全国に点在する「まちがってるぞーチャンポン」
焼きミカン(2)
今年のお正月、私はただの1個もミカンは食べなかった。従って焼いたりもしなかった。
白状すると過去に焼きミカンの取材をし、記事にもし、はたまた現在こうして焼きミカン地図を作ろうとしているにもかかわらず現物を食べたことがないのである。今後も食べる意志はないのである。
ミカンを食べるとお腹を壊す。果汁100%のオレンジジュースを飲むと1分以内にトイレ直行というデリケートな体質の持ち主なので、ミカンを食べないのである。申し訳ない。
たくさんのメールをいただいた。引き続きおでんネタで楽しんでおられる方、チャンポンのおいしい店情報、調査依頼、そして焼きミカン情報と実にバラエティーに富んでいる。しかも海外在住の読者からいくつかメールが届いており、紙媒体とは違う反響に驚いているのである。それに内容が濃い。いろんな意味で。
「ついに発見」できてよかったですね。もちろん買ったんですよね。食べたんですよね。でも何も書いてないということは、発見しただけでしょうか。「めーっけ」で終わり?
北九州市にもあります。新井由己さんの「とことんおでん紀行」をめくると新井さんは門司のダイエーでギョウザ巻きを売っているのを確認し、小倉のみかげ通りと小文字通りが交差するところに出ている屋台で食べています。
それにしても、そうですかあテヘランですかあ。そっちじゃ、おでんて食べられないでしょうね。カップおでんとかフリーズドライおでんとかあるといいですね。お湯かけるだけで熱々おでんの出来上がりってやつ。あっ、これいいかも。
いまふと思いついたんですが、ギョウザ巻きを食べながらOFF会っていうのはどうでしょうか。ネットでのやり取りではなく、顔を合わせてのワイワイガヤガヤ。「自分が過去に食べたもっともまずい食い物」とかを披露しながら一杯やるんですよ。むちゃくちゃ盛り上がりそう。歯が治ったら計画します。
新井さんとのメールのやり取りの中で新井さんは「内陸部をもっと調査したい」と言っていました。こういう食べ方があったとは私も全然知りませんでした。でも本当にうまそうですよね。伊那はローメンだけではなく、ネギ醤油おでんも売り出したらいいのにと思った次第です。
おでんネタはだいたいこんなところだが、チャンポンネタもいくつか来ている。
本当に本当にまちがってるぞー、そりゃ。九州を離れたとたん「まちがってるぞーチャンポン」の群生地帯が始まるのです。
私の場合、大阪で「ラーメンの麺をゆで、それを丼に入れ、野菜のあんかけを加えてぐちゃぐちゃにかき回したチャンポン」というものに遭遇したことがあります。それまで「まちがってるぞー」を連発しながらもどうにか耐えて生きていた私ですが、このときばかりは感情を抑えることができず、ついに「お母さーん」とつぶやいてしまったものです。
拙著『食品サンプル観察学序説』の中の一章「チャンポン大好きおやじの苦悩と現実」はその折の深い哀しみから生まれたものです。いまでも涙なくして読み返すことはできません。
そして実は個人的事情から、この「新日本奇行」を通じて全国の「まちがってるぞーチャンポン」の実態をつぶさに調べ、正しいチャンポンの姿を世界に訴えようと思っているのです。
大阪の中央軒、リンガーハットのチャンポンやなんかは全然OKだけど、九州以外でチャンポンを食べるとかなりの比率で「お母さーん」になるのです。全国の「まちがってるぞー」情報をお待ちしています。テーマに関係なくメール下さい。
茨城にも「味なしチャンポン」があったとですか。怖わっ。「味なしチャンポン」の破壊力ちゅうとは強かですもんねえ。一発でKOさるるもん。ありゃいかん。私はくさ、拙著『食品サンプル観察学序説』(うわ、2回も宣伝してしもた)で「伝統的チャンポンの保護に関する法律」(略称伝チャン保護法)の制定を訴えたとばってんですね、誰も賛成してくれんやったとですよ。悲しかー。
それにしても「野瀬さん、一度チャレンジして」とは何という……うう、悲しかー。
今回のテーマ「焼きミカン」とサブテーマ「雑煮のもち」についに触れることなく終わろうとしている。もう400字詰原稿用紙10枚に匹敵する分量を書いてしまった。
三林京子さんが「ああ書けば、こう食う」で「おかんみかん」のことを書いている。大阪弁の「お母ん」のことかと思って読んでみたら「お燗」のことだった。さて何でしょう。
来週は出張でいないかもしれない。そのときは強力な助っ人が登場することになっている。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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