更年期だけでなく積み重なった睡眠不足も影響

――更年期における特徴はありますか。

高尾 40代、50代の女性の訴えで多いのが中途覚醒です。ただ、中途覚醒後にもう一度眠れると、満足感はそれほど下がらないということ。実睡眠時間で男女を比較すると、女性は満足度が低いことが厚生労働省の調査でも示されています[注3]。「以前のようにすっきり眠れていない」と「睡眠に問題がある」と考えがちですが、これは多くの同年代女性もそうだということを、まずは知っておいてください。

また、睡眠時間が1日あたり30分でも1時間でも足りない状態が重なり、それが10年、20年と続くことで、いわゆる「睡眠負債」が大きくなり、その症状が出るのが更年期のころだと思っていただければと思います。

[注3]「平成30年度 健康実態調査結果の報告」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000472937.pdf

自律神経症状と睡眠問題の関係性は深い

――よく、副交感神経を優位にして睡眠の質を上げるなどといった話を耳にしますが、自律神経の乱れが睡眠にも影響を与えることはありますか。

高尾 そうですね。例えば更年期症状の発汗、ほてりなどの自律神経症状と、眠れないという状態は関係があり、夜中にカーッと熱くなって汗をかいて目が覚めるという人がいます。この場合、ホルモン補充療法によって発汗、ほてりが改善すると、睡眠も改善されることが多いです。ほかには頭痛も更年期のうつ状態・不安と直接的な関係性がありますが、こうした症状もある程度はホルモン補充療法で改善されることが報告されています。

睡眠不足の人や頭痛経験者は更年期に睡眠のトラブルが起こりやすいということを覚えておいてください。また、生活習慣病も、睡眠時間の不足によって引き起こされます。まずは睡眠を見直すことから始めてみるのもいいでしょう。

中途覚醒後、スマホを見ない、電気をつけない

――ちなみに、更年期に入るとトイレが近くなる人が多いと思いますが、中途覚醒がある人でも十分な睡眠を取るにはどうすればいいのでしょうか。何か注意することはありますか。

高尾 途中で起きてしまう方には、「絶対にスマートフォンを見ないこと」「トイレに行くときに電気をつけないこと」をアドバイスしています。私自身はそうしています。例えば足元にだけつくような人感センサー付きのライトを用意してもいいでしょう。

つまり、光が目に入ってしまうともうその時点で私たちの脳にとっては昼だという信号が送られてしまうため、そこから先、眠れなくてもおかしくありません。そのあと眠れないと満足度が下がるし、トータルの睡眠時間が足りなくもなる。中途覚醒したときに、今何時かという確認はしなくていいんです。起きる時間にアラームをセットしたら、そこまでは時計は気にしない。

1回目が覚めてしまったとしても、もう1回寝る努力をとにかくあがくこと(笑)。それぐらい中途覚醒は誰もが経験していること、ということも知っておいてくださいね。

(次回に続く)

(ライター 山田真弓)

高尾美穂さん
産婦人科医・イーク表参道 副院長。医学博士・スポーツドクター・Gyne Yoga主宰・産業医。東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。2003年にヨガと出会い、ケンハラクマ師に師事。ヨガ、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い女性の心身を様々な角度からサポートする。近著に『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)がある。

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