
2021年9月10日、カワサキモータースジャパン(兵庫県明石市)はグラフィックを一新した「Ninja ZX-25R」の22年モデルを発売。20年、250ccでありながら並列4気筒というハイメカニズムなエンジンを採用した新型ロードスポーツバイクとして、大きな話題を集めたモデルだ。クラッチを切らなくてもシフト操作が可能な「カワサキクイックシフター(KQS)」などを標準装備する上級グレード「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」に試乗した。
新設計の並列4気筒エンジン
Ninja ZX-25Rの最大のトピックスは何といってもこのモデルのために完全新設計された、DOHC4バルブの並列4気筒エンジンだ。国内二輪市場が隆盛を極めた1980~90年代では、国内メーカー各社がこぞって同形式のエンジンを搭載した250ccモデルをラインアップしていたが、2000年代後半までにすべてのモデルが廃止。現在250ccクラスで主流となっているのは、燃焼室が1つだけの単気筒エンジン。あるいは2つの燃焼室を持つ2気筒エンジンだ。

一般的に同じ排気量同士で比較すると、4気筒エンジンは単気筒や2気筒に比べて振動が少なく、高回転までスムーズに回りやすい特性をもつ。

メカニカルな話に深入りすると煩雑になるので割愛するが、Ninja ZX-25Rのようなロードスポーツモデルが4気筒を採用するのは、主に高回転まで伸びやかに回る特性を生かしてエンジンを高出力化することが目的である。実際、Ninja ZX-25Rの最高出力は33kW(45PS)/15500rpmと、ライバルモデルに比べて頭ひとつ抜けた数値を実現している。
ただし、4気筒エンジンは単気筒や2気筒に比べて部品点数が多いため、大きく、重くなりやすい。モーターサイクルは車体をリーンさせて(傾けて)旋回するため、一般的にはエンジンの気筒数を増やすことは重量やジャイロ効果(物体が自転すると姿勢が安定する現象のこと。エンジンは高速回転するほど安定性が高まる)の増大につながり、リーン時の軽快性と引き換えに、安定性を高める傾向となる。モーターサイクルはバランスの乗り物であり、エンジンパワーとパフォーマンスは決してイコールではない。
同様の理由で製造コストも高い。250ccバイクは嗜好性の強い大型バイクと異なり、基本的にビギナーのための入門クラスなので、あまり車両価格が高くなると商品としての市場競争力を失うことにもつながる。
試乗したNinja ZX-25R SE KRT EDITIONの車両価格は93万5000円と、このクラスでは破格の高値。同社の1つ上のクラスである2気筒エンジンの400ccロードスポーツモデルよりも高い値付けとなっている。250ccクラスは車検がなくて維持費が安く済むという強みはあるものの、停止状態からの発進加速や頻繁なシフトチェンジを控えた走り方での速さの比較では、いくら4気筒エンジンでも排気量の大きい400ccバイクを凌駕(りょうが)するものではない。ここが4気筒エンジンを搭載する250ccロードスポーツモデルが内包する根本的な矛盾であり、難しさだと思う。