メンタルケア新手法 オープンダイアローグが効くワケ

オープンダイアローグでは、患者が安心して話せるからこそ変化が期待できる。(写真はイメージ=123RF)
日経Gooday(グッデイ)

前回記事(「メンタルケアの新手法『オープンダイアローグ』って?」)では、もともと統合失調症患者の治療的介入の手法として登場し、今、日本の精神医療の現場で注目を集める「オープンダイアローグ」が生まれた背景や実践の方法などを紹介した。精神科医の斎藤環さんは、話をひたすら聞いていくという方法だけで、重症の精神疾患と診断された患者までもが緩和されていく状況を、臨床で何度も経験している。今回は、なぜオープンダイアローグが統合失調症に有効なのかや、日本での実践事例、誰でもケアを受けることが可能なのかどうかなどについて伺っていく。

尊厳をもって接してもらうことで、強い感情が緩和される

――オープンダイアローグはもともと統合失調症患者の治療的介入の手法として生まれたとのことですが、統合失調症に効果があるのは、なぜでしょうか。

オープンダイアローグを第一線で実践する筑波大学・医学医療系教授で精神科医の斎藤環さん

斎藤さん 第1回で紹介した、「夫が浮気をして離婚を切り出される」という妄想を抱くようになった女性のケースでは、オープンダイアローグのセッションを10回ほど行ったら、夫婦で「離婚はないよね」という話ができるまでに改善しました。対話で人はこんなにも変わるのだと、私も非常に驚いた事例です。重症とされる慢性統合失調症でも、薬を使わず、対話実践だけで良くなることが多い。他にこのような心理療法は私が知る限りありません。

私なりに分析してみると、統合失調症の方は、今まで妄想や幻聴について話しても、誰も聞いてくれなかったという経験が多かったのだと思います。オープンダイアローグの手法を使って私たちがしてきたことは「なぜそう思うのですか?」ではなく、「それってどういう経験なのですか?」「どういう気持ちなのですか?」と、ひたすら尋ね続けることでした。

オープンダイアローグのミーティングの様子(イメージ)

原画=123RF

詰め寄ったり、否定したりせずに話を聞いて、相手に興味を持って「話を聞かせてほしい」と伝える。これは相手に対する最大の肯定になります。患者さんにとっては、しばしば未曽有の経験なんですね。

また、妄想の背景にあるのは、怒りや悲しみなどの強い「感情」であることが多い。1対1で診察するのではなく、複数の専門家がいて、オープンに意見を交換し合う空間では、多様な意見があっていいという安心・安全が保証されます。その上で、尊厳をもって扱ってもらえ、話を十分に聞いてもらうことで、強い感情が緩和されていく。その結果、妄想も緩和されていくということなのでしょう。この“尊厳感”は非常に重要です。

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