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シルクロードの世界遺産 修復はロマンか保全か

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ナショナルジオグラフィック日本版

ターコイズブルーのドームと、輝く壁面。ウズベキスタンの古都サマルカンドのビービー・ハーヌム・モスクは、かつての富と栄光を今に伝える大記念碑だ。ロマン、美、信仰。一見したところ、この有名なシルクロードの街の歴史を垣間見たいと願う観光客が求めるもののすべてがある。

15世紀初頭に建てられたこのモスクは、1405年に亡くなるまでアジアの広大な地域を征服した武将ティムール(西洋ではタメルランと呼ばれる)の妻にちなんで名づけられた。ドームの下では、精巧な装飾文字が巨大な門を飾り、高くそびえる壁には紺碧(こんぺき)と金色のタイルが敷き詰められている。

だが見かけとは裏腹に、必ずしもすべてが古いわけではない。2つの有名な青いドームのうち、1つはかつて完全に崩壊し、もう1つは卵のように割れた。今のドームは大規模に再建されたものだ。装飾文字の一部は20世紀後半に書かれ、新しいタイルが貼られた壁は、中世の模様の再現とは言えないモダンなデザインだ。壁すらも昔の面影はない。実際よりも現代風の修復がなされ、高さもかなり増している。

このモスクをはじめ、サマルカンドにある多くの歴史的建造物は、観光客、地元住民、学者、政府、国際機関の間で、長年にわたって多くの議論の火種になってきた。遺跡を守り、観光収入を確保するために、修復は必要だと言う人もいる。一方で、元の構造を損傷するうえ、保存に値しないと判断された周囲の建物の取り壊しを伴う軽率な修復に反対する声もある。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「文化の交差点」と呼ばれるサマルカンドをはじめ、ウズベキスタンのさまざまな場所を世界遺産に認定している。一方で、こうした再建工事を繰り返し批判してもいる。

論争は何十年も続いてきたが、最近は変化が起きつつある。サマルカンドの歴史を持続的な方法で保存していこうという、より協調的な取り組みが始まっているのだ。

シルクロードのロマンと修復の現実

ウズベキスタン、特にサマルカンドは、世界的に有名なイスラム建築が複数あり、長い間、西洋文化を魅了してきた場所だ。16世紀の英国の劇作家・詩人クリストファー・マーロウは、一度も訪れたことのないサマルカンドの「天をうろたえさせるような輝く塔」について書き、エドガー・アラン・ポーは同地を「地球の女王」と呼び、英国の作家ジェームズ・エルロイ・フレッカーは『サマルカンドへの黄金の旅』と題する有名な詩を書いた。

ウズベキスタンでは、こうしたロマンと興奮を抱く西洋人を引きつけるために、そして国家のアイデンティティーを醸成するために、歴代政権がティムール像をいくつも建立し、国中でシルクロードを使ったブランディングを行い、歴史的建造物の大規模な修復を実施した。手が入れられたのはビービー・ハーヌム・モスクにとどまらない。

例えば、ティムールの大霊廟(だいれいびょう)の入り口は大幅に改築され、新しいコーランの碑文で飾られている。サマルカンドの中心部にあるレギスタン広場のそばに立つ3つの巨大なマドラサ(イスラム教の宗教学校)は、どれもタイルが張り替えられ、万華鏡のような模様が施されている。他の名所や都市でも似たような改修が行われている。

このような修復がなければ、ウズベキスタンの歴史は永久に失われていたかもしれないとの意見もある。こうした建造物は地震で損傷したり、建築資材の盗難にあったりしていたため、修復をしなければ完全に崩壊していたかもしれない。また、豪華なタイル張りのポルティコ(柱廊式玄関)、虹色に輝くドーム、舗装し直された中庭など、修復された建物の大きさと美しさに、多くの観光客が歓喜するのは事実だ。

感動するのは外国人観光客だけではない。サマルカンドでゲストハウスを経営するオディル・ジャハンギロフ氏は、ウズベキスタンの首都タシケントから来た人たちも、改修された建物に驚くことが多いと語る。「彼らはもっと都会的で、古い建物を日常的に見ることはありません。だから、古いものを感じたいのです。サマルカンドは彼らにとって異国情緒のある場所なんです」とジャハンギロフ氏。「『わあ すごい、これ見て!』という感じで驚いていますよ」

しかし、金箔貼りの「黄金のマドラサ」の再建された礼拝堂を歩き回ったり、古いけれども大幅な改修が施された大霊廟で複雑な模様のモザイクを眺めたりすると、感激とは程遠い気持ちになる人もいる。そうした人たちにとって、これらのモスクやマドラサや霊廟は、史跡というよりテーマパークの展示物のように、漂白された偽物なのだ。

イスラム美術研究の第一人者であるロバート・ヒレンブランド氏は、イスラム建築を研究する上での困難に関する論文の中でビービー・ハーヌム・モスクの改修を取り上げ、不正確で出来の悪い交換と修復が行われたと非難している。

観光客の中にも、表向きには自分たちのために行われているとされる現在の修復について、気にかける人がいるかもしれない。だが、再建の影響を最も受けてきたのは地元の人々だ。おそらく過剰に保護されてきた観光名所とは対照的に、その周辺の地域は、政府や国外からの関心の低さのせいで苦しんできたと、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で遺産保全に取り組む研究者、オナ・ビレイキス氏は指摘する。

「サマルカンドの史跡は都市構造から切り離されてしまっているのです」と氏は語る。「地元固有の建築は、ほとんど無視されています」。その結果、壁が建設されて街が分断され、観光に適した地域とそうでない地域が人為的に分けられてしまったとビレイキス氏は言う。

レギスタン広場周辺の古い市場や家屋など、観光向けではないとされた地域は特に、新しい道路やアパートを建設するために土地が収用されてきた。ウズベキスタン全土の多くの町や都市で同様のことが行われ、取り壊しや補償の欠如に対する抗議が起こることもある。

サマルカンドが世界遺産に登録されて以来、ユネスコは、修復によって史跡の真正性が損なわれていることに対する警告や、適切な規制がないまま新しく行われる建築工事への抗議、および都市再生への懸念を表明してきた。

「シルクロード幻想」に収まらない歴史と文化

しかし、この流れは変わりつつあるかもしれない。ジャハンギロフ氏は、政府が以前よりも修復に慎重になっていることを指摘する。ビレイキス氏は、新しい世代の熟練技術者や建築家を含め、地元住民による保存への関与が増えていると説明する。

2021年にはユネスコとウズベキスタン政府の間でさまざまな会議が開かれ、9月には新たな取り組みが発表された。両者がより緊密に協力し、地域社会や専門家と関わりながら、ウズベキスタンの遺跡の保護と保全を進めていこうとする内容だ。

今後も議論は続くだろうが、特定の論点については多くの人が同意しているようだ。歴史的に正確で、観光客だけでなく地元の人々のニーズにも応えるような修復をすること、元の材料を置き換えるのではなく保護すること、そして、従来の「シルクロード幻想」には収まらないウズベキスタンの歴史と文化を保存することが求められている。

(文 PATRICK KENNY、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年1月19日付]

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