ください。そして西山さんも甘味処の調査に参加してください。
前回の内容に関するメールが引きも切らない。
「ドクターペッパー」がくるのかと思ったら「7UP」できましたか。
中学生のとき、当時は珍しかった帰国子女が転校してきて話をしていたら「セヴナップ」という音を発しました。どんな意味か聞くのが恥ずかしくてわかったような顔をしていました。それが「セブンアップ」と結びついたのは、ずっと後のことでした。
後藤さんもなにしろ米国在住ですから、メールを書きながら心の中で「セヴナップ」と発音してたんでしょうね。なんかうらやましい。
この店はいったいどういうルートを使ってコーラの原液と思われるものを入手したんでしょうか。それより、いかなる意図があってこのようなものを商品にしたのでしょうか。そもそも、うまいものなのでしょうか。売れているんでしょうか。誰が飲むんでしょうか。うわー。疑問がいっぱい。
辛くなければ食べたいものですが、辛くないチゲなんて形容矛盾でしょう。覚悟して食べますか。
ところで、韓国でラーメンといえば基本的にインスタントラーメンなんですよね。日本のラーメンがご当地とかご当人とか美味求真の対象になっているのとは対照的に、韓国の人々はラーメンにそれほどの関心を示していません。というより、日本の国民的ラーメンブームこそ、世界的には極めて特異な現象ではないかと思っています。
なにしろ、ラーメンみたいな単一の料理が毎週のようにテレビ番組になっている国はないでしょう。私はラーメンの好き嫌いは別にして、この現象を注意深く見守っておるところです。
バナナにソースとマヨネーズをかけてご飯のおかずにすることの是非については、今度飲みながらじっくり議論しましょう。結論は10秒以内に出るとは思いますが。
ホットコーラ問題の提起者Martinさんです。甘口辛口の区別があったなんて初耳です。うちのカミサンも「なんか聞いたことある」と言いました。
初耳は確認する。それが新聞記者の悲しい性(さが)です。さっそく日本コカ・コーラに聞きました。ペプシについても調べました。その結果は……書けません。書く勇気がありません。Martinさん、青春の思い出を大切にしてくださいね。
甘味情報に関するメールの紹介に移ろう。最初は「こういう投書って、小学校6年生以来なのでとってもドキドキしています」といいつつも米国からメールを送って下さった方のもの。ドキがムネムネって英語でどう言うんだろう。言わないか。でも、そんなに緊張しないでも大丈夫。怖いことなんかなにもないのである。
これってほとんど小倉トーストですね。吉田氏は鎌倉の出身のようですから、名古屋直伝小倉トーストとの接点は不明です。皆さんの中で「あんバタ」の正体をご存じの方はお知らせください。
こういうものには大いにひっかかるものを感じていただきたいと思います。でも邪道ってときどき凄く魅力的なことってありますよね。昔はやった歌で「ジャドー・オブ・ヨー・スマイル」というのがありました。あっ、あれは「シャドー」か。
メールの最後に「このコーナー、毎週たいへんな作業と思いますが、頑張ってください」という温かい言葉が添えられていた。その通り、毎週大変なのである。私はテーマを考え、いただいたメールを読み、ああでもないこうでもないと勝手なことを書いていれば済むのだが、レイアウトしたりVOTEを集計し地図に落としたりといった作業を担当しているセクションの連中は週末が近づくと点滴を打ちながらの頑張りになるのである。そのセクションの親方が私の同期なのだが、彼とは時々一緒に点滴を打ちに居酒屋に行ったりする。「口から点滴」ってとってもおいしい。
このメールが気になったのは内容の面白さのほかに、「!」が多かったからです。一瞬、三林京子さんの「ああ書けば、こう食う」が迷い込んできたのかと思いました。
関西のトコロ天問題ならやっぱり三林さんに答えてもらうのが一番でしょう。
ところで今村さん、これを機会に「時折り」じゃなくて「いつも」読んでくださいね。運動もダイエットも「時折り」では効果薄。「いつも」が大切だと思います。
読者の情報って凄いですね。かなり具体的なことがわかってきました。阿倍さん、K短大のフルネームを教えてください。それと、講習会が開かれた時期がわかるとありがたいです。
こういうことはだいたい地元紙の北海道新聞あたりで以前に企画ものにしているんじゃないかと思います。もし道新にお勤めの方で、こっそりこのコラムを読んでいる方がいらっしゃったら、こっそり教えてください。秘密にしておきますから。
今回は触れる余裕がないが名古屋情報が相当集まっている。「ちょっと待ってくれメニュー」に関するものもいただいた。次回、紹介したい。
さて「日本の甘味処」調査の項目が決まった。流れからして当然「赤飯が甘い地帯はどこか」ということになる。北海道と青森は真っ赤っか当確だろうが、果たしてこの2道県だけだろうか。私は意外なところに飛び地のように広がっている気がする。以前紹介した徳島のように。
もう一点はどうするか。茶わん蒸しか。でも茶わん蒸しだと甘納豆赤飯地帯と重なってしまうような予感を否定できない。否定できないでいたら弊社社員某からメールがきた。
「野瀬さんは茶わん蒸しに栗の甘露煮が入るのに驚かれていましたが、山口県美祢市の実家でも入っていましたよ」という文章に続いて茶わん蒸し問題に関するご近所さんへの聴き取り調査の結果が示されていた。
「大阪生まれ、イギリスにちょっと在住の友人は甘露煮入れる派」「茨城生まれの先輩は博多あたりで栗の入った茶わん蒸しを見た」「神戸出身、神戸生まれの先輩は入れる派」などと、あっちこっちに入れる派がいるというのである。こうなっては仕方がない。茶わん蒸しもやる。栗の甘露煮なんかが入って甘い茶わん蒸しか、銀杏なんかが入って甘くない茶わん蒸しか。これが第二のテーマである。
そして「卵焼きに砂糖を入れる地帯・入れない地帯」も調べてみようと思う。関西の寿司屋で食べる卵焼きは甘くない「だし巻き」であり、東京の寿司屋で出てくる「厚焼き卵」はとっても甘い。家庭でも同じような違いがあるのではないか。そして「出し巻き」と「厚焼き卵」の境界線がどこかに存在するのではないか。そのことを明らかにしようと思うのである。
はて、我が家の卵焼きには砂糖が入っていたかな? そのことに思いを馳せていただきたい。
夕闇が迫ってきた。今夜あたり、あの親方と「口から点滴」でも打ちにいきますか。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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