火星探査車、着陸1年 ついに最難関にチャレンジ

ナショナルジオグラフィック日本版

2021年9月10日、米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーシビアランス」が「ロシェット」という岩の前で撮影した自撮り写真。岩に指の大きさと同じくらいの大きさの穴を2つ開け、初めてサンプル採取に成功した(PHOTOGRAPH COMPOSED OF 57 IMAGES BY NASA/JPL-CALTECH/MSSS)

2021年2月に探査車パーシビアランスが火星に着陸してから1年。この探査車はこれまでに火星のクレーター内を3キロ以上走行している。その間、数千枚の写真を撮影し、岩石の構造を分析し、二酸化炭素(CO2)から酸素を生成するマシンの実験も行ってきた。

なかでも、技術的にこれまでで最も複雑なミッションにおいて、パーシビアランスは前進を遂げている。最終的に地球に持ち帰るための、火星の貴重な岩石を収集することだ。

[2021年2月18日]この1年で、パーシビアランスは火星のジェゼロ・クレーターを3.2キロ以上走行した。ここでは、古代の水の流れによって扇形の三角州が形成されている。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスに搭載された高解像度ステレオカメラで撮影(PHOTOGRAPH BY ESA/DLR/FU-BERLIN)
[2021年2月18日]パーシビアランスが火星に近づき着陸する様子(PHOTOGRAPH FROM VIDEO BY NASA/JPL-CALTECH)
[2021年2月21日]パーシビアランスに搭載された2つの望遠カメラ「マストカムZ」は、この探査車の「目」の役割を担う。この360度のパノラマ画像は、パーシビアランスが火星に着陸3日目に撮影した142点の画像をNASAが合成した(COMPOSITE PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/MSSS/ASU)

数十億年前、火星は厚い大気に覆われ、今よりずっと温暖で湿度が高く、生命が生息できる環境だったと考えられている。探査車が火星表面を調べたり、周回機が上空から火星を観察したりすることで、科学者たちは火星の緑豊かな過去を解明する手がかりを得てきた。火星から地球に飛来した隕石(いんせき)も手がかりを与えてくれるが、隕石は大気圏突入時に高温に包まれるため、得られる情報には限界があった。

科学者たちは現在、パーシビアランスを駆使して、地球に持ち帰るサンプルとして適切な岩石や土壌を探している。「火星サンプルリターン」というこの計画が成功すれば、火星の過去と現在の環境をより詳細に調べることができ、かつて生命体が存在したのかどうかが明らかになるだろう。

歓喜と落胆のはざまで

パーシビアランスのサンプル採取保管システムに携わる技術者アビ・オコン氏にとって、最初のサンプル採取の試みは最高かつ最悪の経験だった。21年8月6日の早朝、パーシビアランスから届いた最初のデータは、ジェゼロ・クレーターの底で最初のサンプル採取に成功したことを示していた。このクレーターは、隕石が衝突してできた直径45キロの盆地で、かつては湖があったとみられている。

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岩石から分かる火星の歴史