岩男海史君は、バチカンから日本に派遣された調査員・椋鳥之介(むく・とりのすけ)の役。昨年の舞台『日本人のへそ』で共演しました。そのときもですが、役のことを考え抜いて演技プランを立てているので、お芝居が大好きな気持ちが伝わってきます。衣装デザイナーでもあって、最近自分のブランドを立ち上げたそうです。多面的な才能の持ち主です。僕が療養中の稽古では代役をやってくれて、ありがたかったです。感謝しています。
瀧内公美さんは、キリスト教信者の海部(あま)もぐるの役。共演は初めてです。オープンマインドな人で、きさくにみんなに声をかけます。稽古中でも「今の場面、どう見えました?」とか「伝わりますかね、私のやっていること」と、僕にも聞いてきます。僕はダメ出しされたら嫌だから人に感想を聞けないタイプなので、共演者にも臆せず聞けるのはすごいなと。コミュニケーション能力が高くて、表現に貪欲なすてきな女優さんです。
大ベテラン大谷亮介さんの役者根性に学ぶべきこと
大谷亮介さんは、行方不明の竿頭寛斎と、教会の牧師である内藤ユウランの2役を演じています。共演は初めてですが、共通の知り合いがいたりするので勝手に親近感を持たせてもらっていました。普段はとても明るくて、日本人離れしたエネルギッシュな人です。大谷さんも役者根性がすごい。顔合わせのときから「自分はもう役になってきているから」と言われていて、牧師の役なのでキリスト教についてもすごく調べてきていました。分からないところが多い話なので、それについても後輩である僕たちと一緒にずっと「ここはどうなんだろうね」と探求しているような人です。大ベテランながら、今もずっと舞台に立ち続けているし、長いセリフも練習を重ねてしっかり覚えています。学ぶべきことが多いです。
みんな芝居が大好きで、その気持ちで団結しているカンパニーです。僕が療養中だったときも、明るく支えて待ってくれた、すてきな仲間たち。ミュージカルのカンパニーだと、もちろんみんな芝居は好きでしょうが、歌が好きな人もいれば、踊りに特化した人も、僕みたいにもともとミュージカルが好きな人も、よく知らなくてこの世界に入ってきた人もいて、いろんな人がいます。でもストレートプレイ(セリフだけの演劇)では、基本的にやることはお芝居だけだから、そこへの思いがみんなすごく強くて、気持ちがひとつになっているように感じます。この仲間たちと、残りの公演も全力で駆け抜けます。

(日経BP/2970円・税込み)

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第113回は4月16日(土)の予定です。