検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

失われた街「タマン」 マカオ以前に欧州と中国結ぶ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

「アジアのラスベガス」として知られる中国マカオの町中に、ポルトガルの冒険家ジョルジ・アルバレスの石像が立っている。その場所や石像の大きさから、この町の歴史にとってよほど重要な人物だったことがうかがえる。

だが実は、アルバレスは多くの謎に包まれており、この像も想像を基にして作られたにすぎない。彼の最大の偉業は、ヨーロッパ人として初めて中国に交易拠点を築いたこととされている。しかし、その死から今年で500年になるが、タマンと呼ばれるその拠点がどこにあったのか、いまだ謎に包まれている。ただひとつ歴史家たちが確信しているのは、彼がその幻の土地タマンで生涯を閉じたということだけだ。

史料収集家だったホゼ・マリア・ブラガが1955年に執筆した「China Landfall 1513: Jorge Alvares' Voyage to China(中国上陸1513年:ジョルジ・アルバレスの中国への旅)」によると、1950年代に石像が建てられるまで、アルバレスは数百年もの間忘れられてきたという。

1557年から1999年まで、マカオはポルトガルの植民地として、ヨーロッパと中国の文化が融合する多文化都市へと発展していった。さらに、カジノがもたらした収入のおかげで、町の経済も潤った。だが、その繁栄も多様な文化も、タマンなくしては存在するはずもなかった。

当時のポルトガルの歴史に詳しい欧州大学院のジョルジ・フロレス氏によると、タマンはマカオの前身だったという。そこには8年にわたり、ポルトガルの交易拠点が置かれていた。「タマンとマカオの間に直接的な関係はありませんが、ポルトガル人が中国や珠江デルタ、南シナ海について学ぶことができたのは、タマンのおかげです」

珠江デルタのどこかに

では、そのタマンはどこにあったのか。1513年、香港やマカオを含む三角地帯「珠江デルタ」のどこかの島に、アルバレスはパドラオと呼ばれるポルトガルの石柱を建て、そこをタマンと呼んだ。中国の川である珠江は、広州を抜け、南シナ海へと注ぎ込んでいる。パドラオは、大航海時代に新しく発見した陸地の領有権を宣言する印として、ポルトガル人によって各地に建てられていた。

このパドラオの正確な位置について、中国、マカオ、ポルトガルの歴史家の間では意見が一致していない。香港の最西端にある現在の屯門(トンモン)だろうという意見もあれば、ランタオ島やチェクラップコク島ではないかと提案する専門家もいる。

中国にある曁南大学澳門(マカオ)学研究院の金国平氏は、香港国際空港があるチェクラップコク島にパドラオが建てられたと主張する。金氏は、数少ないタマン研究者のひとりだ。

「チェクラップコクは小さな島で、遠くからも見通しが利きます。防御に有利なことから、船の停泊地としては比較的理想的な位置にあります」

ブラガは、香港空港の北西13キロに位置する伶停(リンディン)島だったと考えていたが、フロレス氏は明言を避け、「おそらく、ランタオ島の北、珠江デルタの入り口あたり」としている。

不思議なのは、失われた町タマンが、どこかのジャングルの奥地に隠されているとか、土砂の下に埋もれてしまったわけではないという点だ。毎年数百万人が、マカオと香港、中国の間を船や飛行機で行き交っているはずなのに、タマンはいまだに発見される気配すらない。

フロレス氏も金氏も、タマンの正確な位置を示す新しい証拠が見つかったり、最近になって考古学的調査が実施されたという話は聞いていないという。タマンの捜索は、考古学者が土を掘り返して遺跡を探したりしているわけではなく、歴史家による古い手稿、地図、日記などの掘り起こし作業によって行われている。

「現存する当時の資料を一つ一つ細かく調べ、解釈して結論を導き出すという作業です」とフロレス氏は説明する。「けれど、ごくわずかで断片的な記録しかありません。学者は数少ない記号やヒントから解読するしかないので、なかなか意見が一致しないのです」

アルバレスが築いた中国との関係

アルバレスが中国へ向けて出港した時も、同様の情報不足に直面した。それは、1498年に探検家のバスコ・ダ・ガマがインドへ上陸してからわずか15年後のこと。すでにアジア南部はほとんどが踏査され、ポルトガル人は、インドネシアで香辛料、タイで絹、ミャンマーで象牙を手に入れ、祖国へ持ち帰っていた。しかし、アジア大陸北部の地図は、まだ大部分が白紙の状態だった。

ポルトガル人にとって、中国は未知の存在だった。かの国が世界で最も進んだ文明国のひとつであり、近代的な都市、洗練された芸術、繁栄する商業、大規模なインフラが既に存在していたことなど、知る由もなかった。だが、中国と巨大な交易の機会があるらしいということは感じ取っていた。1511年、ポルトガルがマレーシアの都市マラッカを征服したのち、ポルトガル王マヌエル1世は、現地の人々から中国について知っていることをすべて聞き出すよう命じた。

アルバレスが船でマカオの近くまで到達すると、外国人が中国に上陸するには明の正徳帝の許可が必要であると知らされる。外国の商人は、珠江の河口にある島でのみ中国と交易することが認められていた。

そこでアルバレスは、タマンに拠点を築いた。中国との交易は成功し、利益を上げた。ポルトガル人はワインや香辛料を売り、磁器や真珠、薬草、織物を買った。

交易品だけでなく、貴重な知識も手に入れた。ブラガの本によると、アルバレスは広東やタイ、インドネシア、マレーシアの商人との会話から、中国の文化、宗教、金融、軍隊について学んだと書かれている。マヌエル1世にとって、情報を得ることは貿易協定を結ぶのと同じくらい重要だった。また、平和な関係を維持することも重視した。明の大帝国を相手に戦争をするつもりは、ポルトガルには全くなかった。

数年で消えたタマン

アルバレスは中国人に対して、おおむね慎重に、礼節をもって接していたが、同胞の中には違った考えを持つ者たちもいた。タマンに拠点が置かれてから6年後、ポルトガル人と中国人の良好な関係にひびが入る出来事が起こった。ポルトガルから、シマオ・デ・アンドラーデ率いる船隊が台風のように南シナ海に現れたのだ。

デ・アンドラーデはすぐに、傍若無人な振る舞いで中国人を怒らせた。まず、税の支払いを拒み、中国人の役人を襲い、しまいにはタマンに要塞を築き始めた。おかげで、友好的だったポルトガル人が攻撃的な占領者に変わろうとしているという印象を、中国人に与えてしまった。

さらに悪いことに、1521年に正徳帝が死去した際、ポルトガルの船団は中国の領海内での交易を一時休止することを拒んだ。これに対して、中国海軍はタマンにあったポルトガルの拠点を攻撃し、紛争に発展。結果、ポルトガルは撤退を余儀なくされた。こうしてタマンは捨てられ、中国は交易を停止した。ポルトガル人は、マラッカで体制の立て直しを強いられたが、中国の信頼を取り戻し、マカオに新たな拠点を築くことが許されるまで、数十年の歳月を要した。

アルバレスの軌跡をマカオにたどって

マカオで、タマンの数奇な運命をたどろうとしても、できることは限られている。アルバレスの像を訪ねるほか、丘の上の砦跡に入っているマカオ博物館に行けば、アルバレスの名に言及したわずかな資料を閲覧するくらいはできる。このモンテの砦は、400年前にポルトガル人によって建造されたものだ。

だがその丘の上からは、アルバレスが残した遺産を一望できる。遠くにはタイパ島のカジノ街が浮かび、すぐ足元には世界遺産に指定された古いポルトガル建築の街並みが広がっている。

美しいポルトガル風の広場、19世紀のヨーロッパ風の劇場、ポルトガルの要塞、植民地様式の大邸宅、時の流れを感じさせるカトリック教会。それらが中国の寺院や商店と完全に融合した独特の雰囲気を味わえるのが、マカオの街歩きの楽しみだ。

そんなマカオの誕生に貢献し、長年にわたるポルトガルと中国の友好関係の礎を築いたアルバレスだが、そうした自身の功績の行く末を見届けることはなかった。世代が変わり、マカオは発展し、アルバレスの役割はわずかな足跡を残して歴史のかなたに消えた。今、彼の石像を見ても、気に留める人はほとんどいない。没後500周年となる2021年、ポルトガルでもマカオでも、その功績を称える式典も企画されていない。

1521年、タマンの謎を抱えたまま、アルバレスはこの世を去った。遺体は、その8年前に自らが築いたパドラオの横に葬られた。

(文 RONAN O'CONNELL、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月23日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_