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テレビや冷蔵庫の誕生とともに、焼き飯はチャーハンに

焼き飯vsチャーハン(2)

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NIKKEI STYLE

テーマが焼きミカンから焼き飯チャーハン問題に移ったら、メールの迫力が違う。文章の長さが違う。皆さん、よっぽど思い入れが深いようだ。

前回はNHKの先行調査の内容を詳述すると書いたけれど、メールを紹介したうえで、果たしてそこまで書けるだろうか、と思うほどいいメールばかりなのである。

ご意見 子供のころ「炒飯の素」(多分明治キンケイ製)という茶色の粉が袋に入ったものが台所に常備されていました。つまりご飯に混ぜて炒めるだけでできあがり、というやつでしたがこれは非常食というかおかずがない時の最終兵器みたいなもので、本当にタマネギ程度しか入っていませんでした。しかし、料理を作る主婦として、あるいはおかずがない食卓にならざるを得ない親としての悲しいプライドからか、母はそれを「チャーハン」と呼ぶことを良しとせず「焼き飯」と呼んでおりましたね。
 夢の超特急が東海道を走り、東京オリンピックが無事終わり、大阪万博が話題にのぼり始めるころ我が家もかなり裕福に(世間でいう普通に)なり、毎日おかずがある食卓が整えられるようになってからは、ちゃんとインスタントではなく味付けをしてタマゴやチャーシューも入ったモノが堂々と主食として(おかずだって何品か別にあるんだぞ! すごいだろ)登場するようになってからは、母もそれを「チャーハン」と呼ぶようになっておりました。そのとき確かに我が家の戦後は終わったのです。私にとって焼き飯とチャーハンの境界線は"貧しさ"であります(浜松出身で立川在住の鈴木さん)
ご意見 大阪出身の私の子供時代の思い出の一皿は「焼き飯」です。土曜日に、午前中だけの授業を終えて家に帰ると、母が手早く昼ご飯を作ってくれましたが、かなりの割合でメニューは「焼き飯」でした。
 具は卵、ネギもしくはタマネギ、ニンジン、ピーマン、ハムか焼き豚というところです。味付けは塩、コショウですが、最後に鍋肌に、ジュッ!と醤油をたらして香りづけするので醤油風味なのです。さらに母は、当時「味の素」を積極的に活用していたため、どことなく「味の素味」の印象が残っています。
 テレビで吉本新喜劇を観ながら「焼き飯」を食べ、午後からの長い自由時間を、何して遊ぼうか考えるという、至福の時にピッタリくるのが「焼き飯」なのです(新宿の35歳女性、小島さん)

どうですか、この二つの文章。いいですねえ。昔はみんな貧しかった。そんな中で精いっぱい子供を慈しむお母さんの姿が浮かんできます。

鈴木さんの「焼き飯とチャーハンの境界線は"貧しさ"であります」という言葉、私にもせつない実感がわいてきます。日本が豊かになってから生まれた人にはわからないかもしれませんが、昭和26年生まれの私なぞはジーンときます。

家庭の中で時間軸によって焼き飯からチャーハンと呼び方が変わっていったというのも大事な視点だと思います。小島さんは私たちよりだいぶ下の世代ですが、なんかじゃりんこチエみたいで、とっても可愛い。確かに焼き飯食べながら吉本って、いいかもしれません。

ご意見 茨城出身です。子供のころ(昭和30年代)、実家ではたしかに「焼き飯」と呼んでいましたが、今では同じものを「チャーハン」と呼んでいます。呼び方が変わったのは多分、我が家にテレビが入った昭和40年代初め。実家は相当な田舎であり、中華料理店などは一軒もないところでしたので、母親が「チャーハン」という言葉を知らずに「焼き飯」と呼んでいたのではないかと思います。その母親もテレビから「チャーハン」という言葉を覚えて使い始めたのでないかと想像しています(千葉県市川市の中村さん)

でも、中村さんも時間軸との関係で書いておられますね。しかもテレビというメディアの影響というのは重要だと思います。

「食べ物と言葉は同じように文化の乗り物である」と国立民族学博物館の石毛直道館長は言っています。その意味で、食べ物の中身は変わらないのに、言葉だけがある時期に変化したということですから、学問的にも面白いテーマでしょうね。

三林京子さんは「ああ書けば、こう食う」の中で「炒飯」と「チャーハン」という表記の仕方で分類している。なるほど、こういう考え方もアリだ。三林さんにとってカタカナのチャーハンは茶髪になった炒飯?

ご意見 出身の長崎県では「焼き飯」 が一般的でした。具は焼き豚ではなく刻んだかまぼこが入っていました(神奈川県の浦瀬さん)

そうそう、あっちはかまぼこが入るんですよね。

私の外食焼き飯初体験は小学校3、4年生のころの久留米。生まれて初めて店で食べる焼き飯をまじまじと見詰めた記憶があります。紅白のかまぼこが刻んで入れてあり、見た目も鮮やかでした。懐かしいなあ。タマネギも入っていたような気がします。なんだかとっても甘くて、醤油の香ばしさとともに味覚の記憶となっています。

ご意見現在は東京に住んでいますが出身は広島の26歳、女性です。焼き飯とチャーハンの違いはないように思います。命名する人が……(ごめんなさいちょっと中略)。書きながら考えがまとまってきました。焼き飯=ちょっと焦げていて全体に茶色っぽい。特に具が冷蔵庫に残っているものをむやみに入れた感じ。かまぼことかハムとか。チャーハン=上品な色をしている。具もグリーンピースとかエビとか卵とか。というふうに自分は信じてるような気がします(マリコさん)

26歳ですか。生まれたのはついこないだではないですか。私なんかだいぶ前に生まれたんだぞー。気がついたらテレビあったでしょ? 冷蔵庫あったでしょ? 洗濯機あったでしょ? 私なんか気がついたら何もなかったんだぞー。

父親が「冷蔵庫ばもろてきた」とうれしそうに大きな荷物を持ち込んだ日を覚えております。木製の箱でした。観音開きの戸がついておりました。開けると中に棚があって、そこに氷を入れるというのです。氷を入れました。しばらくすると冷たい空気が箱を満たしました。「凄かー」と感動しました。でもその冷蔵庫に無造作にかまぼこが放り込まれるということはありませんでした。

かまぼこというのは高価な食べ物で正月と祭、法事のときくらいしか食卓にのぼらなかったのです。ハレの食べ物でした。だから、焼き飯の中に入った紅白のかまぼこに感動したのです。豊かになって生まれた人がうらやましいんだぞー。

ちなみに母親は川に洗濯に行ってたんだぞー。父は山に柴苅りに行かず、自転車に乗って勤めに行っておりました。本当に母親は川で洗濯していたのです。近所のお母さんも一緒でした。井戸端会議ではなく川端会議。

テレビは東京オリンピックのときに我が家にやってきました。昭和39年のことでありました。そのうち「冷蔵庫やテレビがなかった時代を知っている世代」というのは現在の「戦前派」と同じくらいの意味を持つ日がくるかもしれません。

何だか自分の昔のことを書いていたら、若かった母親の顔が浮かんできて心が少しウルウルになってしまった。鈴木さんや小島さんのメールを読んだから余計にあのころの母親が懐かしくなったのだろうか。

ついでに若かった父親の顔も浮かんできた。貧しかったけど当時の父親には髪の毛が邪魔になるほどあった。それがいまは後頭部にわずかに残るのみになってしまった。わずかに残っているというのもそれはそれで邪魔かもしれないが。

ご意見 地球のガン細胞といわれるアメリカに住んでいます(笑)。こちらの日本食レストランではチャーハンです。焼き飯は見たことありません。実家は山形なのですが、やはりチャーハンです。でも醤油味の卵入りです。母が作るものは細かく切ったソーセージに卵、醤油だけの味付けで「炒めご飯」と呼んでいました(後藤さん)

醤油味の卵入りですか。醤油味の場合は卵なしでないと集計上困るんですけど。いえいえ困りません。中にはソース味というのも来ていますし、「焼き飯はオカカご飯を炒めたものです」(岡山の「たま」さん)という意見もあります。

後藤さんのほかにも醤油味の卵入りという回答はかなりあるんじゃないかと思います。数字をみて考えます。あまり少なければ無視しますから問題はありませんよ。でもお母さんは「炒めご飯」ですか。私は「ご飯炒め」です。奇遇ですね。

愛知県の22歳学生さんからテーマの提案を10個もいただいた。今後予定しているテーマもあるが、それにしても観察が鋭い。どう鋭いかを書くとこれからのテーマがわかってしまうので内証。

同じ愛知県関連では江戸川区の笹倉さんから「名古屋勤務時代に小倉トーストの存在を知り、本当にびっくりした」というメールをいただいた。この物件については「偏食アカデミー」で詳しく取り上げたことがある。小倉トーストというのはトーストにバターを塗りあんこを塗り塗りしたものである。

当アカデミーではビスケットに乾燥したあんこを挟んだ「小倉サンド」というお菓子の存在も明らかにした。隊員が名古屋の喫茶店で、あんこ、白玉入りコーヒーであるところの「小倉コーヒー」を体験し、世の中に対して「これは飲み物なのか食べ物なのか」という問いを鋭く発したのだった。

私はそれと前後して名古屋に向かい「味噌汁フロート」に挑戦していた。冷やした赤だし味噌汁にアイスクリームを浮かべ、上からアラザン(砂糖で作ったビーズのようなもの)を振りかけた物件だった。同じ店で茄子味噌炒めがけかき氷も食べたのだった。この店には「かき氷+ご飯+赤だし」という組み合わせの「かき氷定食」もあった。おかずがかき氷なのである。

でも、ここで名古屋の人はこんなものを食っていると思ってはならない。みんなその店の冗談メニューである。誤解しないでほしい。しかしながら、名古屋における小倉系は冗談ではない。「これは訓練ではない。実戦である」ってやつなのである。実際ポピュラー。

ここで気がついた。仙台の佐藤さんからのメールに「私の生まれ育った山形市の一隅では『卵が入った塩味』でありますが、その卵が砂糖入りでした」と書いてある。甘みがついたチャーハンということだろう。

東京から青森に越して3年になる「ゆう@青森」さんからは「青森の食に驚いています。茶わん蒸しが甘いのです。甘く煮た栗が入っています。お赤飯もスーパーで売っているものは甘いです。しかもお菓子売り場に売っています」というメールが寄せられた。

さらに小倉トーストにひっくり返った笹倉さんのメールの文末に「同じようなことが弘前でもありました。こちらは茶わん蒸しです。この話はまたの機会に」とある。これも甘い栗が入った茶わん蒸しのことだろう。「ひょっとしたらどうも東北は甘み地帯ではないか」という疑惑が渦巻いている。

徳島市で私は「お好み焼き豆入り」という食品サンプルを確認し、地元の人に内容を尋ねた。すると「甘く煮たお多福豆が入ったお好み焼き。こっちじゃ赤飯は甘納豆で作るし、雑煮の餅もあん入り」との答えだった。

赤飯の小豆が甘納豆ということではなく、甘く煮た小豆を使うという意味だろうが、それにしてもさすが和三盆の産地だけあって甘さを尊ぶようだ。似たような食の方言が東北にあるとしたら、実に面白いではないか。

「日本の甘味処を探る」。近いうちに当プロジェクトのテーマにしたいと思う。

ええーっと、以前「間違ってるよチャンポン」に関する情報をお願いしていたが、埼玉在住40歳さんから凄いのが来た。

ご意見 大学は沖縄だったのですが沖縄にもチャンポンが存在しました。それはご飯の上に大盛りの野菜炒めがのっている丼ものでした。いわゆるエセチャンポンとは別の、呼び名が同じで全く異なる料理です。初めて沖縄に来て入った食堂に「チャンポン」の文字を見つけたときのうれしさと、出てきた料理に落胆した記憶はいまでも脳裏に焼き付いております。

この方は長崎出身なのです。チャンポン発祥の地に生まれ、離乳食がチャンポンだったかもしれない人なのです。懐かしのチャンポン麺を頼んだつもりだったのに、出てきたのが中華丼似だったときの悲しみはよーくわかります。「おかーさーん」とか叫んで泣いたでしょ。でも、仕方がないことです。沖縄の人が悪いのではないのです。

食べ物は伝播の過程で概念変化が起きる。これは私の持論です。長崎のチャンポンが沖縄に伝わる過程で「麺類である」という概念が抜け落ち「野菜やなんかがいっぱいのっている食べ物」という概念だけが残ったと考えられます。同じことは全国至る所で見られる現象です。大阪での事例の一端は以前紹介した通りです。でも、沖縄のチャンポンがご飯ものって、私にとっては貴重な情報です。

400字詰め原稿用紙換算16枚の字数を超えた。そろそろ終わらなければならない。思った通りNHK調査については触れられなかった。調査にあたった塩田さんにスタンバッてもらっていたのに申し訳ない。次回は絶対やる。

自分流のチャーハンもしくは焼き飯のレシピをたくさん送っていただいたが、この紹介も機会を改めたい。

最後に「地球の肺」問題だが「アマゾンの森林で多くの酸素(光合成)を出してるからです」といったご教示をたくさんいただいた。私もそのことは知っていた。知ってはいたが「?」が残って消えなかった。

だって、熱帯雨林は酸素を作ってくれているけど、肺って酸素を消費している臓器。逆じゃない? と思っているのである。ブラジルは地球の空気清浄器とかならわかるけど……ってことで、また次回。

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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