旅から生まれた挑戦者(4) ツアー企画で月100万円
ハウステンボス社長 沢田秀雄氏
ドイツ出張の日本人を相手に夜の歓楽街を案内するナイトツアーを企画した。
留学先だったドイツのマインツの近隣に、欧州を代表するビジネス都市であるフランクフルトがありました。国際的な見本市が毎日のように開かれ、多くの日本人ビジネスマンが訪れていました。最初は日本人ビジネスマン向けに通訳のアルバイトをしていたのですが、そのうち「観光案内もしてほしい」という依頼を受けるようになりました。
ドイツ留学中は経済学を勉強したほか、株式投資にも力を入れた
フランクフルトには不当に高額な料金を請求する「ぼったくり」がありましたし、歓楽街も治安が良くない印象を持たれていました。出張中の日本人ビジネスマンは、息抜きで遊びたくても遊べません。
安心して観光したいという日本人ビジネスマンのニーズに応えれば、通訳のアルバイトよりも効率的に旅行資金を稼げるかもしれないと考えました。そこで、飲食と音楽ショーを楽しめる日本語通訳付きのナイトツアーを企画したのです。
1カ月で100万円以上を稼ぎ、ビジネスの魅力に目覚める。
ナイトツアーの価格は100マルクに設定しました。当時の日本円換算で1万円程度です。地元で人気のお店でドイツ料理を味わったり、ビアホールでドイツ民謡を楽しんだりすると120~130マルクはかかるのが普通でしたので、一般的な観光ツアーより2~3割安い。大人気となりました。
「安心できる」というのも人気の理由でした。日本人が宿泊する高級ホテルに案内パンフレットを置き、フロントのドイツ人からもツアーを薦めてもらうようにしました。高級ホテルのフロントのお墨付きがあれば、日本人も安心してツアーを予約します。もちろん、フロントには1人につきツアー料金の10%を紹介料として渡していました。
当時、ナイトツアーといっても案内はドイツ語が大半でしたので日本語ができる通訳はとても重宝されました。ビアホールでは楽団にチップを渡しておいて、日本人ツアー客を見ると日本の曲を演奏してもらいました。異国の地で突然、「上を向いて歩こう」のような日本の曲を聴くのはうれしいものです。ほとんどのお客さんがこのサプライズ演出を喜んでくれました。
私自身も含めて、ホテルのフロントも、飲食店も、日本人客もみんなが満足しました。全員がハッピーになれるビジネスが私の起点となりました。
ドイツでの生活も4年が過ぎていました。ドイツの大学は卒業が難しかったため、卒業は断念しました。ナイトツアーで稼いだお金は旅行費用になりましたが、それでも1000万円が手元に残りました。そのお金で日本でもみんなが幸せになれるビジネスを起業したいと考えました。ところが、ユーラシア大陸を横断して帰国する途中で、人生観を大きく変える出来事が起きるのです。