検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

美貌に隠れた権力 古代エジプト王妃ネフェルティティ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

古代エジプト王アメンホテプ4世の正妃であるネフェルティティは、美しい容姿で広く知られているが、その生涯の大部分は謎に包まれている。

アメンホテプ4世は、エジプト古来の多神教から太陽神アテンを信仰する一神教へ改宗し、大胆な宗教改革を行ったファラオとして有名だ。後に自らの名を「アクエンアテン」(アテン神に仕える者の意)と改め、首都を現代のアマルナへ移し、そこを「アケトアテン」(アテン神の地平線の意)と名付けた。

しかし、その改革は長くは続かなかった。アクエンアテン亡き後、エジプトは元の多神教へ回帰し、その後継者たちは王の名と功績を歴史から消し去ろうとした。アケトアテンは打ち捨てられ、アクエンアテンとネフェルティティ、その家族を描いた芸術品は破壊され、2人の遺産は数千年の間、葬り去られていた。

世界に知られた胸像

ネフェルティティの栄光が現代によみがえるきっかけとなったのは、1912年12月6日、ドイツ人考古学者のルートヴィヒ・ボルヒャルトが、アマルナの遺跡でネフェルティティの胸像を発見したことだった。

宮廷彫刻家の工房跡で発見された胸像は、3000年もの間、極めて良い状態で保存されていた。ボルヒャルトは、発掘日誌に次のように書き残している。「つい最近色が塗られたばかりのような鮮やかさ。見事な細工。言葉では言い表すことができない。実際に自分の目で確かめるしかない」。高い頬骨、ほっそりとした首、まるで生きて呼吸しているかのような表情は、美とエジプト芸術の象徴となった。

とはいえ、20世紀の西洋の学者によって書かれた多くのエジプト史には、ネフェルティティの名がほとんど出てこない。その多くはアクエンアテンの宗教と政治改革に焦点が当てられ、ネフェルティティは美しい王妃であり母であったというような脇役的扱いしかされていなかった。しかし最近の研究により、その役割ははるかに複雑で、国政と、とりわけアテンを信仰する一神教の確立に深く関わっていたらしいと考えられるようになっている。

ネフェルティティとはどんな人物だったのか?

ネフェルティティの生涯に関しては、断片的な記録しか残されていない。いつ生まれ、いつ亡くなったのかも定かではない。エジプト王室の、無名の両親のもとで育ったということだけはわかっている。アメンホテプ4世の父親であるアメンホテプ3世の時代に誕生し、恵まれた幼少時代を過ごした。当時のエジプトは、豊かで安定していた。

ネフェルティティは10代の時に王位継承者だったアメンホテプ4世と結婚したとされているが、結婚時の年齢はそれよりもさらに若かったという学者もいる。アメンホテプ4世は、20代半ばないし30代前半に王位を継承し、在位4年目に、ネフェルティティが正妃となった。

ネフェルティティは、王妃としてエジプト史上どんな女性にもかなわなかった地位と名声を手に入れた。芸術の分野にも影響を与え、多くの絵画や彫刻、建造物に描かれた。エジプト学者のカラ・クーニー氏いわく、ファラオの「大巫女(みこ)、イデオロギーの女神」といった存在であったという。在位5年目以降に、アメンホテプ4世は宗教改革の一環として、アクエンアテンと改名し、さらにネフェルティティにも、「ネフェルネフェルアテン・ネフェルティティ」(「アテンの美しき者の美、美が訪れた」の意)という名を与えた。

宗教改革を成功させるため、アクエンアテンはネフェルティティを必要とした。ネフェルティティは、太陽神アテン崇拝において王と対等な地位にまで昇格し、彼女のための神殿まで建てられた。結婚して間もなく、2人の間には娘のメリタテンが誕生し、その後さらに5人の娘が生まれた。王女たちは、神聖な婚姻の結果アテン神の祝福を受けて生まれたと信じられ、宮廷芸術家たちの人気の題材となった。アテン神による祝福の陽光が王室一家の頭上に降り注ぐ様が描かれた芸術作品も残されている。

アクエンアテンとネフェルティティの治世は、エジプトに多くの変革をもたらした。首都は、多神教と強く結びつけられていたテーベ(現代のルクソール)から、約400キロメートル北上したナイル川の東側の未開の地(現代のアマルナ)へ移された。王は、新しい町をアケトアテンと名付け、そこを一神教の中心地とした。

進化する美の基準

このアマルナ時代と呼ばれた紀元前1349~1336年に生まれた美術作品は、ネフェルティティが当時重要な存在だったことを物語っている。わずかな期間だったが、エジプトの伝統的な美の基準は根底から覆された。それ以前の人物画は、数千年にわたり守られてきた厳しい基準に従って、高度に様式化されていた。体は細く、平面的な2次元のスタイルで、顔と体は横向き、目と肩は前を向いていた。

ネフェルティティの時代にこれが大きく変わり、硬くぎこちない直線は、自然で流れるような曲線になった。アクエンアテンとネフェルティティの絵にもしなやかな曲線が使われ、甘い唇、長い顔と鼻、細長い体、突き出たおなか、広い腰が描かれた。男性と女性は同じように描かれ、どちらも男性的な特徴と女性的な特徴の両方を備えていた。アテン神がエジプト人にとって父であると同時に母でもあることを強調させるためだったのだろうと、学者たちは考えている。ファラオも同様に、父親と母親の両方の役割を担い、それによって揺るぎない結束を生み、エジプトに祝福をもたらす存在だった。

芸術様式の変化が速いペースで起こったのは、改革への強い思いがあったからだと考えられている。エジプト芸術は、表現そのものがメッセージを伝える。アクエンアテンとネフェルティティもまた、一神教への改宗に伴って、新たなイデオロギーを説くために芸術を利用した。新しいスタートを切るためには、古い美の基準を一切排除する必要があり、芸術が激しい変化を強調する道具となった。

王の死後

ネフェルティティの王室は円満に見えたが、先代であるアメンホテプ3世の安定していた時代とは違って、この頃のエジプトの文化、宗教、政治、経済は混沌としていた。遠く離れた場所に新しい都市を建設するという無謀な計画は莫大な費用を必要とし、エジプト全土を混乱に陥れた。

新しい宗教も、多神教に基づいた文化全体を揺るがそうとしていた。エジプトには、古来より築かれた大規模な神官のネットワークや神殿があり、崇拝者たちがいたためだ。税や国庫への負担は重く、子どもも含む多くのエジプト人が、都市建設の労働力として駆り出された。

同じ頃、外国からの脅威が増し、国民は保護を必要としていた。エジプトは史上最も繁栄していたとはいえ、都市建設と宗教改革、それらを支援する体制整備のために莫大な資金が使われ、国の財政は傾いた。

アクエンアテンは、ネフェルティティとともに17年間エジプトを治めた後、約40歳でこの世を去った。その後エジプトは旧体制に戻り、アクエンアテンの名はエジプト史から抹消された。その記念碑や彫像は解体され、破壊された。アテン崇拝は廃止され、多神教信仰が復活した。税金は古い伝統を守るために使われ、首都はテーベへ戻された。アケトアテンは廃虚と化し、以後3000年以上もの間歴史から姿を消した。

夫の死後、ネフェルティティがどうなったのかは、エジプト学者の間でも意見が分かれている。エジプト史のなかでも特に変化が激しかったこの時代に、彼女がどのような役割を果たしたかはわかっていない。そのまま消えていったのかもしれないが、より重要な役割を担っていた可能性もある。

一説には、夫亡き後、「アンクケペルウラー・スメンクカーラー」という名で王位に就き、次の継承者であるツタンカーメンへつないだとも言われている。これに関してクーニー氏は、次のように書いている。「ネフェルティティの政治的指導力が評価されることはない。根底からひっくり返された国を再び立て直す計画を始めたのは彼女だというのに」

(文 EDITORS OF NATIONAL GEOGRAPHIC、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年3月24日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_