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ロシア侵攻も、踊り続けるウクライナのバレエダンサー

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ナショナルジオグラフィック日本版

バレエという芸術は、集中力、規律、一貫性から生まれる。バーと床で、幾度となく繰り返される同じ動き。何百年と変わらず続いてきた、プリエ、ルルベ、ジュテ。

しかし、2022年3月16日に行われたキエフ・シティ・バレエ団のリハーサルは、ほとんどすべての面で異常だった。ダンサーたちが練習を行ったのは、写真やビデオを撮る記者たちでごった返す狭い部屋。バーのスペースが狭すぎたため、椅子やピアノをバー代わりに練習するダンサーもいた。あるダンサーは歩幅が広すぎて、部屋の外に飛び出してしまった。うまく着地できなかったのか、足首を痛めた様子のダンサーもいた。

ストレスとプレッシャーに耐える

夫のイワン・コズロフさんとともにバレエ団を主宰するエカテリーナ・コズロバさんは、ダンサーたちを指導する一方で、彼らをうろたえさせる質問をする記者たちを見張っていた。

「ダンサーたちはみな、大きなストレスとプレッシャーにさらされているので、特に穏やかに接するようにしています」とコズロバさんは言う。「故郷からの電話、絶え間なく流れてくるニュース……。テクノロジーのおかげで、私たちはより多くの情報を得ることができます。ダンサーたちは、何が起こっているのか、分単位で知っているのです。彼らは常に携帯電話で最新情報を得ようとしています。多くの人が疲れ果てていると思います」

ウクライナの首都キエフを拠点とする一座は、2月23日にフランスに向けて出発し、子ども向けの『くるみ割り人形』を2週間上演する予定だった。2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナに対する侵攻を開始。数千人が死亡し、300万人近くが避難している。バレエダンサーたちは現在、パリのシャトレ座に滞在しているが、滞在の終了はますます遠のきつつあるように思える。

「まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした」とコズロバさんは言う。持ってきていたのは、当初予定していた公演分の衣装だけ。それ以外は「何も持ってきませんでした。音楽も、ビデオも、資料も、すべてキエフに置いてきたまま……。自分たちが持っているものすべてに別れを告げたようなものです」

文化遺産への攻撃

ロシアのウクライナ侵攻によって、同国の様々な文化遺産が破壊されている。

「文化はロシアの戦争戦略における主要な標的の1つです」。そう話すのは、ウクライナで保管されているデジタルアーカイブやデータを保護しようとする約1200人の文化遺産専門家のグループ「Saving Ukrainian Cultural Heritage Online(SUCHO)」を、2人の仲間とともに主宰しているセバスチャン・マジェストロビッチさんだ。「ウクライナに固有のものがすべて消えてしまえば、プーチンの目的が果たされることになります」

ロシアがクリミアを占領・併合した2014年以降、「ロシア当局はドンバスとクリミアで遺物を撤去し、墓所を取り壊し、教会を閉鎖した」と、米国務省は声明で述べている。今回の戦争では、すでにイバンキフ歴史・地方史博物館を含む多くの建造物が破壊され、歴史あるスヴャトヒルスク修道院も被害を受けた。「かけがえのない文化遺産が傷つけられたことは、私たち全員にとって深い喪失を意味しています」

パリにいる38人のキエフ・シティ・バレエ団のダンサーは、ほとんどが18歳から22歳だ。同じ学校で学んだこともあり、幼なじみ同士のメンバーも多い。リハーサルではウクライナ語とロシア語を使う。また、英語を話すことも多く、バレエの専門用語のフランス語も使う。彼らは約70人いるバレエ団メンバーの一部にすぎない。ほかにも、チェコに滞在しているダンサーたちがいる。

クセニア・リトビネンコさん(19歳)は、2日前にパリに着いたばかりだった。母親と兄はまだポーランドにいる。普段はバレエ団のツアーに参加しないが、キエフ時代の同級生4人が参加することもあって、志願した。バレエを通じて「自分を表現できるし、自分の国で今何が起こっているのかを人々に伝えることもできます」と言う。

ダンサーたちは、できる限りの仕事をし、パフォーマンスを披露し続けようとしている。ある人は「紛争のことがいつも頭から離れない」と明かす。「マリウポリの両親から2週間も連絡がない」と言う人もいる。「私たちがこのような事態に対処するのは、物理的にとても難しいことです」とコズロバさんは話す。しかし、「これほど多くの支援に恵まれているのは幸運なことです」

寄付されたタイツやレオタード

パリの関係者はダンサーたちに住居だけでなく働く場も提供したいと考えている。ダンサーたちは間もなくパリ・オペラ座でレッスンを受け始める予定で、夜の公演に参加する場合も多い。タイツやレオタードの寄付もあった。3月21日の週からはフランス国内でのツアーが再開される。

パリに避難しているウクライナの芸術家集団は、キエフ・シティ・バレエ団だけではない。パリ南部の15区にあるモンフォール劇場には、約15人の別のダンサーとその家族がやって来る予定だ。文化担当として市内の劇場と調整を行っている副市長のカリーヌ・ロランさんによると、他の劇場もウクライナの芸術家を迎える準備をしていると言う。まだ何人が来るかはわからないものの、彼らが生活と仕事をするための場所を見つけることに全力を注いでいる。

「こうした大きな苦難のときにあって、文化は支援されなければなりません。抑圧されている国の芸術家たちも同様です。特にウクライナでは、彼らは抵抗の声ですから。声を持つ者は、どこにいても、声を上げなければならないのです」

(文 MADELEINE SCHWARTZ、写真 MONIQUE JAQUES、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年3月22日付]

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