日経エンタテインメント!

長セリフを限られた時間でスピーディーによどみなく

左から瀧内公美、岩男海史、井上芳雄、井上小百合、鈴木浩介、大谷亮介(撮影:宮川舞子)

探偵役は、セリフの量が膨大で、話す内容も難しいので、そこが大変だし、やりがいがあるところです。法水は知識をひけらかす癖がある人で、事典に書いてあるようなことをがーっと一気に言い始めることも多いので、長セリフを限られた時間でスピーディーによどみなく言うことへの緊張感が毎回あります。楯鉾役の浩介さんとの会話が多いので、2人のコンビネーションやテンポ感にも気をつかいます。最初のころは、長くしゃべっているうちに酸欠気味になったりもしました。慣れてきた今は、顔の頬の筋肉が痛くなります。上演時間は約2時間とそれほど長くはないのですが、セリフの密度がすごく濃いのが今回の役の特徴です。気持ちが乗ってくると、何も考えずにわーっとしゃべれるときもあって、そうなるとセリフを言う快感に浸っています。普段なかなかできない経験です。

バディーものなので、ホームズ(法水)とワトソン(楯鉾)の関係性も見どころ。法水は記憶喪失なので、最初は楯鉾のことを忘れているのですが、記憶をなくす前と同じように接してもらっているうちに、だんだん楯鉾のことを思い出してきて、遠慮がなくなっていく感じとかも、演じていて楽しいところです。

楯鉾役の浩介さんとは、一昨年の舞台『桜の園』の稽古でご一緒していたのですが、公演が中止になったので、舞台上での共演は初めてです。劇中では同級生という設定ですが、実際は同じ福岡の高校の先輩にあたります。高校や福岡の話をよく一緒にするので、舞台を降りたら同郷の先輩と感じることのほうが多く、特別な存在です。俳優としても素晴らしいキャリアの先輩で、お芝居に対する誠実な姿勢に学ぶところが多いと感じました。

浩介さんは、稽古初日にはセリフを全部頭に入れています。「いろんなやり方をしてきたけど、これが自分には一番合っているし、役も深められるんだ」と言われていて、はたから見ていても確かにそうだなと。僕はぎりぎりにしか覚えられないタイプで、稽古中は「明日のセリフを覚えなきゃ」とひいひい言っているのですが、浩介さんはさらに深めていったり、言いづらい箇所を言えるようにしたりという先の作業をしていました。やっぱり浩介さんのやり方の方がいいのかな、と思ったりしました。

同時に、浩介さんは「自分は本番に入ったら、とんでもない間違いをしたりするんだよ」と、舞台が好きだからこそのおびえのようなことも言っていました。実際にハプニングがあったりもしたので、面白いなと。繊細にして大胆というバランスが魅力的な人です。

ほかの共演者もみんな、お芝居が大好きな役者ばかり。コロナ禍じゃなければ、毎晩でも飲みに行って、ずっと芝居の話をしていただろうというメンバーです。

井上小百合さんは、迷いの森で探偵を助けるマリモの役。共演は初めてです。乃木坂46の一期生メンバーでアイドルだったのですが、お芝居が大好きで、役者をやりたくて頑張ってきたそうです。見た目はたおやかですけど、本当に舞台をやりたいという気持ちが前に出ているところが根性があるなと思って、ギャップに驚きました。度胸があって、舞台で何が起こっても動じないところがあります。肝が据わっているのが、頼もしいです。

次のページ
大ベテラン大谷亮介さんの役者根性に学ぶべきこと